プロのCGアーティストとして広告映像や商業施設での展示映像などを手がけるかたわら、近年は「#ぷるぷる」をモチーフにした個人創作にも精力的に取り組むまめたろう氏。この度、初の絵本『ぷりんぽよん』(ブロンズ新社)が発売された。3DCGで生み出した不思議な生き物「ぷりんぽよん」が、ゆれたり、のびたり、大きくなったり、ちぢんだりと変幻自在に形を変えながら部屋でひとり遊ぶ様子を描いた本作は、発売からわずか10日で重版が決定するという快挙を成し遂げた。その重版を記念して、まめたろう氏に絵本誕生の秘話を聞いた。
絵本出版のおしらせ
— まめたろう|CGアーティスト・絵本作家 (@mametarouboy) January 1, 2026
まめたろう初めての絵本「ぷりんぽよん」がブロンズ新社より出版されます!
「絵本をつくりたい!」というポストに編集者さんがDMをくださったのが始まりです。そこから2年かけてじっくり大切に作りました。… pic.twitter.com/KMn57hxPKg
まめたろう/mametarou
1986年熊本県生まれ。19歳からCGを学び、映像制作会社などでビジュアルデザイナーとしての経験を積む。表面的な感触にとどまらず、深層心理や本能的な部分に触れることができるような普遍的な良さを持つ映像を創作。制作会社に所属するかたわら、映像作家としてポップでシンプルな作品を制作し、NHK Eテレ「デザインあneo」にも参加中。「映像作家100人」2024・2025にも選出された。3児の父。熊本県在住。
X、YouTube
【主な受賞・選出歴】
• 「映像作家100人」2024/2025 選出
• 「JAPAN VERTICAL MV CONTEST 2023 Finalist
• 2023 デル主催CGコンテス「第2回『CGごはん』」プロ部門・優秀賞第3位
• マウスコンピューター「DAIV MOVIE CONTEST2017」グランプリ
• 「ASIAGRAPH」2017/2018 静止画部門準入選
• 「2016 アジアデジタルアート大賞展」動画部門入賞
思いは秘めるものではない、アウトプットのススメ
── まめたろうさんは映像制作会社REDに所属しながら、個人の映像作家としても活発に活動されています。現在は、どれくらいの割合で活動されていますか?
まめたろう:
活動リソースの配分としては、REDでの業務が8割、NHK Eテレ『デザインあneo』への参加など「まめたろう」指名の案件が2割くらいですね。
ただ、「まめたろう」名義での活動には、Xに投稿しているオリジナル作品などの個人制作も含みます。
── 今回の絵本は、どちらとしての活動になりますか?。
まめたろう:
会社の了承を得た上で個人プロジェクトとしてスタートしました。
完全に自分個人のつながりから生まれた企画ですし、紙媒体は未経験だったこともあって、担当してくださった編集者さんと直接やりとりしながら進めたかったんです。
── ブロンズ新社さんからオファーをいただいたのはいつ頃、どのようなきっかけだったのですか?
まめたろう:
2024年の2月です。以前から個人創作で発表している「ぷるぷる」した表現の絵本をつくりたいなと思っていたところ、当時Xで「#欲望はぜんぶ口に出したほうが仕事につながる」というハッシュタグが流行っていて、自分も便乗するかたちで「こういう絵本を作りたい!」と、誌面サンプルのような画像を添付して投稿しました。2024年2月19日のことでした。
そのポストをブロンズ新社の編集者さんがご覧になって連絡をくださったとのことでした。
── 願望を言語化して発信することで夢への扉が開いたわけですね。オファーをもらったときはどんな気持ちでしたか?
まめたろう:
すごく嬉しかったです! 漠然と「絵本をつくりたい」と思い続けていたものの、どのように進めればいいのかわからなかったので。
あのポストをしなければ今もただ「いつか絵本をつくりたいなあ」と漠然と思い続けていたかもしれません。この記事を読んでくださっている方も、ご自身の願望は積極的にアウトプットされることをオススメします。
#欲望はぜんぶ口に出したほうが仕事につながる
— まめたろう|CGアーティスト・絵本作家 (@mametarouboy) February 19, 2024
ぽよんぽよんの絵本を出したい!
誰か一緒に作ってくれませんか!? pic.twitter.com/z3DP8HWoZq
シンプルだからこそ、奥が深い
── どのように制作を進めていきましたか?
まめたろう:
最初の打ち合わせで「まめたろうさんが考えてる絵本の内容があったら共有してくれませんか?」的なことを言われた記憶があります。そこで、先ほどのXポストに添付した画像にさらなるアイデアを盛り込んで企画書というか、誌面イメージのようなものを作って2024年2月末に提出しました。
——きっかけになったXポストが2024年2月16日というタイムスタンプなので、急展開ですね。
まめたろう:
やる気をアピールしました(笑)。その頃は「ぷりんぽよん」ではなく、「ぽよんぽよん」と呼んでいたキャラクターを使って、形の変化と擬音の面白さを表現したいというのが原点にありました。
起承転結みたいなものは特になくて、いくつかのネタをつなげれば絵本にできるんじゃないか……というシンプルな発想でした。もちろん、そんな簡単なものではありませんでしたけど(苦笑)
── 「ぽよんぽよん」から「ぷりんぽよん」へと改めたのは、いつ頃のことですか?
