CGWORLDリサーチャーのますく3Dが、世界最大級のバーチャルイベント『バーチャルマーケット(Vket)』の舞台裏に潜入!Vket3から出展者として参加し、現在は大学でメタバース教育の講師や京都精華大学VR部顧問も務める筆者が、VRChatユーザー視点の鋭い質問でVketの内側に迫ります。情熱的なスタッフへのインタビューと裏舞台ツアーを通して、その創造の秘密と未来の展望、そしてVket2025 Summer&Vket発のリアルイベントVketRealの最新情報をお届けします!
HIKKYPR担当 松澤さん インタビュー - メタバースの先駆者、HIKKYの軌跡とVketの舞台裏
Vketを運営するHIKKYのPR担当、松澤亜希美さんに、Vketが獲得した4つのギネス世界記録や、運営会社のHIKKYの秘密、そしてVket2024 Winterの舞台裏についてお話を伺いました。
ますく3D:松澤さん、本日はよろしくお願いします。数々のトレンド入り、昨今のVRChatやVketの勢いは凄まじいですね。特に、4つ目のギネス記録を取ったニュースは衝撃的でした。今日はVketについて、そして運営母体のHIKKYについて、CGWORLDらしく、クリエイティブな目線でインタビューさせていただきたいと思います!
松澤:PR担当の松澤です。本日はよろしくお願いいたします。私はVket6からHIKKYでPR担当をしているので、詳しくお話しできると思います。それでは、前半では弊社やVketについてご質問いただき、後ほど実際のVket会場にてクリエイター達を交えながらご案内いたしますね。
HIKKYとVketの軌跡:メタバースの先駆者
現実と仮想の境界を超えて世界中から延べ130万人が集う「Vket」。そこでは誰もが創造者となり無限の可能性を手にする。2018年の初開催から瞬く間に世界最大のVRイベントへと成長したVketの背後には、「Creative Revolution 未来も、世界も、その手でつくれ!」という壮大なミッションを掲げる株式会社HIKKYの存在があります。
このバーチャル空間では、クリエイターによるアバターや3Dモデルなどの展示・販売が行われ、多くの企業も自社製品やサービスのプロモーション拠点として出展。近年ではVket発のリアルイベント「VketReal」も開催され、オフライン会場でのグッズ販売や展示を通じて、デジタルとリアルを融合させた新たなイベント形態を確立しています。
今回のインタビューでは、急成長を続けるVketの現状と今後の展望について詳しく伺っていきます。

HIKKYの偉業:4つのギネス世界記録

Vketはその規模と影響力を示す証として、これまでに4つのギネス世界記録を達成しています。
・バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数:1104ブース(2021年2月18日)
・1時間でX(Twitter)に投稿されたアバターの写真の最多数:2,311枚(2021年8月14日)
・1時間でX(Twitter)に投稿された振り付けされたダンスを踊るアバターのビデオの最多数:665件(2023年7月18日)
・1時間でX(Twitter)に投稿されたアバターが乾杯している写真の最多数:1,202件(2024年7月27日)
ますく3D:ギネス記録を4つも持っているのはすごいですね!世界最大級のVRイベントに参加していると思うと、なんだか誇らしい気分です!
気になるVketReal規模縮小の真相は如何に!?
ますく3D:自分で出展していた頃は締切との戦いで大変でしたが、今では学生たちを通じて参加させてもらっていてVketにVketRealと本当にこのイベントを楽しませてもらっています(学生たちは締切前は大変そうです)。

