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実写とは違い、アニメーションは「白紙」からスタートして、その世界のすべてを創り出さなくてはなりません。しかし、架空世界を創りあげ、それを自分の想像力の赴くままに表現するだけでは、「人に伝える」アニメーション、鑑賞者が「感情移入できる」アニメーション作品にはなりません。

実写にはないアニメーションならではの強みを生かした作品をつくり、何かを伝えるには、アニメーションの「特徴」と「構成要素」を知り、それを生かす方法を学ぶことが大切です。

80を超える構成要素を抽出し、その原則と応用方法を解説した書籍「アニメーションでどう伝える? 知っておくべき原則とその破り方」より、一貫性があり、かつ視聴者に「見せる」ことを考慮した画作りの方法を解説したトピック「リアリスティック vs 様式化」を紹介します。

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リアリスティック vs 様式化

極度なリアリスティックから様式化まで、アニメーションの動きには幅がある。

■基本
アニメーションの動きのつけ方には、唯一の正解があるわけではありません。多種多様な方法があり、それぞれ独自の特徴があります。これらは、大まかに2つのカテゴリー、すなわちリアリスティックと様式化に分類できます。

古典の名作アニメーションは、リアリスティックな手法で制作され、動きは実世界での物事の仕組みに基づいています。したがって、重力などの物理法則が働いています。そして物は一定の体積をもち、人間や動物のキャラクターの体には筋肉、骨格、関節が備わっています。実世界と同様、物事の動きにはこれらすべてが影響します。

そのため、キャラクターの首を意味もなく360 度回したり、翼を持っていないキャラクターを突然飛ばしたりすることはできません。

それに対して、様式化されたアニメーションは創られた世界に身を置いているため、動きのルールは作り手にかかっています。様式化されたアニメーションでも制限は自然にできるものではなく、アニメーターが定義するものです。

ゴムや綿棒でできているキャラクターも可能で、それに応じたアニメーションをつけます。また、飛ぶことと翼の有無は関係ありません。

リアリスティックアニメーションの1 つの利点は、(大げさではなく)繊細な動きで、存在感のあるキャラクターになることです。一方、様式化されたアニメーションでは好きなだけ想像を羽ばたかせることができます。参照すべき実世界から離れることで、リアリズムで表現するにはデリケートすぎたり、奇妙な結果になってしまうような領域に足を踏み入れて、自由に探求することができます。

  • 作品例
  • リアリスティックアニメーションの例は「101 匹わんちゃん」、やや様式化された作品はワーナー・ブラザースの短編アニメーション、高度に様式化されたアニメーションは「ジェラルド・マクボイン・ボイン」(原題:Gerald McBoing Boing) をはじめとするUPAの短編作品です。

■応用
感情表現ができるかどうかは、アニメーションにおける重要な課題です。リアリスティックと様式化のどちらでいくにせよ、この問題に対処する必要がありますが、その方法は大きく異なります。

リアリスティックアニメーションでは、人間や動物が感情を表現する多様かつ繊細な動きを分析し、再現します。この過程では、筋肉はどこについているか、力がかかるとどうなるか、どのように動きが開始されるか、このすべてがどのように感情表現につながるかなど、筋肉の仕組みに関しての深い理解が必要になります。

それに対して、様式化されたアニメーションはよりカリカチュア化された感情表現に頼るところが大きく、コントロールを失うほどくるくると回転したり、喜びで文字通り爆発するキャラクターなど、比喩的な感情表現によって強化されています。様式化されたアニメーションでの感情表現は、どのように見えるかを描くのではなく、どのように感じるかを描きます。

  • 作品例
  • 「101 匹わんちゃん」の子犬誕生のシーケンスは、ほんのわずかにカートゥーン調が加味されているとはいえ、一貫した従来型の演技によって表現されています。悲しみ、恐れの入り混じった焦燥感から純粋な喜びまで、幅広いアクションや感情を見ること ができます。

    「おかしな赤頭巾」(原題:Red Hot Riding Hood)での赤ずきんに対するオオカミの極端なリアクションは、伝えたいことを伝えながら、どこまで現実的な感情表現から離れることができるかを示す例です。

※書籍「アニメーションでどう伝える?知っておくべき原則とその破り方!」より一部抜粋

■書籍情報

  • アニメーションでどう伝える?
    知っておくべき原則とその破り方!


    著者 エレン・ベセン(Ellen Besen)
    ISBN:978-4-86246-331-9
    価格:3,000円+税

■著者について
エレン・ベセン(Ellen Besen)は、35 年以上にわたってアニメーション業界にかかわり、輝かしい実績をあげています。シェリダン大学で教鞭をとり、CBC ラジオでアニメーションについて語ったり、アートギャラリー・オブ・オンタリオをはじめとする組織のために映画監督を務めたりしてきました。カナダ国立映画制作庁のために監督した映画では賞を受賞しています。

イラスト:シェリダン大学の卒業生であるブライス・ハレット(Bryce Hallett)のアニメーションは、「The Red Green Show」(CBC/PBS)や「History Bites」(History Television/Comedy Network)といったカナダや米国のテレビ番組、広告やミュージックビデオなどで目にすることができます。

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