まめたろう:
まさに、この誌面イメージを提出したときですね。編集者さんからその名称について何か言われることもなく、自分が作ったラフをリスペクトしていただいている感覚がありました。
原案となるアイデアはとても気に入っていただけたようで、そこから一緒にアイデアをふくらませていくことになりました。
▲ 制作途中の誌面イメージ。メイン読者層が「0〜3歳の乳幼児」であることをふまえ、よりシンプルで明快な表現を模索したという
── ベース案がまとまった後は、どのように制作を進めましたか?
まめたろう:
ブロンズ新社さん内の編集会議に上げてもらうには、より具体的な構成が必要だということで、編集者さんと一緒に詰めていきました。
その後、編集者さんが「台割」を作ってくださって……って、「台割」という用語を今回初めて知りましたけど(笑)、本の各ページにどんな画像や文字を配置するかを関係者で共有するためのドキュメントですね。
また台割を作る段階で、「ぷりんぽよんの色を、赤ちゃんが視認しやすいように、もっと赤系にしてコントラストを付けた方が良い」というアドバイスもいただきました。私は熊本在住なので、基本的にはメールでやりとりをして、たまにビデオチャットをしながら制作を進めていきました。
── 新しいビジュアルのアイデアが必要になるたびに3Dで制作されていたのでしょうか?
まめたろう:
そうですね。できるだけ具体的なイメージを共有した方が良いだろうと思い、がんばって3Dで作っていました。
ただ、途中から編集さんに「もっと簡単なラフで大丈夫ですよ」と言っていただいて(笑)。それ以降は、2Dスケッチでアイデアをふくらませてから3Dに起こす、というながれに変えました。
── 制作の途中で、大きな変更はありませんでしたか?
まめたろう:
ありました。担当編集者さんから「ぷりんぽよん以外の要素があると、赤ちゃんにとっては画の情報が複雑すぎるので、ぷりんぽよんだけで描いてほしい」という修正依頼をいただきました。
「え? このアイデアは最初からあったんだけど……」と、一瞬だけ思いましたけどね(笑)。ですが、絵本とひとくちに言っても、赤ちゃん(乳児=0・1・2歳児)向けと、幼児向けでは配慮すべきことが全然ちがうんだと気づかされました。
Xポストに添付した画像に、「ぎゅ〜」という擬音とともに、狭くて硬い物体をくぐり抜けようとしている画像がありますが、それが「余計な要素」だということでした。
「ぷりんぽよん」の原点には「#ぷるぷる」と呼んでいた表現があって、その頃から「圧力と解放」、つまり「ぷるぷる」とした存在が障害物とインタラクションする面白さを追求していたので、指摘を受けたときは目から鱗でした。絵本の世界も奥が深いな、と感心しましたね。
── そこから、どのような修正・ブラッシュアップを行いましたか?
まめたろう:
ラフな線画を描きながら、表現と構成を練り直していきました。
最終的には、ぷりんぽよん自体の形状変化もよりシンプルになりました。また、その後の3DCGのイメージ制作においてもカメラアングルは正面から、高さも水平という、シンプルな画面設計にしました。
このプロセスを経たことで、かえって絵本としての完成度は高まったと思っています。
▲ よりシンプルな表現を求めて描いたラフの一部
── まめたろうさんご自身が3人のお子さんを育てていらっしゃることも、絵本を作る際に活かされているのでは?
まめたろう:
それはあるかも。普段から色々な絵本を読んでいるので、先人の絵本作家さんたちが培ってきた型みたいなものを、無意識のうちに自分の中に落とし込めていたのかもしれないです。
だから最初に提出したサンプルも、レイアウトや書体のバランスなど、ある程度的を射た提案ができていたのかなとは思います。
▲ よりシンプルな表現を求めて描いたラフの一部
3DCGだからこそ生まれた「触ってみたくなる」質感
── 「ぷりんぽよん」の3DCGワークで、意識されたことを教えてください。
まめたろう:
手触りがあるような、思わず触ってみたくなるフォルムや質感を意識しました。CGで作っているけれどCGっぽさを感じさせない、むしろ実体があるように見えるような質感の探求をずっとやってきていて、その延長線上に「ぷりんぽよん」がいる感じです。
プルプルしていて、ぽよんと弾むような動きの気持ちよさと、目に見えるような柔らかさ。赤ちゃんが思わず手を伸ばしたくなるような絵本にしたかったので、そこは特にこだわりました。
── ブックデザイナーさんを交えてのやりとりで印象的だったことを教えてください。
まめたろう:
カラースペースの問題ですね。普段の映像の仕事ではRGBデータで制作していますが、印刷用にはCMYKへの変換が必要になりました。
正直、僕の手に余るところだったので(苦笑)、ブロンズ新社さんとデザイナーさん、印刷会社さんが、元のビジュアルの印象を保ったままCMYKへ変換するために色々と調整してくださいました。最後まで「Mを5%上げて」といったレベルで細かく詰めてくださっていたので本当に感謝しています。
── 判型や紙などはどのように決めていかれたのでしょうか?
