東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)実行委員会、一般社団法人 日本アニメーター・演出協会(JAniCA)による「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2024 in TAAF」が、3月9日(土)・10日(日)の2日間にわたって開催された。

9日は制作プロダクションなどによる各社事例紹介の配信・聴講、10日はソフトベンダーなどによるセミナー配信や、としま区民センターでのリアル出展を実施した。

本記事では各社事例紹介から、マーザ・アニメーションプラネット(以下、マーザ)のCLIP STUDIO PAINTでできる!マーザ流ストーリーボード/絵コンテ術」の模様をレポートする。

記事の目次

    イベント概要

    「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2024 in TAAF」

    開催日:2024年3月9日(土)、10日(日)
    場所:としま区民センター
    参加料:無料
    主催:東京アニメアワードフェスティバル実行委員会
    共催:一般社団法人日本アニメーター・演出協会(JAniCA) ACTF事務局株式会社ワコム株式会社セルシス
    www.janica.jp/course/digital/actf2024inTAAF.html

    ストーリーボードで作品の面白さを素早く検証

    本セッションにはマーザのアシスタントマネージャーである浅田真理子氏、ストーリーボードアーティストの西山薫子氏と中屋裕登氏が登壇。

    オリジナルアニメーション作品『Ghost Tale』(2023)を題材に、CLIP STUDIO PAINTを用いたストーリーボード・絵コンテ制作のワークフローやマーザが配布しているストーリーボード制作セットの使用方法、ワークスペースのカスタマイズ術を解き明かした。

    "Ghost Tale" MARZA オリジナルアニメーション
    登壇者3名の紹介イラスト。本セッションでは『Ghost Tale』の描き下ろしイラストを交えながらわかりやすく解説していった
    マーザ主に、プロデュース、クリエイティブ、プロダクションの3のセクションに分かれており、登壇した3名はプリプロダクションを担当するクリエイティブに携わっている

    マーザでは作品によってストーリーボードと絵コンテを柔軟に使い分けており、『Ghost Tale』ではストーリーボードを採用した。

    絵コンテが絵と文字で演出指示を行うのに対し、ストーリーボードは連続した絵だけで説明するため10分あたり約1,000パネルと大量の枚数を描く必要がある。そこでマーザでは複数のアーティストがシーンを分担する方法を採っている。

    絵コンテとストーリーボードのちがストーリーボードの絵はブラッシュアップをくり返し、最終的にラフな原画レベルにまで描き込む

    アーティストが描いたストーリーボードは、動画形式のストーリーリールに出力する出来上がったストーリーリールを全員で視聴するスクリーニング」という作業を経て改善点を話し合い、ブラッシュアップをり返していく。

    マーザではストーリーボードの完成後、ト書きやセリフを加えて絵コンテ形式に出力することもあり、その場合は要らないパネルを間引きして整える。

    シナリオをにストーリーボードを描いては直す、というサイクルをくり返して完成にいたる。ときにはシナリオにも変更を加えて、作品をより魅力的にしていく
    ストーリーボードと絵コンテ形式にしたものが完成するまでのながれ。4つの工程においてCLIP STUDIO PAINTを使用する

    トーリーボードで完成度を高める理由について、中屋氏は「後工程ではシナリオや演出を変えることが難しいからとコメントした。プロダクションに移ると制作体制は大規模になり、それぞれが細かく分業化されていることもあって、変更点が出ると現場に混乱が生じてしまう。

    プリプロダクションの段階で作品の面白さを素早く検証できるという面でも、ストーリーボードは大きな役割を果たしている。

    ストーリーリールと完成映像の比較。ストーリーリールの時点で動きのタイミングまでつくり込まれているのがわかる

    さらにストーリーボードや絵コンテ制作にCLIP STUDIO PAINTを使用するメリットにも言及した

    にチームで使う上では、絵や音声のタイミングが付いたデータをCLIPファイル1つでやり取りきること、PCやiPadといったユーザーの環境に関わらず同一の作業ができること、連番画像や動画などの多様な書き出しフォーマットをカバーしていることが強みになっているという

