2022年12月9日、CGWORLDは、建築・土木・都市開発における3DCGの活用法を探るオンラインフォーラム「3D VISUALIZER FORUM」を初開催した。
住宅などの建築はもちろん、近年では、国土交通省による都市CGモデルのプロジェクトにも使われている3DCGの技術。約6時間にわたるフォーラムでは、3DCGの最新活用事例を、業界を牽引する企業陣をゲストに招き、4つのセッションにわけて紹介した。
本記事では、WANIMATION.LLC代表・Architecture Visualizerの西脇嗣人氏、Autodesk株式会社の建築・土木 テクニカル ソリューション エグゼクティブである大浦誠氏による「RevitとTwinmotionによる新たなリアルタイムビジュアライゼーション」をレポートする。
「Twinmotion for Revitとは?」すべてのRevitユーザーが利用可能なTwinmotion
まずはAutodesk社の大浦氏から、RevitとTwinmotion、そして「Twinmotion for Revit」の概要が語られた。
RevitはAutodesk社が提供する、意匠・構造・設備対応のBIMソフトウェアだ。コンセプトモデルから詳細な設計にまで対応し、3Dモデルをつくるだけではなく、データを解析したり、ファミリを駆使して属性情報を加え、他社ソフトウェアと連携したりもできる。
対してTwinmotionは、EpicGame社によるリアルタイム3D没入型ビジュアライジングツールだ。Revitなどのデザインデータから、高品質な画像やパノラマ、VRビデオなどをシンプルな操作で作成できる。
2022年9月27日、米国ニューオーリンズで「Autodesk University」が開催された。そこで発表されたのが、Autodesk社とEpicGame社が戦略的にコラボレーションして生まれた、Twinmotion for Revitだ。これにより、すべてのRevitユーザー(簡易版「Revit LT」ユーザーは不可)は、Twinmotionに無料でアクセスできるようになった。
大浦氏は「(Twinmotion for Revitにより)インタラクティブな設計・プロセスを通じて、リアルタイムビジュアライゼーションが可能になった」と語る。
直感的操作で、圧巻の建築ビジュアライジングを実現
次に、RevitのBIMモデルをTwinmotionで高品質のリアルタイムビジュアライゼーションに仕上げていく手法が、WANIMATION代表・西脇氏より紹介された。
WANIMATIONはTwinmotionに関する業務を多数手がけており、EpicGame社からTwinmotionのサービスパートナーに認定されている。
西脇氏によると近年、Twinmotionデータ(.tmデータ)による納品依頼が増えている。Twinmotionは、同じくEpicGame社のUnreal Engineより操作がシンプルで、誰でも簡単に使えるためだという。
では、Revitで読み込んだデータをTwinmotionで上記のように仕上げるには、具体的にどのような操作が必要なのだろうか。西脇氏より、編集作業の手順が紹介された。まずは準備編だ。
背景は今回デフォルトを使用したようだが、Twinmotion内に多彩な背景マテリアルが内蔵されているため、西脇氏はシーンに合わせて変更することを勧めた。これで準備編は終了だ。
次に、初めてのTwinmotionで覚えるべき基本テクニックが紹介された。
西脇氏によると、マテリアルは“広い面”から調整したほうがよいという。道路、芝、歩道、ガラス、外壁などが例だ。このとき、決してすべてのマテリアルを調整する必要はない。
「もちろん目が近いカメラアングルだったり、こだわりのマテリアルがあったりする場合はしっかり調整するべきですが、数個のマテリアル調整でもグンとレベルが上がります」(西脇氏)。
マテリアル・ライトの数値は、選択したアセットの種類が一致していれば、一括変換が可能だ。Revitデータを読み込んだ際に、つくり方によっては大量のマテリアル・ライトが存在するが、その場合もマテリアル・ライト・パラメータを一括変換できるという。
Revit、Twinmotionの既存ユーザーから多数の質問
質疑応答タイムでは多くの質問が寄せられた。質問者はRevitやTwinmotionの既存ユーザー、他社のソフトウェアを使用中の人までさまざまだ。そのうちの一部を紹介する。
まずは、Twinmotion for Revitの使用条件についてだ。
――Twinmotionを単体で所持しています。Twinmotion for Revitと機能は同じですか?
――Twinmotionユーザーが新たにRevitを購入した場合、それまで使っていたTwinmotionで、Twinmotion for Revitと同様の機能が使えるのでしょうか?
大浦氏:TwinmotionとTwinmotion for Revitは、『Twinmotion Cloud』の機能がない以外、大きな違いはありません。もともとTwinmotionユーザーだった方がRevitを購入された場合にも同じように使っていただけます。TwinmotionにRevit用のアドインが新しいバージョンで出ているので、アップデートしてからお使いください。
次に、技術面に関する質問だ。
――RevitデータをTwinmotionへ変換すると、各モデルが一体化してマテリアルの調整ができません。何か設定が必要なのでしょうか?
大浦氏:RevitからダイレクトリンクでTwinmotionへデータを渡すときに、『再構成』というオプションがあります。そこでひとつのオブジェクトに変換するか、マテリアルごと変換するのか、Revitの構成のまま変換するのかが選べるようになっています。それを使っていただければ大丈夫です。
――RevitからTwinmotion for Revitへ変換した際、照明を配置しただけだと、若干チープなレンダリングになってしまいます。マテリアル設定のコツはありますか?
西脇氏:難しい質問ですが、Twinmotionには高品質なマテリアルが豊富に用意されています。それらを積極的に活用していただければ、自然とビジュアルの質は上がってくるのではないでしょうか。
なお、Twinmotionの技術については、WANIMATIONから『Twinmotion デザインテクニック(エクスナレッジ)』という書籍が出ている。Twinmotionの技術を向上させたい人は手に取ってみてはどうだろうか。
――RevitとTwinmotionのマテリアルは連携していますか?
大浦氏:ダイレクトリンクでTwinmotionへ持っていくことができます。ただし、より高品質なデータにするためには、Twinmotionに用意されているマテリアルを使っていただくことをおすすめします。
――RevitからTwinmotionへデータを移行する前にやっておいたほうがよいことはありますか?
大浦氏:Revitで非常に細かくデータがつくられている場合は、なるべく必要なデータだけを整理し、ダイレクトリンクで持っていくのがよいでしょう。
そのほか「パストレーサー」に関する質問もあり、西脇氏は「興味のある方はぜひ勉強してみてください」と、パストレーサーについて解説されたスライドを共有した。
RevitとTwinmotionが連携したことで、より手軽に、ワンランク上の建築ビジュアライズを実現できるようになった。設計変更も瞬時に反映できるため、建築・土木・都市開発において今後、多方面にわたり活用されていくだろう。
TEXT_原由希奈
EDIT_西原紀雅(CGWORLD) / Norimasa Nishihara、山田桃子 / Momoko Yamada