まめたろう:
ボードブック(185×185mm)の判型については、制作の途中でいくつかの見本を送ってもらって「まめたろうさんの希望は?」と聞かれたのですが、「全然わからないのでおまかせします」とお返事しました(笑)
あとで調べてみたら、この判型は0〜3歳児向けの絵本のスタンダードなんですね。ページ数もかなり初期から22ページに決まっていたと思います。
発売から10日での重版という快挙、その先にあるもの
── 発売後の反響はいかがでしたか?
まめたろう:
発売後はXでのエゴサに精が出ています(笑)。赤ちゃんがぷりんぽよんのページをじっと見つめている動画や写真が投稿されていて、それがとても嬉しかったです。「何度もめくってる」「声に出して読むのが楽しい」という声もあって、作った甲斐がありました。
あとはCGアーティストが作った絵本、という文脈で話題にしてくださる方や、「紙の絵本でこんな質感が出せるんだ」という声もあって、印刷の技術の高さもあわさってひとつの体験になっているのかなと思っています。
── 2月5日の発売からわずか10日ほどで重版が決まったそうですね。いつ、どのように知ったのですか?
まめたろう:
ブロンズ新社さんがXにポストされた日に担当編集者さんからご連絡をいただいて知りました。世間の方と同じタイミングです(笑)
あまりの驚きで、しばらく放心状態でしたね。新人作家の絵本が短期間で重版になることは滅多にないことらし
2月5日発売の赤ちゃん絵本『ぷりんぽよん』
— ブロンズ新社 (@BronzeShinsha) February 16, 2026
発売から10日ほどで、重版が決まりました~!!
CGアーティスト・まめたろうさんの絵本デビュー作!
変幻自在・思わずさわってみたくなる、ふしぎないきもの「ぷりんぽよん」にぜひ書店店頭で会ってみてください#ぷりんぽよん #まめたろう… pic.twitter.com/lzIbT83DCQ
── 重版が決まった要因はどんなことだと思いますか?
まめたろう:
色々あると思いますが、書店員さんが応援してくださっている印象が強くあります。「『ぷりんぽよん』入荷しました」というポストや、手描きのPOPを作ってその写真を投稿してくださったりとか。そういった反響がクチコミで広まっていったのかなと思っています。
自分にできるのは、ポストしてくれた書店のアカウントに「ありがとうございます!」とリプライして、片っ端からフォローすることだけです(笑)。
本というのは、書店員さんに愛してもらえるかどうかが本当に大切なんだということを、身をもって感じました。
── 最後に、今後の活動予定を教えてください。
まめたろう:
サイン会ではありませんけど(笑)、近く熊本市の書店さんをブロンズ新社の方と一緒にご挨拶に回る予定があります。応援してくださった書店員さんに直接お礼を言える機会が楽しみです。
絵本出版という夢が叶って、本当に嬉しいです。
まめたろうの活動としては、当面は『ぷりんぽよん』に力を注いでいくつもりです。将来的には個展もやってみたいですね。立体的な展示という形でも体験してもらえたら面白いんじゃないかなと思っています。
絵本だけでなく、CGアニメーションとしてのぷりんぽよんの展開なども考えてみたいですし、まだまだこのキャラクターの可能性は広がっていると感じています。
個人創作に力を注ぎ始めたのは2018年頃からですが、当時はこんな夢のようなことが実現できるとは思っていませんでした。
小さな一歩かもしれませんが、実際にアクションを起こすことこそが大切だと改めて感じています。キャリアに悩んでいる方や、オリジナル創作に興味がある方がいれば、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
えー!なんですかこれはーかわいすぎます!ほしい!
— まめたろう|CGアーティスト・絵本作家 (@mametarouboy) February 23, 2026
あゆみBOOKS仙台一番町店さん、とてもすてきな『ぷりんぽよん』ぬいぐるみを作っていただきありがとうございます…!!
文章も、大事にした部分が伝わる内容でとてもうれしいです https://t.co/bPVDZp5oce
info. 『ぷりんぽよん』書籍情報
『ぷりんぽよん』まめたろう 作
発売日:2026年2月5日(木)
定価:1,210円(税込)
判型:185×185mm ボードブック
頁数:22ページ
ISBN:978-4-89309-750-7 C8771
www.bronze.co.jp/books/9784893097507/
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cgworld.jp/article/202412-sweetsmate-mametarouboy.html
INTERVIEW & EDIT_NUMAKURA Arihito