>   >  アニマ、DF、PPI。CGプロダクション3社の取締役が、過去5年のアレコレと今後の抱負を語る(後編)
アニマ、DF、PPI。CGプロダクション3社の取締役が、過去5年のアレコレと今後の抱負を語る(後編)

アニマ、DF、PPI。CGプロダクション3社の取締役が、過去5年のアレコレと今後の抱負を語る(後編)

2018年12月、仕事納めを目前に控えた年の瀬に、アニマの笹原晋也氏 、デジタル・フロンティア(以下、DF)の豊嶋勇作氏 、ポリゴン・ピクチュアズ(以下、PPI)の塩田周三氏に集まっていただき、過去5年のアレコレと今後の抱負を語り合う座談会(兼、忘年会)を実施した。本記事では、その模様を前後編に分けてお伝えする。

・前編はこちらでご覧いただけます。

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TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

人は、来てはくれるけど、出てもいく

CGWORLD(以下、C):5年前の座談会では、アニマさんとDFさんは新卒採用が主流で、経験者は採ろうと思ってもなかなか採れないと語っていましたね。PPIさんは、新卒と経験者を区別せず、プロジェクト単位の業務委託契約から始めるというお話でした。

塩田周三氏(以下、塩田):僕ら、2年くらい前から新卒採用も始めたんですよ。毎年2〜3人。

豊嶋勇作氏 (以下、豊嶋):少ないですね。職種は?

塩田:今のところ、みんな制作管理です。最初はプロダクションコーディネーターからのスタート。

豊嶋:モデラーやアニメーターではなく?

塩田:つくり手は今も業務委託契約で入ってもらい、3年経って相性がよかったら契約社員になり、その後社員になるというながれです。

C:どうして制作管理だけ採用方針を変えたのでしょうか?

塩田:アニメ会社をはじめ、他社で制作管理を経験してきた人たちも採用してますが、僕らのような制作管理をしてきた人はおらず、根本的な管理概念がちょっとちがうんですよ。だったら新卒の優秀な人に僕らの制作管理のやり方をクリーンインストールした方がよかろうと思ったんです。

C:以前PPIさんの制作管理について取材したとき(※1)「プリプロダクション段階でしっかり作業量を見積もり、プロジェクトが終わったらSHOTGUNに蓄積されたデータを分析し、さらに見積もりの精度を上げていく」と語っていたのが印象的でした。リスクマネジメントを徹底なさっていますよね。

※1 の詳細は下記記事参照。
ポリゴン・ピクチュアズのプロジェクトを支える、制作管理の仕事に迫る

塩田:SHOTGUNとERPのシステムをつなげたりして投資してますから、それをちゃんと使い倒してくれる人でないと割が合いません。今後は技術職やプリプロ系の人たちの採用でも、新卒を採っていくかもしれません。

C:プリプロ系というのは、例えばコンセプトアートとか?

塩田:そうです。それこそ5年前と比べると、プリプロ的な段階からスタートする仕事がめちゃくちゃ増えたので、その辺の対応力をもう少し強化せんとあかんのです。

C:確か『シドニアの騎士』以降のPPI作品の多くでキャラクターデザインをなさっている森山佑樹さんは、ほぼ新卒からの採用でしたよね。森山さんみたいな強力な若手の採用を、今後もねらっていくと......。

塩田:はい。彼の場合は新卒でいきなりキャラクターデザインをやり、『GODZILLA』でもCGキャラクターデザインをやってます。

笹原晋也氏(以下、笹原):すごいですね。うちでも4月に入った新卒が早速『モンスターストライク』でいい仕事をしてはいますが、さすがにキャラクターデザインをやれる人はいません。

豊嶋:アニマさんの場合、最近合流した人が表舞台に立つケースが多いですよね。例えば、田中 剛さん(アニメーション・スーパーバイザー)とか、菊地 蓮さん(CGスーパーバイザー兼VFXスーパーバイザー)とか(※2)。

※2 の詳細は下記記事参照。田中氏と菊地氏を含むアニマのスタッフが同社での仕事を紹介している。
クオリティも効率もあきらめない。注目の『モンスターストライク』新シリーズを手がけるアニマ中核スタッフに聞く、次世代アニメーション制作の肝とは?

笹原:そうですね。2人とも2017年入社ですが、すごく頼りになります。

豊嶋:ああいうのって、前からいる人たちはどういう反応をしてるんですか?

笹原:友好的に迎えてますよ。うまくいかない場合もあるので最初は心配しましたけど、2人も既存スタッフも問題なくコミュニケーションがとれていたので、わりと最初からはまっていた感じがします。彼らが入ってくれたことで、Mayaに加え、エフェクトにHoudini、コンポジットにNUKEを使ったパイプラインを構築できたのは大きいですね。うちはもともとエフェクトが弱かったんですが、菊地が入ったことでエフェクトチームを強化できました。

豊嶋:うちは経験者も新卒もウエルカムですけど、正直採れないですね。なかなか来てくれない。そんなことないですか?

塩田:来てはくれるけど、出てもいく。最近は結構ポリゴン(PPI)ラブだった、頼りになる中堅どころが出ていく現象が目立ちます。

C:ラブだったのに出てしまうのはなぜですか?