ますく3D:ところで、過去に行われた秋葉原での開催とは対照的に、今回のVketReal 2024 Winterはかなりクローズドな印象を受けました。この規模縮小の背景についてユーザーの間で疑問の声が上がっていたため、詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
松澤:まずはVketRealについてお話しします。今回は池袋サンシャインシティという会場を選んだことからもわかるように、より意図的にクローズドなイベントにしました。VketRealは元々、VRやXRの技術を多くの方に知っていただくことを目的としていましたが、今回は、そこで興味を持っていただいた方々に、より深くVketやVRを好きになっていただくための施策を多く取り入れています。
過去には会場を多くしすぎたことで、来場者の方々が全てのブースを回りきれないというデメリットも生じていました。そこで、あえて規模を制限することで、より質の高いイベント体験を目指すことにしました。
ますく3D:なるほど。今回のVketRealはよりコアなファン向けのイベントになっているんですね。
松澤:はい。規模を縮小した分、コンテンツの質を高め、より没入感のある体験を提供することを目指しています。ただ、Vketは夏と冬の年2回開催しているのですが、夏のVketの方が準備期間も長く、毎回イベント規模も冬に比べて大きくなる傾向です。今回のVket 2024 Winterは、夏のVketから間隔があまり空いていないこともあり、少し規模を縮小していますが、次回Vket 2025 Summerでは、再び大規模なイベントとして、皆様の期待に応えられるよう準備を進めていて、今から非常に楽しみです。
Vket出展有料化の背景
ますく3D:次に、Vket出展の抽選化、有料化の背景についてもお聞かせください。応募人数も増加しているように思えるのですが、有料化に踏み切った理由は何でしょうか?
松澤:おっしゃる通りVketは多くの方に注目していただき、応募人数も増え続けています。しかし、無料で誰でも出展できるという状況が、入稿を落とす人やブース全体のクオリティの低下にも繋がってしまったんです。
有料化及び抽選制での出展はイベントの質向上のための施策で、出展者の方々に「お金を出すからにはちゃんとやろう、落ちてしまった人の分まで頑張ろう」という意識を持っていただき、コンテンツのクオリティ向上に繋げる狙いがあります。参加数を絞ることでイベント全体の質を高めることを重視しています。
ますく3D:なるほど。有料化・抽選制によって出展者の意識も変わり、イベント全体のクオリティ向上につながるというわけですね。
VRChatとの連携を深めるVket
ますく3D:VRchatの発展とVketは切っても切れない関係にあると思いますが、VketとVRChatとの連携について、今後の展開などお聞かせいただけますでしょうか?
松澤:Vketは、HIKKY独自のメタバース開発エンジンVket Cloudで制作されたWebメタバース会場と、VRChatの2つのプラットフォームで実施されています。
Vket Cloudは、Webブラウザからアクセス可能なメタバース空間を制作できる自社開発のサービスで、特別な操作や高性能なデバイスを必要とせず、直感的に楽しめるのが特徴で、幅広い層のユーザーに向けて設計されています。
一方、VRChatは本格的な没入型VR体験を提供するプラットフォームです。VRChatでは、専用のVR機器を使用することで、より高度な没入感と相互作用を楽しむことができます。
VRChatは、Vketにとって非常に重要なプラットフォームです。コアユーザーの皆様が、Vketで購入したアバターやアイテムをVRChatで活用したり、VRChatのユーザーがVketに集まったりと、相互に影響し合うことで、メタバース全体の盛り上がりに繋がると考えています。
今後も、VRChatとの連携を深め、ユーザーの皆様に、より豊かなメタバース体験を提供していきたいと考えています。
ますく3D:VRChatユーザーにとって、Vketはどのような魅力があるのでしょうか?
松澤:VRChatユーザーの皆様にとって、Vketは、最新のアバターやアイテムを入手できる場所であると同時に、メタバースのトレンドを体感できる場所でもあります。また、Vketには、様々な企業やクリエイターが出展しており、新しい出会いや発見の場としても活用していただけます。
ますく3D:VRChatとVketの連携強化で、どのような新しい体験が生まれると期待できますか?
松澤:例えば、VketのイベントとVRChatのコミュニティが連動した企画や、VketVRChat上で特別なイベントを実施するなど、様々な可能性が考えられます。今後、両者がますます協力していくことで、メタバース体験はさらに進化していくと思います。
ますく3D:VRChatユーザーへのメッセージをお願いします。
松澤:VRChatユーザーの皆様、ぜひVketに遊びに来てください! Vketは、メタバースの未来を体感できる、新しい出会いや発見があるとってもワクワクする空間です。新しいアバターやアイテムとの出会い、そして、メタバースならではの体験をぜひVketで楽しんでください!
HIKKYの組織体制とクリエイターへの想い

