9月6日(日)、京都コンピュータ学院 京都駅前校にて、世界のCGアニメクリエイターたちが5名のチームを組んで競うインディーズアニメによる団体戦「CGアニカップ」が、「CGアニカップ 2015 日本×台湾」として3年ぶりに開催された。本稿ではその模様をお伝えする。
<1>3年ぶりの開催となった「CGアニカップ」
「CGアニカップ」が始まったのは2008年のこと。関西国際空港で開催された「Japan Pop Culture Festival 2008」内での実施だった。日本の作品はPROJECT TEAM DoGAが1989年より開催してきた「CGアニメコンテスト」から選抜、初回は台湾、中国、韓国の4ヶ国が参加した。翌年からは京都コンピュータ学院に会場を移し、2011年までフランスのコンテスト「e-magiciens」と、2012年は台湾およびEUとの間で試合が行われた。
日本代表チームの作品一覧(つぶら氏の作品は『獅子舞 MV』から『鬼斬娘 再戦』に変更された)
3年ぶりとなった今回は、京都市と台南市(台湾)の「アニメによる文化交流事業」という位置づけで日本代表チームと台湾代表チームが対戦。日本からは『世界一不運な男の世界一の幸福』、『Camping DOG』、『鬼斬娘 再戦』、『なまずは海に還る』、『アオハルは突然に...』、台湾からは『the traveller』、『Zazel』、『What's going on with Annie』、『Armstrong』、『Swim Your Way』のそれぞれ5作品が参加し、雌雄を決した。
台湾代表チームの作品一覧
勝負は先鋒戦、次鋒戦、中堅戦、副将戦、大将戦の5試合。後攻チームは、先攻チームが上映した作品を見てから自チームの上映作品を決めることができる。各試合の勝敗は、審査員の挙手と観客の拍手の音量を測定する判定システム「拍手くん」の数値により決定。勝敗によって先攻後攻が入れ替わり、全試合中3勝を挙げたチームの勝利となる。
J1:日本代表チーム先鋒
【世界一不運な男の世界一の幸福】~Story of the happiest for the least fortunate man.~
T1:台湾代表チーム先鋒
The Traveler (旅人奇遇)
T2:台湾代表チーム次鋒
自主制作アニメ「砲弾少女ザゼル」Independent Animation "Zazel"
J2:日本代表チーム次鋒
CampingDOG
J3:日本代表チーム中堅
自主制作アニメ【鬼斬娘 再戦】
T3:台湾代表チーム中堅
【奈也安妮 What's going on with Annie】
T4:台湾代表チーム副将
ARMSTRONG - 阿姆斯壯
J4:日本代表チーム副将
『なまずは海に還る』
J5:日本代表チーム大将
アオハルは突然に... (Youth is Sudden...)
T5:台湾代表チーム大将
Swim Your Way
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[[SplitPage]]<2>形式を変えながらも継続するDoGAのCGアニメ振興策
勝負は拮抗したものの、最終的には日本3勝、台湾2勝で日本代表チームの勝利となった。
「CGアニカップ2015 日本×台湾」試合結果
DoGA代表の鎌田 優氏は「審査員のみなさんは意外と仲良く票が揃ってしまいまして、"拍手くん"の結果が反映されなかったのがちょっと残念です」と、締めの挨拶で切り出した。
主催者挨拶をするDoGA代表の鎌田 優氏
鎌田氏は続けて「国団体の対抗戦ということで、一見、国同士が競うように見えますけれども、私個人としましては、どの国のチームが勝とうと全然かまわないです」と、「CGアニカップ」開催の狙いを説明。「国同士が競うのではなくて、国際交流・文化交流という点を重視しています。つまり、2つの国の作品をご覧になって見比べてみて"どちらの作品の方が良いんだろうか"、"何がちがうんだろうか"という比較が重要なのだと思います。"拍手くん"という測定装置を介しまして、来場者のみなさん全員にそれを考えていただこうと思った次第です」。
「拍手くん」が初めて導入されたのは2004年。「CGアニメコンテスト」の第16回にて会場審査特別賞が新設された時だった。それ用に設定された賞金も上位3作品で分配されることから、なかなか出ないグランプリと同様に関心を集めるようになった。
「拍手くん」使用中の会場は万雷の拍手に包まれる
そうした経緯を背景として過去の事例に照らし合わせると、「拍手くん」の威力は今回なら大将戦で存分に発揮されるにちがいいなかった。
「大将戦を見ますと、どちらもギャグの作品でしたけども、笑いというのは国の文化によって異なるので、今日の審査結果に差が出てしまったんですね」と鎌田氏は分析。「台湾で同じ試合をやったら、最後の大将戦は台湾が勝ったんじゃないかと私は思っております」。
「CGアニカップ2015 日本×台湾」は、9月19日(土)と20日(日)に京都市勧業館(みやこめっせ)で開催された「京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)2015」のプレイベントとして開催された。
今後、11月23日(月)に、台南市の新営文化センターでも試合を行うことになっている。例によって選ばれる作品が試合運びを左右するため、結果の予想はつけられない。
一方で、今回は開催以来初めて「CGアニメコンテスト」の作品募集が見送られた。次回第27回の締め切りは来年7月31日(日)となっている。ちなみに過去2年「CGアニメコンテスト」の結果は「京まふ」の会場内で発表されていた。
「第26回CGアニメコンテスト@京まふ2014」。今回選抜されたうち『鬼斬娘 再戦』、『なまずは海に還る』、『アオハルは突然に...』は昨年の入選作品である
90年代の3DCGブームの一翼を担った「CGアニメコンテスト」。その歴史もまた、誰もが首肯するように、新海 誠氏の登場で一変した。2000年の第12回で新海氏の『彼女と彼女の猫』がグランプリを受賞して以降、先に触れたように、なかなかグランプリが出なくなったためだ。
その後にグランプリに輝いたのは、2005年の第17回で木霊(児玉徹郎)氏の『MY HOME』、2011年の第23回で椙本晃佑氏の『これくらいで歌う』の2作品のみである。
さらに新海氏が2002年にオリジナル作品の『ほしのこえ』で鮮烈な商用デビューを飾ったことから、それに続いた者として『イヴの時間』、『サカサマのパテマ』などの吉浦康裕氏、『陽なたのアオシグレ』の石田祐康氏らに目が向きがちだ。
最後に、そうしたながれとは別にTVシリーズの制作現場で活躍する過去の入選者たちについても併せて注目しておきたい。代表的なのがマッドハウスに所属し、昨年は『ノーゲーム・ノーライフ』、『ハナヤマタ』を手がけたいしづかあつこ氏がいる(第16回開催時に『CREMONA』が佳作に選出)。そのほかにも今年10月から放送が始まる作品では、『進撃!巨人中学校』の井端義秀氏が挙げられる(第17回開催時に『夏と空と僕らの未来』が映像賞を受賞)。
TEXT & PHOTO_真狩祐志
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「CGアニカップ 2015 日本×台湾」
日時:2015年9月6日(日)
場所:京都コンピュータ学院 京都駅前校本館 大ホール
主催等:DoGA、京都コンピュータ学院、KYOTO CMEX実行委員会
http://cganime.jp/EX/cup