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世界中で話題を集めている Autodesk Maya 用アニメーションプラグイン「IKinema」 と衣服デザインツール「 Marvelous Designer 」。それぞれに特徴的な機能を持つ、この2製品の国内販売開始を記念し、セミナー講演のために来日した両ソフトの開発担当者たちに、各々の優位性や今後の展望について話を聞いた。
学生からプロまで。強力なフルアニメーション・ソリューション〜IKinema
IKinema は、サリー宇宙センター(Surrey Satellite Technology Ltd. /SSC)で培われた、人工衛星用の制御技術から派生したという、面白い出自のアニメーション制作ツールだ。元々、宇宙科学者だったという IKinema 社 CEO のアレクサンドル・ペチェフ/Alexandre Pechev 氏。同氏が SSC に在籍していた際、所属していた部門がスピンアウトし、現在の IKinema 社が設立された。人工衛星の管理という、最先端の現場で培った素早く姿勢軸を制御するための技術が、例えばキャラクターの回転軸等に対して、ソルバが働くといった具合に IKinema で活かされているというわけだ。
IKinema の作業画面
Autodesk Maya プラグイン版のデモ映像
設立当初は、PC・Xbox 360・iOS・Android 向けのゲーム用ランタイムエンジンとして提供されていた IKinema だったが、1年ほど前から、Autodesk Maya のプラグイン開発が始められており、さらには Web 版のリリースも予定されている。
この Web 版とは、プラグイン版などのハイエンドユーザー向けソリューションとは異なり、誰でも Webベースでモーション編集ができるというもの。
「高価なハイエンド 3DCG ソフトへの投資が難しい小さな企業や、学生や趣味の人にために、Web ベースでアニメーション編集ができるツールとして開発しています」(アレクサンドル・ペチェフ CEO )。
この Web 版は、 IKinema WebAnimate と呼ばれ、2011年11月末頃から試用版の提供が開始される予定である。Web 上でキャラクターへのアニメーションづけが素早く行え、FBX ファイルデータへ書き出すことができるなど、汎用性も高いという。いずれは、データ書き出しの際に、課金する(100~200円程度)可能性もあるというが、当面は無償で使えるということなので、ぜひ体験してみてほしい。
IKinema WebAnimate ※2011年11月末頃リリース予定
一方、Maya プラグイン版の特長については、モーションキャプチャデータの扱いを得意とし、マーカーデータを Maya 上で解析することが可能だという。さらに、Maya 内部で Vicon と Xsens 製のモーションキャプチャ・システムから直接データをストリーム&レコードすることができるそうだ。
また、もう1つの特長としてペチェフ CEO が挙げたのは、どんな複雑なスケルトンでも、Maya 上で扱うことができ、これらを、リアルタイムに編集できるという点。例えば、Autodesk MotionBuilder では難しい、馬やドラゴンといった、人間以外のキャラクターにも数分でリグを付けることができ、モーション作成が、容易なのだとか。
「リグの構造が人とは異なる、フルボディ IK を使った木や花、ドラゴンといったモデルにモーションを付けるのに、最適なツールになりますよ」。
さらに、次のバージョンではストレッチ IK に対応するなど、今後も機能拡張を続けていく予定というから大いに期待したい。
あらゆるソースからリターゲットが可能
数分でどんなスケルトンにもリグを生成
「IKinemaは、ハイエンドユーザーだけでなく、全てのアニメーションを扱うこと人にとって最適なツールであることを目指しています」。
学生からプロのデジタル・アーティストまで、アニメーションを扱う全てのクリエイターを対象に、これからも進歩を続けていくという IKinema の今後に、注目だ。
型紙から 3D の衣服を編集、直感的でスピーディー〜 Marvelous Designer
続いては、2D で表示されている型紙(パターン)を編集すると、リアルタイムに衣服の 3DCG をシミュレートし、生成してくれる衣服デザインソフト Marvelous Designer。実際の服飾デザインに近い形で、3D の服を作ることができるという、非常に直感的なツールだ。
開発元は、2009年1月に設立された韓国の CLO 社。この Marvelous Designer は、大学で 3DCG とファッションの勉強をしていた同社創業者が、在学中に開発したコアエンジンが基盤となっているそうで、CG 用のクロスデザインツールでありながら、実際のファッションデザインの技術が、随所に採り入れられているという。
ファッションデザインの視点と3DCG技術が融合した「Marvelous Designer」
3D Clothing - Runway of Korean Sport Brand named ELORD from marvelousdesigner on Vimeo.
Garments Designed by ELORD/Virtual Runway Made by CLO Virtual Fashion/Garment Modeling and Simulating Animation Made by CLO 3D/Camera and Light set by 3Ds Max/Render by Octane
CLO 社の フィル・チョウ/Phil Cho 氏によると、その特徴は、非常にリアルなクロスシミュレーションを行いながらも処理速度が高速で、リアルタイムに編集結果を確認できること。
「本来、3Dのクロスシミュレーションをリアルに処理しようとすると、非常に時間がかかります。しかし、実際の制作現場では、スピードが重要です。そのため、Marvelous Designer には、シミュレーションを迅速に行えるエンジンを搭載しています」。取材の際、実際に Marvelous Designer を使ったデモを見せてくれたのだが、ノートPC上でもサクサク動いており、動作がとても機敏だったのが印象的であった。
動作は非常に軽快だ
では、実際の衣服デザインの機能はどのようなものだろうか。まず作業画面を見てみると、何と言っても特徴的なのが、3D の衣服と一緒に、2D 展開された衣服のパターンが表示されている点。この 2D のパターンデザインを、例えば袖の部分をクリックし、ちょっと伸ばしてみたりと変更することで、3D の衣服にも、その変更がリアルタイムに反映されるのだ。
「2D のデザインパターンと 3D をシンクロさせながら、衣服のデザインが行えます。シミュレーションした後でも、服の形状をリアルタイムに修正していくことが可能なんです」(ヨンエ・バン/Kyoungae Bang 氏、CLO 社)。
ちなみに、現段階ではまだ搭載されていないが、逆に 3D で編集した内容を、2D のデザインパターンに反映するという機能も、今後は搭載する予定なのだとか(同社の服飾デザイナー向けソフト 「CLO 3D」 には、すでにこの機能が搭載されているとのこと)。
2D のパターンの編集内容が、即座に 3D に反映される
さらに実際の作業では、衣服をレイヤーで管理し、Tシャツの上にジャケットを着せたりといった処理も可能。その他にも、ズボンからはみ出たシャツの裾が片方だけはみ出ている......といった、部分的に重ね具合を調整することも問題ないそうだ。
また質感に関しては、jpgなどの汎用的なテクスチャ素材を、画面にドラッグ&ドロップで適用することができる。さらに、デニムやウールといった布の物理特性が、アニメーション用、ドラフト用、リアル(写実的な仕上がり)用とプリセットで用意されており、まず動作の軽いアニメーション用やドラフト用のプリセットで作業を行なってから、後でリアル用に変更することが可能とのこと。
同様に、メッシュの細かさについても、後からハイレゾリューションに変更することができ、ユーザーが作業効率を考えながら、早いスピードで作業できる仕様になっている。
2011年11月17日に開催された「Marvelous Designer 2」セミナーの映像(Short Ver.)
現在は、ゲームや映像制作の現場で活用されているという Marvelous Designer。2D と 3D のシンクロで、実際の服作りに近い工程を、スピーディに 3DCG で再現できる同ソフトは、アーティストにとって、デザインの幅を広げてくれるツールになるのではないだろうか。
TEXT_山田桃子