ますく3D:Vketのような大規模なイベントを、どのような組織体制で運営されているのでしょうか。HIKKYのクリエイティブや、クオリティアシュアランスに対するこだわりについてもお聞かせください。
松澤:HIKKYの社員数は決して多くありませんが、各分野のプロフェッショナルが集結し、外部のクリエイターさんとも連携しながら、Vketを運営しています。ワールドのモデラーやディレクターなど、各分野のスペシャリストが集まり、細部までこだわり抜いたワールドを制作しています。
HIKKYでは、Vketに出展していた方や外部のクリエイターさんが正社員になるケースも多く、VRチャット内でリテラシーの高い人材をリクルートするなど、独自の採用活動も行っています。外部のクリエイターさんとの連携も積極的に行っていますが、クオリティを維持するために、HIKKYの社員がしっかりと監修を行っています。
ますく3D:toC(一般出展者)とtoB(企業ブース)向けのチームで、人材を分けているのでしょうか?
松澤:はい。分けています。一般ワールドのモデラーやディレクター、そして企業ワールドのディレクターを分けて配置しています。
ますく3D:それぞれのチームの規模感はどのくらいでしょうか?
松澤:ディレクターに関しては非常に少人数制です。Vket全体を統括するディレクターがいて、その下に企業ワールドを専門に見る担当者、一般ワールドを専門に見る担当者がそれぞれ1人ずつという体制です。

メタバースマーケティングの可能性:イマーシブタイムの重要性
ますく3D:実は、インタビューの前にVketに参加してきました。土日の2日間では見きれないほど広くて驚きました。特に気になったのは、企業ブースではゲーム性を取り入れたインタラクティブな体験が提供されていた点です。企業ブースの展示についてぜひお聞かせください。
松澤:はい、企業ブースでは、ただ商品を展示するだけでなく、来場者の方々に楽しんでいただけるようなゲーム要素を取り入れています。これは、「イマーシブタイム」というマーケティング用語で注目されている、没入感のある体験を提供することで、企業やブランドへの好感度を高める効果を狙ったものです。
企業ブースに関しては、滞在時間が長ければ長いほど、その会社やブランド、商品に対する好感度が上がるというデータが出ています。単に広告を出すだけでなく、Vketならではの体験を通じて、企業やブランドへの理解を深めてもらうことを目指しています。
例えば、花王グループカスタマーマーケティングさんのブースでは、花王さんの商品を使って汚れを倒すゲームが用意されており、商品を知らない方でも、ゲームを通して自然に商品について知ることができます。東京マルイさんのブースでは、VR空間で東京マルイのエアソフトガンを使ったサバイバルゲーム体験を提供しており、今回で9回連続でVketに出展いただくほどの人気を集めています。
ますく3D:私もインタビュー前に友人とVketを周ったのですが、パラリアルラスベガスの東京マルイブースでの対戦ゲームにすっかり熱狂してしまいました。



Vketのグローバル展開と富士山ワールド
ますく3D:Vketは海外のユーザーも多いとのことですが、どのくらいの割合かお聞かせください。
松澤:Vketは海外のユーザーが約4割を占めており、日本に興味のある方が非常に多いんです。そこで、今回は日本を象徴する富士山をモチーフにしたワールド「パラリアルフジヤマ」を制作することにしました。
富士山は海外の方にも馴染みがあり、都市ではないため、メタバースならではの自由な発想でワールドを制作できると考えました。また、富士山のコミュニティとのコラボレーションも実現し、より魅力的なワールドに仕上がったと思います。
これまで企業のワールドは、ラスベガスやお台場のように実在の都市をパラレルワールドとして再現することが多かったのですが、今回は初めて富士山という概念をモチーフにしました。

メタバースの明るい未来へ
ますく3D:最後に、メタバースの未来について、松澤さんの展望をお聞かせください。
松澤:メタバースは、単なるゲームやエンターテイメントの場ではなく、ビジネスや教育、コミュニケーションなど、様々な分野で活用できる可能性を秘めています。HIKKYは、Vketを通して、メタバースの可能性を広げ、より多くの人々にメタバースの魅力を伝えていきたいと考えています。
ますく3D:本日は貴重なお話、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。
インタビューを終え、私はVket2024Winterの舞台裏ツアーに参加することに。(後篇へ続く)