>   >  東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の第7期生修了制作展「GEIDAI ANIMATION 07 YELL」で上杉忠弘氏がトークイベントを開催
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の第7期生修了制作展「GEIDAI ANIMATION 07 YELL」で上杉忠弘氏がトークイベントを開催

東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の第7期生修了制作展「GEIDAI ANIMATION 07 YELL」で上杉忠弘氏がトークイベントを開催

3月12日(土)から18日(金)まで、渋谷のユーロスペースにて東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の第7期生修了制作展「GEIDAI ANIMATION 07 YELL」が開催された。

▲GEIDAI ANIMATION 07 YELL PV

同専攻では例年、渋谷のユーロスペースに先駆け、横浜校地の馬車道校舎にて修了制作展を開催している。今回の馬車道校舎における会期は3月5日(土)から7日(月)。本稿では3月5日(土)に実施されたトークイベント「上杉忠弘×07 YELL 描かれるシーン」をレポートする。

▲東京藝術大学横浜校地・馬車道校舎入口

招かれた上杉忠弘氏は『孤独のグルメ』などで知られるマンガ家・谷口ジロー氏のアシスタントを経て独立。現在まで一貫してイラストレーターとして活躍している。アニメーションでは『コララインとボタンの魔女』のコンセプトアートを担当し、第37回アニー賞にて日本人初となる最優秀美術賞の受賞者となった。また同じくコンセプトアートとしては『ベイマックス』にも参加。

▲上杉忠弘氏

上杉氏は、これまで手がけてきたイラストを振り返りながら解説。「イラストレーターとして仕事を始めて、起動に乗ってから仕事が途切れたことがないんですよ。ドドッと来るわけじゃなくて、均等に来るんです。後ろに誰かマネージャーがいるんじゃないかって思うくらいで」と不思議がった。「自動車の仕事がまとまって来たりとか、それまでやったことがないのが来るとか、理由はわからないんですよ」。

それから「インターネットの普及が始まった当時、コンピューターを使える人たちがホームページをつくって自分の描いたイラストを発表し始めてました」と、自身がデジタルを導入した頃にも触れた。「それまでは原稿も出版社のアルバイトの人が取りに来て玄関で待ってるような感じですね。筆ペンみたいなのでラフに凄い量の修正を必要としてたんですが、パソコンだったら反転ができるとか、労力を減らすために導入したんです」。

また「だんだんマシンのスペックが上がってくると、これでそのまま絵が描けるんじゃないかと思うようになりまして、段階的に移行していった感じですね」と続けた。「当時は入稿するにも出版社が対応してなくて、それをプリントアウトして持って行ってました。プリンターもそんなにいいものじゃなくて、見開きとかになるとキツいですね。Photoshopでブラシのカスタマイズができるようになるまでは、拡大してピクセル単位でやってました」。

『コララインとボタンの魔女』のコンセプトアートを担当することになった経緯も「需要があるかどうか分からず好き勝手やってたものに、何か引っかかるところがあったんでしょうね。キッカケは海外にあるイラストレーターの掲示板みたいなのに僕のスレッドがあったことです」と述懐。それが最近の仕事にも反映されており、「空間や光の表現に飽きてきたので、次は何をやろうかなというところです」と思案している。

▲仕事を振り返る上杉氏(隣は聞き手を務めた修了生の駒﨑友海氏と小川育氏)

本当は人物を描きたいという上杉氏。「最近まで来てた仕事は建物ばっかりだったんです。人物を目立たせるために背景を描いてるんですけど、そこを否定されてるような気分になってきました」と笑う。「需要が日本ではなかったんですよね。空間があって光があるみたいなのが。たまたま海外のアニメーションで需要があって日本に逆輸入みたいな」。

上杉氏は最後に修了生に向けて「経済的なところと自分のやりたいことをどこでやりくりするかですね」とエールを贈った。「僕はイラストレーターとして中間地点を狙ってきたんですけど、広告物や印刷物のデザインで普通に背景を描いただけだとマンガの背景と変わらないので、そこをどう回避するか、イラストレーションとしてどう成立するかという糸口を探ってます。どこに需要という椅子が空いてるのかなと探す作業です。なので皆さんにも中間を狙ってほしいですね」。

▲前日4日の内覧会(中央は乾杯の音頭をとる山村浩二氏)

このほか横浜校地の馬車道校舎では、3月6日(日)にマンガ家の松本大洋氏を招いたトークイベント「松本大洋×07 YELL アニメーションへのまなざし」も実施された。一方、渋谷のユーロスペースでは各ゼミのトークが行われ、3月13日(日)と14日(月)に山村浩二氏と伊藤有壱氏、15日(火)と16日(水)に岡本美津子氏と布山タルト氏とゼミ生が登壇していた。

なお修了作品はバラエティに富んでいるものの、作風から修了生が長編映画やテレビシリーズなどを制作するスタジオに所属するイメージを持たない人も多いかもしれない。

作品情報はこちら

だが実際のところ2012年に第62回ベルリン国際映画祭の短編部門で『グレートラビット』が銀熊賞に輝いた和田淳氏など作家として活躍する修了生が目立つ一方で、東映アニメーション、任天堂、カプコン、WIT STUDIO、サンジゲンなどに所属する修了生もおり多彩だ。今後の活躍に期待したい。

ちなみに教授陣でも岡本氏は文化庁の若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご」における選定評価委員会で委員、文化庁のメディア芸術連携促進事業「アニメーションブートキャンプ」においてプロデューサーも務めている(また布山氏も後者でディレクターを務めている)。

PHOTO & TEXT_真狩祐志 / Yushi Makari



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