塩田:会社にはヒエラルキーがあるから、会社全体が抜群に成長していないと、上が詰まって中堅どころは今以上に上へ行けない。だから「ポリゴンは好きやし、仕事はやりやすいけど、私はこの先どうなるんやろ」って悩む人たちがでてきはじめたんです。より小さい会社で、それこそ10年前の僕らくらいの会社で「腕を試したい」って考えた人たちが移りはじめている。

豊嶋:働き盛りの、頼りにしたい中堅どころがバシッと抜けちゃうと。

塩田:そう。それは僕のせいやと、すごく思うんですよ。会社が抜群に成長していないと、彼らが上に行くすべをつくってあげられない。中堅どころとして頼りにし過ぎてたから、「貴方はてっぺんですよ」と言ってくれる小さい会社に異動しはじめてるんです。

豊嶋:てっぺんで腕試ししたいというのは、わからなくもないです。うちもわりと中堅どころがいなくなっちゃいましたが、ソーシャル系とか、大きいゲーム会社さんとかに結構な高給を提示され、出て行ってしまうパターンが多いです。何千万もかけて、延々デジタルヒューマンの技術開発をやってもらっていた社員にも行かれちゃいました。勘弁してほしい。

笹原:うちでも、たまに要(かなめ)の人がソーシャル系やゲーム会社さんに行っちゃいますね。

塩田:うちは最近は大手のアニメ会社さんに行くケースが多いです。しかも制作管理。PM(プロダクション・マネージャー)手前の、これからって人が行ってしまう......。

豊嶋:うちも管理系、3人行っちゃいましたね。最近はアニメ会社でも労働時間をすごい厳しく制限するから、制作管理が重要になってくるんでしょうね。

塩田:労働時間を気にする会社は増えましたね。ただ、ワークフローとか、仕事のやり方とかをちゃんと設計してからやらないと、えらいことになるんですけどね。実際、えらいことになってるって話を聞きますね。

豊嶋:あるいはクオリティーを犠牲にするって選択肢になりますね。

塩田:それ以外だと、めちゃくちゃ優秀だった中堅が、独立して会社つくる事例もそれなりにありますね。結果的には一緒に仕事してるから、全然いいと思うし、ありがたいくらいですが。

豊嶋:確かに小さめの会社は増えていて、海外から帰ってきて起業するパターンも多い。大きいプロダクションに入るより、自分たちでイチからやって、日本のCG業界を変えて、すごいことをするっていうのでも全然いいんですが、「一体、いつになるの?」とは思いますね。

塩田:そこまで言うてます? 僕、全然気にしないから、何言うてるか知らないですけど。

豊嶋:そこまで言えてないから、もやっとしてる。モデリングとかアニメーションとかの受注利益だけだと、たいしてもうからないですからね。

笹原:急に利益が増えたり、規模感が大きくなるわけじゃないから、10年くらいの単位で積み上げないと話が進まないだろうとは思いますね。

豊嶋:分散して時間を巻き戻すよりも、うちなり、塩田さんや笹原さんのところなりで「役員としてやりたいです」って言えばいい話なんじゃないかとは思います。

どうすれば、人が定着するのか?

C:逆に、会社に残ってくれるのは、どんな人たちですか?

豊嶋:転職とか、そういうのは面倒くさい、ほかを見たいとも思わない、良くも悪くも会社になじんじゃってる人。あるいは、時間がかかってでも、周囲を変えてでも、やりたいことがある人。そのどちらかじゃないですかね。

塩田:志が高く、会社のビジョンと同期している人は、辞めない。一方、僕は退職する人とは必ず面談をするようにしてて、本人なりの志がちゃんと備わっていれば、快く送り出すんですよ。それで何人か、帰ってきてくれた人もいるので。

C:来て、出て、帰ってくる?

塩田:それはそれで、ありやと思います。個人のキャリアの形成と、法人の成長がむっちゃ長期間同期するのはすごい奇跡やと、同期しなくなってもしゃあないとは思います。ただ一旦外に出た人が、力をつけて帰ってこれるホームは残しておきたい。また、僕ら、残念ながら今のところ大手のソーシャル系や、ゲーム会社さん、アニメ会社さんらを給料で凌駕(りょうが)するのは難しいので、どないしたら人が定着するか、ポリゴンならではのバリューは何かってことを、ここ1年くらいは、めちゃくちゃお金も時間も使って、ディスカッションして、フィードバックしています。教育やトレーニングにも、結構な力を入れている。

今までやったら、阿吽(あうん)の呼吸で、何となく「ポリゴン人たるものは」みたいなことが共有できてたんですけど、会社がある程度まで成長すると、いろんなことが見えにくくなる。だから、僕らは何を大切にして、どう成長していくのかってことをディスカッションして、言語化するワークショップなんかをやるようになりました。

C:会社が成長して、200人、300人規模になってくると、ご自分たちのミッションをちゃんと言語化していかないと、大事な人が出て行ってしまうってことでしょうか?

塩田:めっちゃ耳が痛い。ずばり言語化されて、今言われた感じ。その通りです(苦笑)。

豊嶋:ほんと、その通りです(苦笑)。

笹原:(苦笑)。

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