講談社の「モーニング」に連載されていた三原和人による人気漫画『ワールド イズ ダンシング』が今夏TVアニメ化された。室町時代、猿楽師の家に生まれた鬼夜叉(後の世阿弥)が新しい舞をつくり上げていくという情熱的なストーリーで、アニメーション制作と3DCGを担当したのはCypicだ。

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    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 337(2026年9月号)からの転載となります。

    Information

    『ワールド イズ ダンシング』
    全国9局にて放送中、Prime Video・ABEMA、ほかにて配信中
    原作:三原和人『ワールド イズ ダンシング』(講談社モーニングKC刊)/監督:黒柳トシマサ/アニメーション制作:Cypic
    sh-anime.shochiku.co.jp/worldisdancing-anime
    ©三原和人・講談社/『ワールド イズ ダンシング』製作委員会

    美術背景ガイドの制作と3DCGによる舞台の表現

    本作では、京都の街並みの3Dガイドを制作するにあたり、美術設定監修を密に受けながら制作が進められた。「建物の柱は、昔は技術がないのでゆがみや太さにバラつきがあったはずです」と設定制作の小金井源太氏が語るように、柱一本の表現までこだわり抜かれている。

    村部ではよりバラつきが大きく、三条のような市街では洗練された寸法の柱にするなど、史実に基づいたつくり分けもされた。また、当時、2階建て建築の技術はなく、裕福な家に見られる「うだつ」も並びすぎると不自然なため数を減らすなど、少ない資料を丹念にあたりながらつくり込まれている。

    左より、設定制作・小金井源太氏、3Dリードモデラー・阿達里紗氏、3D監督・中野祥典氏、アニメーションプロデューサー・溝口 侃氏(以上、Cypic/ ※2026年4月にCygamesPicturesから社名変更)
    cypic.co.jp

    一方、3DCGでフィニッシュまで仕上げた舞台の美術背景では、テクスチャを小倉工房に描いてもらい、木目のニュアンスや角度による光の反射が出るよう調整されている。

    近景の松もモデリングで制作し、本編の美術上がりに色味を近づける調整も行われた。3Dリードモデラーの阿達里紗氏は「どうしたら小倉工房さんの松になるか苦労しました。ブラシタッチのテクスチャをパネルでつくって突き刺すなど、試行錯誤しています」と制作をふり返り、語ってくれた。

    室町時代の京都の街並み

    室町時代の京都の街並みは監修を受けながらつくられた。戦乱が多かった室町時代は資料自体が少なく、現存する資料を基に歴史的根拠に基づく想像を交えながら作成されている。

    柱一本にしても、現代の木材はまっすぐ使えるが、当時は技術が未熟なため歪みや太さのバラつきがある。それでも市街地は比較的、すっきりとした印象に仕上げられている。

    • ▲京都の街並みの美術設定の例で、団子屋の切り返しの設定画
    • ▲街並みは田舎よりすっきりとした印象で、団子の形状も丸くなく五平餅のような潰れた形だ
    • ▲3DCGで起こされた3Dガイド用のモデルの一例
    • ▲屋根の組み方や置かれているアセットも、細部まで詳細につくり込まれている

    以下、第2話のカット制作のながれを紹介する。

    • ▲第2話のカットの3Dレイアウト。背景が詳細につくり込まれており、美術が描きやすい。また、縮尺が正しいキャラクターモデルを配置しているため、作画ガイドとしても精度が高い
    • ▲完成した美術。レイアウトをガイドに描かれている。のれんや木材の質感のブラッシュをしているが、パースや建物の構造はガイド通りだ
    ▲完成カット。背景や人物に破綻のない構図になっている

    足利義満の住まい「三条坊門」

    京都の街の中でも、足利義満の住まいである三条坊門はさらに洗練されており、柱なども現代建築のように歪みが少なく、まっすぐで寸法のそろったものが使われている。建築物の寸法も詳細に設定されており、当時の建築に対する美術設定側のこだわりを、3D側でも忠実に再現しているという。

    • ▲三条坊門全景の設定画の一例
    • ▲全景と建物ごとの詳細な設定画が用意されており、特に建築設定では構造や広さまで細かく設定されているため、図鑑としても見応えがある
    • ▲主な建物の平面図。3D制作用の見取り図として、各建物の大きさが細かく設定されている
    • ▲左画像赤枠内の拡大
    • ▲3DCGで起こされた3Dガイド用のモデルの一例
    • ▲様々なアングルから細部の確認が行われている

    以下は、第4話のカット制作のながれ。

    • ▲3Dレイアウト。柱や床が精緻につくり込まれているため、ガイドとしての精度が高い
    • ▲同カットの美術。3Dガイドを忠実に再現して描かれているのがわかる
    ▲完成カット

    3DCGで表現された舞台

    第1話の観阿弥が自然居士(じねんこじ)を舞う舞台は、一部のカットが3DCGでフィニッシュまで仕上げられている。舞台を全て3DCGでつくることで、カメラが回り込むような動きのあるカットでも破綻なく美術を成立させられる点が強みだ。

    ▲舞台全景の美術ボード
    ▲3DCGでつくられた舞台のモデル。樹木は基本的に書割だが、松のみ3DCGでモデリングされている。なお、テクスチャは美術の小倉工房が描いている
    • ▲レンダリングチェック用のモデル
    • ▲同じく、レンダリングチェック用のモデル。美術ボードと色味が異なっているのは指示通りだ
    ▲完成カットの一例。カメラが大胆に回り込む動きに仕上げられている。床のテクスチャは画像を貼るだけでなく、シェーダによってエッジに反射が入るよう調整されており、3DCGと美術、作画が自然に融合した素晴らしい仕上りだ

    CGWORLD 2026年9月号 vol.337

    特集:『価値を創造する3DCG』
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2026年8月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_石井勇夫 / Isao Ishii(ねぎデ)
    PHOTO_大沼洋平 / Yohei Onuma
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada