2018年12月、仕事納めを目前に控えた年の瀬に、アニマの笹原晋也氏 、デジタル・フロンティア(以下、DF)の豊嶋勇作氏 、ポリゴン・ピクチュアズ(以下、PPI)の塩田周三氏に集まっていただき、過去5年のアレコレと今後の抱負を語り合う座談会(兼、忘年会)を実施した。本記事では、その模様を前後編に分けてお伝えする。

・後編はこちらでご覧いただけます。

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TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

想像以上のスピードで、遊技機の案件数が減少

CGWORLD(以下、C):皆様に集まっていただくのは、2013年11月の座談会以来となりますね。同じ時期に実施した新興プロダクション3社の経営者による座談会を今年(2018年)の9月に再度行なった(※1)ところ、笹原さんから「こちらの方も再取材してほしいです」というリクエストをいただき、豊嶋さんからは「飲みの席の方が面白い気がします」という提案をいただいたので、忘年会を兼ねた座談会を企画してみました。

※1 起業から約10年。CGプロダクション3社の経営者が、これまでと、これからの道のりを語る
前編)(後編

手始めに、前回の座談会から今日までの5年間で各社にどんな変化があったのか伺っていきたいと思います。以前は多くのCGプロダクションが遊技機(パチンコ・パチスロ)案件を事業の柱のひとつに据えていましたが、この5年間で状況が大きく変わったと聞いています。新興プロダクションによる座談会ではその点が話題になりましたが、皆さんの会社はどの程度の影響を受けましたか?

笹原晋也氏(以下、笹原):以前は案件の7〜8割を遊技機が占めていましたが、今は1〜2割ですから、だいぶ減りましたね。


C:まさに激減ですね。DFさんの場合は如何ですか?

豊嶋勇作氏 (以下、豊嶋):減りました。うちが得意とするちょっとリアルなフルCGは遊技機との親和性が高いようで、2010年にフィールズの傘下に入ったという背景があります。親会社に加え、ほかの遊技機メーカーさんの案件も入れれば最大で6割を超えたこともありましたが、もともと遊技機案件の比率を極端に高めずバランスを見ながら受注していたので、減ることに抵抗感はなかったです。

それから『Infini-T Force』というTVアニメシリーズで大幅な赤字が出て、えらいことになったのが過去5年間にあった大きなトピックです。TVシリーズと遊技機の両方をつくって、アセットをシェアしてどちらもリッチにする予定だったのに、遊技人口の減少にともなう遊技機市場の不況のあおりを受けて、遊技機の計画だけがいったん白紙になったものだから、創立以来の初赤字で会社が本気で倒れそうになりました(苦笑)。

  • 豊嶋勇作
    デジタル・フロンティア
    (専務取締役)

    デジタル・フロンティアの設立は1993年で、株式会社となったのは2000年。2010年にフィールズのグループ会社となる。現在の従業員数は約260名。東京(渋谷)の本社に加え、大阪事務所、台湾台北市に関連会社のDIGITAL FRONTIER(TAIWAN)INCがある。近年同社が携わった案件は『映画「未来のミライ」』、『映画「いぬやしき」』など。
    www.dfx.co.jp/


塩田周三氏(以下、塩田):すごいな。あれは全何話でした?


豊嶋:全12話。すごかったです。TVシリーズだったのにもかかわらず、遊技機不況の巻き添えで大赤字が出て、会社が倒れそうになったっていうのが過去5年間で1番でかいトピック。

C:まさに遊技機不況のあおりを受けまくったわけですね。それ、記事に書いちゃっていいですか?

豊嶋:おもいっきり受けました。書いていいんじゃないかな。もう時効な気がします。

笹原:時効(苦笑)。うちも3年くらい前にそういう赤字が出ました。ちょうど決算のタイミングと重なってしまったので、全部そこに出しちゃえみたいな感じでした。うちは本当に遊技機への依存度が高かったので、事業内容を転換するのが大変でした。

塩田:きついな......。実際、遊技機はあほみたいに減りましたね。何年か前に「2020年には遊技機案件ゼロでも耐え得る体制にしよう」っていう中期事業計画をつくったんですが、2019年には実現しないとあかんくらいの勢いで減ってます。想像以上のスピードでなくなってきましたね。

豊嶋:塩田さんところの遊技機の比率はどのくらいだったんですか?

塩田:だいたい3割、多くても4割くらいに留めようという戦略でやってきました。遊技機の場合、クライアントさんの要求は高いけど、その分ギャラが高額じゃないですか。だから遊技機で野心的なことや研究開発的なことをやって、その成果をほかの案件にも展開するっていうのがパターンだったけど、それができなくなってきたのがつらい。来る来ると思ってたけど、想像以上のスピードで来おったって感じですかね。

笹原:確かに速かったですね。

豊嶋:うちも遊技機関連のロイヤルティーが入ってこなくなったのは痛いですね。リリース後に入るプラスアルファのお金だったので、デジタルヒューマンの技術開発やら、ツール開発やら、いろんなことに投資できたんですよ。出だしから、いい話が全然できてない(笑)。

C:とはいえ、遊技機不況はほとんどのCGプロダクションが通ってきた道でしょうから、この5年間をふり返るならそういう話になるのは必然だと思います。

塩田:僕らはそこまで依存度が高くなかったけど、やっぱりつらいですから、各社どないしてるんやろと常々思ってました。

豊嶋:CGプロダクションがつぶれたって話、そんなに聞かないですよね。もっと吸収合併とかバシバシ起こるのかと思ってましたが。

笹原:そうですね。意外につぶれなかったですね。むしろ、小さい会社が増えた気がします。

塩田:何でつぶれへんかったんかな?

笹原:うちの場合、何となく先々の状況は予想できていたので、その対策はとってきましたね。後は動画配信系の仕事が入ってくるようになったので、遊技機からの転換が図れました。

C:最近ですと、アニメ『モンスターストライク』の新シリーズとか?

笹原:そうですね。そのあたりのおかげで、うまくやれてます。

豊嶋:でも、各社さんの話を聞いてると配信は配信で大変そうですよね。発注側は映像のプロじゃないから、勝手がちがうみたいじゃないですか。

笹原:その点はもう慣れたので、うちなりの対策をいろいろと練り、先方にも理解していただき、だいぶ楽になりました。慣れてないと、なかなか難しいみたいです。後は、リアルタイム用のゲームアセット制作をやっている会社もあると思います。

塩田:でも、遊技機と比べたら利幅がちがいません?

笹原:遊技機ほどではないですが、普通に経営が成り立つ程度にはもらえるんじゃないでしょうか(笑)。

C:玉ねぎの丸焼きと、フィッシュ&チップスです。皆さん、追加のビールはヒューガルデン・ホワイトでいいですか?

塩田:僕は別のにしときます。

C:では、ここらで乾杯の写真を撮らせてください。目線はカメラで。今年1年、ありがとうございました。2019年の3社の新作にも期待しています。

C:すごいレアな写真ですね(笑)。

Mayaか、3ds Maxか、はたまたBlenderか??

笹原:うちはずっと3ds Maxを使ってきたんですが、2017年の末頃から徐々にMayaへ移行しました。メインツールの変更は、過去5年間の中での大きなトピックですね。3ds Maxは今も使っていますが、最近の大きな仕事はMayaでやっています。

豊嶋:ライセンス使用料を二重に払うの、つらくないですか?

笹原:もともと両方を使える契約にしていて、Mayaを使うこともあったんですよ。1年くらい前から本格的にMayaを使い始めて、結構大変でしたけど、なんとか1年乗り切れて、ようやく軌道に乗ってきたところです。

豊嶋:なんでMayaにしようと思ったんですか?

笹原:長尺やシリーズものを3ds Maxでつくるのは、なかなか大変だったんです。後は、3ds Maxのユーザーで技術的に長けている人が少なかったという点も大きいですね。

豊嶋:オートデスクにしろ、アドビにしろ、とにかくライセンス使用料がかかるから、もうBlenderにしようかなくらいの気分ですね(笑)。CGを始めたころは、シリコングラフィックスとか、ハードのために仕事して、今は延々とソフトのために仕事してる。

塩田:ほんとにね(笑)。

笹原:Blenderでほんとに大丈夫なんですか(笑)。新卒にしろ、経験者にしろ、Mayaを使う方が人を集めやすい印象はありますね。相談できる人がすごく増えた点はよかったなと思います。

デジタルヒューマンのDFとアニメのPPI、その路線はいつから見据えていたのか?

C:DFさんはアニメ、ゲーム、VFXなど幅広いジャンルのCGを手がけていますが、2018年は『座頭市0』や『いぬやしき』で使用したデジタルヒューマン関連の技術開発(※2)が印象的でしたね。今後もこの分野で先陣を切っていこうという戦略があるのでしょうか?

※2 『いぬやしき』におけるデジタルヒューマンの詳細は下記記事参照。
真の意味で生身の役者と共存できるデジタルヒューマンを創り出す~映画『いぬやしき』が目指した新時代のVFX
有機的な生物描写と無機質なメカ表現・ふたつのフォトリアルの追求~映画『いぬやしき』が目指した新時代のVFX(2)

豊嶋:戦略というか、コンプレックスに近いものが根底にあるのかもしれないです。たしか『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)が公開された頃だったと思うんですが、日本のある撮影監督さんに「日本のCGはヘボイ」と、「『ベンジャミン・バトン』みたいなことはできないんですか?」って言われたんですよ。

C:ハリウッド映画と日本映画とでは、予算がちがいますからね......。

豊嶋:そのときは「いやいや、できませんよ」って答えたものの、それがずっと引っかかってて。「お金ができたらやろう」って思ってたんです。『いぬやしき』がつくれて、よかったよかったって思いはありますけど、特に何か大きなねらいがあったわけではなく、ほんと、そのコンプレックスだけです。腹が立ったっていうだけ。

C:10年前の『ベンジャミン・バトン』が発端だったとは......。デジタルヒューマンという路線は、VFXをやらないPPIさんとは対照的ですね。

豊嶋:塩田さんところがVFXをやったのって『彼岸島』(2010)が最後じゃないですか?

塩田:あれが最後ですね。えらい大変な案件だった。僕らは設立30周年記念作品として2014年にTVシリーズの『シドニアの騎士』をやり、そこから『山賊の娘ローニャ』(2014~2015)、『亜人』(2015~2016)、『BLAME!』(2017)、『GODZILLA』(2017〜2018)と続けてきたから、この5年間はほんまにアニメ尽くしでした。

豊嶋:そのながれは、意図してたんですか?

塩田:たまたまです。『トロン:ライジング』(2012)で本格的にトゥーンレンダリングをやった頃、たまたま数年前に入社した守屋秀樹(プロデューサー/現、取締役副社長)が「このやり方で、日本のアニメもつくれるんじゃない?」と言い出して、たまたま知り合いがいた講談社さんへピッチに行ったんです。いろんな漫画が候補に上がった中で『シドニアの騎士』が選ばれたというながれ。その1〜2年前に瀬下寛之(監督)が入社してて、さらに片塰満則(造形監督/光画監督)と田中直哉(プロダクションデザイナー)の2人がスタジオジブリから移籍してくれていたから、たまたまプリプロの力が備わっていた。たまたま、たまたま、がつながって「できるんだったら、やったらええんちゃう?」っていう感じで始めたわけです。

ちょうど『トランスフォーマー プライム』(2010〜2013)、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』(2011〜2013)、『トロン:ライジング』(2012)と続けてきたアメリカの少年向けアニメの案件が、市場ごとスコーンとなくなったタイミングだったから、『シドニアの騎士』がそれなりに受けてくれたのはほんとによかった。近いタイミングでサンジゲンさんが『蒼き鋼のアルペジオ』(2013)をつくり、グラフィニカさんが『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014)をつくったので、奇跡的にアニメCGブームに符合したのも運がよかった。

豊嶋:それこそ、すごいねらって転がしてきたのかなと思ってました。

塩田:いやいやいや、ポリゴン(PPI)は、ほんとにもう、ときのながれに身を任せ......。

豊嶋:歌、1曲歌えちゃうみたいな。

塩田:ほんとに。たまたま、その時期にいる人たちが何らかドライブして、何かが変わっていくのが常なんで。

豊嶋:『スター・ウォーズ』の案件も、またやり始めてますよね。

塩田:『スター・ウォーズ レジスタンス』ですね。海外案件も変わらず続けてはいます。もうひとつ、僕らがアニメをつくり始めたタイミングで、Netflixが日本のアニメを扱うようになったのも運がよかった。たまたま僕らは先兵としてNetflixとのつながりをつくれたので、それなりの制作費を確保できたし、ストリーミングの収入も得られたんですよ。とはいえ、ぼろもうけはできないから、次につながるしかけをつくれないと難しいですね。

笹原:確かに、Netflixの存在は大きいですね。うちもセル調の作品でご相談をいただいてます。

C:PPIさんは、当面は今のアニメ路線を続けていくのでしょうか?

塩田:もともとCGはシミュレーションツールとしてスタートして、現実の再現を目指してきましたが、あえてアーティストが恣意(しい)的に描くものと描かないものを選別し、それをアルゴリズムで整理していく表現の方が、僕らは面白いと思ってます。もともと日本人は写実的ではない表現、ノンフォトリアルな表現の方を得意としていて、そういう文化を育んできた背景もある。だから当面は今の路線を続けるつもりです。

一方で、僕らのつくるものが「アニメ」だと定義されてまうと、従来のアニメのプライスレンジに抑えられてまう。アニメだとブランディングされることに得はないし、価格競争に巻き込まれたくはないので、僕らの場所をちゃんとつくらないといけないと思ってます。

豊嶋:アニメは描く人がどんどん減っているから、セルルックのCGがアニメの座を譲り受けていくのかなと思っていましたが、確かに同じ価格帯でつくりたくはないですね。アメリカのCGプロダクションは、ピクサーの『トイ・ストーリー』みたいなルックがCGでつくるアニメなんだという答えをだしたじゃないですか。

日本の場合は、映画の『バイオハザード』みたいな、ちょっとリアルなCGも、セルルックのCGも「CGアニメです」と言ってて、やろうと思えばどうとでも表現できるから、どこに着地させようかなっていうのは悩みますね。何というか、すごく居場所のない感じがします。いろいろ化けれちゃうから、はっきりしないよなあと......。

笹原:CGプロダクションとして、自分たちの居場所をつくりたいとは思いますね。

豊嶋:でも一般の視聴者から見ると、今のセルっぽいCGは、作画のアニメと同じに見えるでしょうね。

笹原:そうですね。だから、もう少しその辺を変えていけるといいなと、ニーズを確認して、少しずつ表現のやり方を変えながらつくってます。

マレーシア、台湾、大連。海外に拠点を置くメリットと課題

C:過去5年間で、会社の規模に変化はありましたか?

塩田:東京の本社だけで言うと以前より減っていて、一番多かったときは320~330人ほどいましたが、今は260〜270人くらいだと思います。2013年に立ち上げたマレーシアの合弁会社(Silver Ant PPI Sdn. Bhd.)の方は80人くらいになってますから、ポリゴングループ全体での人数はそんなに変わってません。

C:国内外の構成比は、意図的に調整しているのでしょうか?

塩田:国内だけで長いシリーズものをつくるのはコスト的に厳しいから、マレーシアに、インド、タイ、台湾を加えた4ヶ所で協業するパートナーシップを育てています。

C:国内でプリプロをやり、シリーズものの量産は海外でやるという分担ですか?

塩田:そんな感じです。プリプロと最初の何話かを国内でやって「型」をつくる。それができたら、ワークフローごと海外に出していく。そうすれば国内の人数をある程度減らしても、売り上げ規模は維持できる。一方で、『GODZILLA』みたいなフラッグシップになるものは国内で全部やったりもします。

豊嶋:『GODZILLA』は国内ですか。さらに国内の規模を小さくしたいですか? そういうわけでもない?

塩田:多分、いまの規模でキープだと思います。この規模から増やすっていうのは、東京の拠点ではそんなに考えてません。システムのクラウド化みたいなものがもっと進んでくれば、国内の地方での展開は考えてもいいかもしれない。僕らはガッチリとパイプラインやシステムを組んでいるから、アジャイルに地方拠点をつくるってことはできないんですけどね。

C:DFさんの規模は如何ですか?

豊嶋:うちも東京の本社は30人くらい減ったかな。グループ全体で350人くらいだったのが、今は300人をちょっとオーバーする程度になってると思います。海外は台湾とマレーシアの2ヶ所で展開してましたが、マレーシアの方はシンプルに言うとうまくいかなかったんです。じゃあ台湾はうまくいってるのかって言われたら、うーんって感じですけど。

笹原:台湾のDIGITAL FRONTIER(TAIWAN)INCには、この前お邪魔しました。なかなか人が定着しないみたいですね。

豊嶋:そう。台湾にしろ、マレーシアにしろ、確かに人件費は東京より安いんですけど、あんまりうまくはいかないです。人の異動スピードが半端なくて、すぐ辞めちゃう。

C:入社して、力を付けてきたなと思ったら、他社に引き抜かれたりとか?

