アイドル系アニメのOPやEDはもちろん、それ以外のジャンルにおいてもアニメでダンスが描かれることは珍しくない昨今だが、ダンスそれ自体をモチーフとした作品となると、意外にも例を挙げるのが難しい。10月より放送がスタートしたTVアニメ『ワンダンス』は、ストリートダンスを踊る高校生たちの青春を描いた作品だ。

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※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 328（2025年12月号）からの転載となります。

Inrofmation

Marvelous Designerによる服の制作とシミュレーション、シワの表現

キャラクターの踊りがダンサーと一体化しているのと同様に、服の揺れ方もダンサーの動きをそのまま反映させている。本作では素体モデルに対してMarvelous Designer（以下、MD）で制作した衣装を着せ、ダンスの動きに基づいたクロスシミュレーションをかける方法を採用。「服のシワひとつとってもダンサーが生み出した形にしたかった」と、加藤監督。

ダンスの動きがそのまま服の揺れに反映され、しなやかなながれをつくり、めり込みも自動的に避けることができるなど、メリットは大きい。本作では約20人のメインキャラクターが存在し、服は約50着以上が用意された。

これらは基本パターン縫製をスタジオの典樹が担当し、調整およびシミュレーションをサイクロングラフィックスとスパイスが手がけている。MDで服をつくるには服飾のパタンナーのように型紙から起こす必要があるが、様々なCGキャラクターを手がけてきた典樹にとっても、こうしたつくり方は本作が初めてだったという。パターン制作においては加藤監督のオーダーに基づき、アニメ的な誇張を採り入れ、柔らかさを表現できるよう、布素材を実際にアニメーションさせながら調整が重ねられた。

Marvelous Designerでのパターン調整

MDの作業画面。画面右がパターン（型紙）で、左が着せたときの姿。湾田の制服のカーディガンでは、身幅と袖幅を大きくし、ダボッとしたシルエットを目指したという。

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パーカーのフードの空間保持

MD使用上の工夫の一例。髪の長いキャラクターは房の動きをBlender上でシミュレーションをかけるため、あらかじめフード内にダミーの球形アバターを配置し、フードのコリジョンになるよう設定することで、空間を保持しておく。速いターンなどの動きの場合はフードの動きも激しくなり、このガードがないと形が崩れてしまうので必須の方法だったという。

パーカーのフードの形状維持

フードの形状をキープするための工夫。パーカーのフードもシミュレーションで動くため、留めておかないと踊った際に脱げてしまう。そのため、フードを二重に作成し、内側をキャップにピン留めした上で非表示にしている。二重にすることで布地がしっかりし、中にキャップを被った上で尖りのあるシルエットを表示することができる。また、現実ではありえない部分に切れ目を入れるなど、モデリング上の工夫も凝らしている。

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服のシミュレーション

法線を活用したシワの表現

服のシワ表現については作画に合わせたルックに調整されている。Blenderジオメトリノードを使用して元の法線にブラーをかけた情報をアトリビュートとしてもち、シェーダエディタ側でその情報を呼び出して使用。「影にブラーをかけないと、アニメーションを付けた際に細かいディテールがフレームごとに出たり出なかったりと暴れてしまうので、影を丸めることでアニメっぽいルックにしています」（CG監督・秋山侑輝氏）。

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（3）に続く。

※TVアニメ『ワンダンス』のメイキングはサイクロングラフィックス公式Webサイトでも公開されています

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