    ▲マーザが紹介するCLIP STUDIO PAINTのメリット

    効率的な作業を実現するワークスペース

    本セッションでは初心者に向けてCLIP STUDIO PAINTのデモンストレーションわれ、デフォルトの設定でストーリーボードを描いたり、タイムライン機能を用いて枚数を増やしたりする方法紹介された

    また、マーザはストーリーボードや絵コンテを描く際に便利なCLIP STUDIO PAINT用のオートアクション素材「ストーリーボード制作セット」を配布しており、それらの使い方も併せて解説した。

    写真左から轟木保弘氏(モデレーター/ACTF事務局)、浅田真理子氏(アシスタントマネージャー/マーザ)、中屋裕登氏、西山薫子氏(以上、ストーリーボードアーティスト/マーザ

    ストーリーボード制作セットに入っている「絵コンテ用整列オートアクション」はCLIP STUDIO PAINTで描いた1,920x1,080のストーリーボードのパネルを、1ページ5パネルの絵コンテに落とし込む機能。まず素材に同梱した絵コンテ用紙「econte_image.png」を開き、そこに描いた連番の画像を読み込んでいく。

    続いてオートアクションウィンドウに「絵コンテ_サムネイル整列アクション.laf」のデータを流し込み、サムネイル整列を行うと、絵コンテ用紙の「PICTURE」部分に画像が自動配置される。絵コンテに画像を手動で置いていくという手間がなくなるため、作業効率のアップに貢献するだろう。

    ▲(上)絵コンテ用紙を開いて、(下)ストーリーボードのパネルを読み込む
    ▲(上)オートアクションのサムネイル整列を使うと、(下)パネルが絵コンテの枠内に自動配置される
    ▲(上)不要なパネルを間引いて(下)再配置も可能。ト書きやセリフを書き込めばストーリーボードから絵コンテを簡単に作成できる
    ▲マーザによるサムネイル整列オートアクションの使い方講座

    デモの後半はワークスペースカスタマイズ術を取り上げた。CLIP STUDIO PAINTはイラスト制作用のソフトなので、デフォルトのワークスペースではストーリーボードや絵コンテを描く際に必要のないウィンドウまで表示されている。

    効率的な作業を実現するため、マーザではどのようワークスペースをカスタマイズしているのか、実践に即したかたちで紹介する貴重な機会となった。

    ▲(上)デフォルト(下)全てのウィンドウをいったん閉じた状態のワークスペース。ここからストーリーボード作成に必要なウィンドウを開いていく
    レイヤー、アニメーションセル、タイムラインのウィンドウを開いた状態。これさえ表示しておけば問題ない
    ツールとサブツールはクイックアクセスパレットで管理。ストーリーボード用のセットを作成し、よく使うツールをユーザーの好みで登録していく
    クイックアクセスにはマーザが配布するストーリーボード制作セットの「ストーリーボード用フレーム操作オートアクション」も登録する。これはストーリーボード作成時に頻繁に利用するタイムライン操作をまとめたもので、オニオンスキン設定の変更とフレームの挿入・削除がワンクリックで素早くできるようになる
    「ストーリーボード用フレーム操作オートアクション」にはクイックアクセス用のアイコン同梱されている。アイコンを変えておけば、タイルを極小で表示したときも視認しやす。また使用頻度の高い「セルを一括指定」と「タイムラインの順番で正規化」のアイコンも用意されているので、メインメニューからクイックアクセスに登録してい
    最後はクイックアクセスのウィンドウを左に配置し、ワークスペースのカスタマイズが完成。スペースを広く使うことができ、より効率的な作業が可能になった
    ▲マーザによるクイックアクセス設定講座

    CLIP STUDIO PAINTのオートアクション素材の配布ページは、マーザによる動画講座やTIPSへのリンク掲載されている。ストーリーボードのより詳しい制作方法を知りたい方はこちらも参考にしてほしい。

    マーザ・アニメーションプラネット
    ストーリーボード制作セット 配布ページ

    TEXT_高橋克則/Katsunori Takahashi
    EDIT_李 承眞/Seungjin Lee(CGWORLD)、小村仁美/Hitomi Komura(CGWORLD)