豊嶋:それだったら、少しは雇った意味があるんですけどね。「まだ力付いてないよ」っていう段階から、どんどんいなくなっちゃう。「転職して、ステップアップしていくのが格好いい」みたいな価値観があるんじゃないですかね。CGとは全然ちがう業界にも、ぽんぽん転職しちゃいます。辞めて実家を継ぐ人たちも結構な割合でいますし。

C:アニマさんの大連(アニマフォレイス大連)は如何ですか?

笹原:やっぱり人がころころ辞めちゃいます。もう少し何とかしたいんですけど、難しいですね。中国は中国で、自国の仕事を取ってきて、それをやってもらうという方針になってます。

C:PPIさんのマレーシア(Silver Ant PPI Sdn. Bhd.)でも、離職問題はありますか?

塩田:それなりにターンオーバー(離職)はありますけれど、コアメンバーは定着して、育ってくれています。うちの副社長(安宅洋一氏)がほぼ常駐して、相当力を入れてますから。『スター・ウォーズ レジスタンス』は、ほとんどマレーシアでつくっています。

豊嶋:マレーシアの会社は、Silver Antとの合弁ですよね。出資比率は?

塩田:Silver Antが4割、僕らが6割。最初の立ち上げのところでSilver Antの力を借りて、今はほぼ全部がポリゴンのプロジェクトで回ってるような感じです。

笹原:現地の会社と組むのは、よさそうな気がしますね。

塩田:何の土地勘もない僕らだけでできるとは全然思ってなかったので、現地のパートナーと組むことは最初から考えていました。でも、事業計画上は150人くらいになってるはずだったのに、80人までもっていくのが精一杯で、なかなか人が集まらない。しかも結構インドから来てもらったりもして......。

笹原:インドで雇って、勤務地はマレーシアということですか?

塩田:「インドでやればええやん」みたいな話ではあるんですけど、やっとこさスタジオとしての機能ができてきたから、当面はマレーシアで続けていきたいですね。

C:アニマさんの規模は、過去5年間でどう変化しましたか? 先ほど大連については伺いましたが、国内は如何ですか?

笹原:東京本社は少し増えて、130人くらいになりました。4月には中途と新卒を合わせて140人になります。以前と比べると、最近は外国人も含めて中途入社が多くなってきました。金沢スタジオは7人です。金沢はもともと子会社としてやっていたんですけど、コアスタッフの1人が辞めたのに加え、管理を一元化した方がいいなとも思ったので、今は金沢スタジオとして東京の仕事を手伝ってもらっています。別会社だと会社間の隔たりができてしまうんですが、最近はだいぶなくなってきたので、やってよかったなと思います。

豊嶋:笹原さんのご実家が金沢にあったんでしたっけ?

笹原:そうです。石川県内に実家があって、金沢のわりと近くです。最初はそういう地縁から始まった会社です。

塩田:コスト的に、7人でもやる価値があるんですか?

笹原:モデラーが2人と、アニメーターが5人いて、この2~3年はわりと優秀な人たちが残ってくれているんです。このまま辞めなければ、多分優秀なスタッフに育つだろうし、さらに新しい人たちが入ってくればいいチームになるんじゃないかなと思ってます。

豊嶋:その人たちは、金沢にいたいからいるわけですよね?

笹原:基本的にはそうですね。半分くらいは地元の人です。石川県外の人も採用してきましたが、結局地元に帰っちゃう場合が多いので、なるべく地元の人を採るようにしています。その方が辞めないので。

豊嶋:うちも大阪事務所がありますが、まったく増えないですね。多いときは15人ほどいましたが、今は7人くらいです。保守的な土地柄みたいで、入った人の反応とかを聞いて、行くかどうか様子見しているみたいです。そう簡単に動いて来ないですね。

塩田:大阪の人たちは、東京の仕事を手伝っているんですか?

豊嶋:それもありますが、ほかのゲーム会社さんへ出向する仕事も多いですね。大阪はゲーム会社が多いから、そっちの方が重宝されて、プライオリティーが高くなっちゃうんです。

C:では続いて、各社の最近の採用方針をお聞かせいただけますか?

前編は以上です。後編では各社の採用方針や、3人の今後の抱負などを語っていただきます。ぜひお付き合いください。

・後編はこちらでご覧いただけます。