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初めての人でも怖くない! Marvelous Designer基礎知識&ワークフロー

初めての人でも怖くない! Marvelous Designer基礎知識&ワークフロー

リアルなCG衣服制作において、すでに市民権を得た感のあるMarvelous Designer。ここではまだ二の足を踏んでいる人の敷居を下げるべく、一般的なワークフローに沿ったその基本的な使い方について、昨年専門書を上梓した藤堂++氏に解説してもらった。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 248(2019年4月号)からの転載となります。

TEXT_藤堂++
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

藤堂++
BOOTH、Kindle本で販売中の「Marvelous Designer CG 衣装制作講座」の著者。Blenderをメインツールに、Marvelous Designer、SubstanceZBrushなどを用いて制作活動中。その他の著書に「Blenderマスターブック」、「BlenderユーザーのためのSubstance Painter」などがある。ホームページにてBlenderの入門講座、Tips、アドオン情報を公開中。
@CGradToudou
www.cgradproject.com

衣装制作のベスト解
Marvelous Designerとは

Marvelous Designerを使うと、キャラクターに着せる衣装や布を張った家具など布に関連したものを効率的に制作できます。実際に、世界的に有名な『アサシン クリード』【画像】や『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』、映画『ホビット』シリーズなどのメジャータイトルにも採用されており、Marvelous Designerの公式サイト(www.marvelousdesigner.com/cases)に活用事例とその制作者の声が掲載されていますが、そのどれをとってもMarvelous Designerの作業効率の良さ、ハイクオリティな衣装の制作が可能なことを挙げています。

©Assasin's Creed by Digic Pictures

Marvelous Designerを用いた衣装の制作は、いわゆる型紙(以下、パターン)を起こして衣装を制作していく手法を採っています。このように書くと、一般的な3DCGソフトにもクロスシミュレーション機能があり、Marvelous Designerで行なっているような、パターンとなる平面オブジェクトを作成して、それを糸となるエッジで繋げてからクロスシミュレーションすれば衣装ができるので高い出費をしてまで使う必要はないのでは? と思う方もいるかと思います。しかし、Marvelous Designerではこのような"単純な"機能だけではなく、衣装制作過程で効率良く作業できるツール群を使ってシミュレーションを実行しながら衣装を段階的に制作していけるので、より複雑でリアルに、そしてキャラクターの体型に合った衣装を制作することが可能なのです。また、クロスシミュレーションを用いてキャラクターの動きに合わせて衣装をリアルに動かすこともでき、その際のアバターと衣装、衣装と衣装の干渉し合った動きも再現できます。もちろん、制作した衣装と衣装の動きのデータをエクスポートして他のCGソフトで活用することも可能です。

既存のワークフローの中でMarvelous Designerを導入する場合、【画像】のようなフローになるかと思います(アニメーション用途の場合)。次のページでは図の黄色のBoxの工程に沿って、Marvelous Designerでは衣装制作をどのように行なっていくのかの一例を紹介します。

WORKFLOW:衣装の制作フロー

Marvelous Designerを用いた実際の制作工程に沿ったかたちで紹介します。

上着の制作

STEP 01 アバターの準備

最初にしなければならないことは、衣装を着せるキャラクター(アバター)を用意することです。Marvelous Designerに付属のライブラリにはアバターが何体か用意されているので、それを使うことができます。他のソフトで制作したキャラクターをインポートして、その体型に合った衣装を制作することもできます。インポートできる形式は、OBJ、FBX、Alembic、Colladaです。インポートすると図のように表示されます。左側に3D衣装ウインドウがあり、ここではアバターにパターンを配置、シミュレーションを行うのに使います。右側には2Dパターンウインドウがあり、これはパターンの制作に使います。

STEP 02 アバターの採寸

Marvelous Designerで衣装を制作する場合、現実の衣装のように着心地や着やすさを考える必要はないのですが、体に合った衣装を制作するには、ある程度アバターの体形の特徴を採寸しておいた方が制作を効率良く進めることができます。ライブラリにある標準装備のアバターにはすでに採寸結果が保持されています。自作のアバターの場合は、メジャーツール【左】を使って採寸を行います。採寸は標準アバターがもっている採寸データのように細かく計測しなくても、丈・バスト・ウェスト・ヒップなど代表的な特徴のある部分を測るだけでもかまいません【右】。

STEP 03 パターンの作成と縫い合わせ

Marvelous Designerではシミュレーションとパターン制作を交互にくり返して衣装を制作していきます。そのための機能が各種備わっており、重ね着の衣装を制作することもできます。重ね着の場合は、基本的にはインナーウェアからアウターウェアまでを内から外へと順を追って制作します。

2Dパターンウインドウでパターンを制作するにはこれら【左】のツールを使い、パターンの基本形をつくります【右】

パターンは現実の洋裁の手法のように、最初は体の周りを4分割したパターンを用意します(前後かつ左右に半分の4分割)。そのため、今後の作業の基本的なながれは、アバターの前面の片側のパターンを作成したら、左右反転コピーで体の後ろ側のパターンを作成し、出来上がった体の片側の2枚のパターンを対称パターンとして反対側にコピー(クローンを作成)して全体をつくるというながれになります。

最初の前側の基本の形状を制作したら、これら【左】のツールを使ってパターンの形をつくっていきます【右】。

パターンを2Dパターンウインドウに追加すると、3D衣装ウインドウ上にも同じものが表示されます。これをアバターの体の適切な位置に配置する必要があります。ギズモを使って配置してもかまいませんが、配置点(【画像】の青丸の部分)を使うと、パターンを指定した配置点に簡単に配置することができます。なお、自作のアバターをインポートしたときは、インポート時の設定で自動的に配置点を追加するように指定しておきます。配置点は後からでも作成・編集が可能ですが、インポート時に自動生成させておくのが一番効率が良いです。

STEP 04 縫い合わせ

作成したパターン同士を縫い合わせます。これは2Dパターンウインドウ、3D衣装ウインドウの両方で行うことができるので、操作しやすい方で行います。3D衣装ウインドウだと衣装の重なりで見えづらい場合があったり、2Dパターンウインドウではパターンの縫い合わせ部分がわかりにくい場合があるためです。縫い付けるときに縫い始めの位置に注意しないと、反転して縫い付けられてしまいます。

使用するツールです。

先述のように体の片側のパターンの対称パターンを作成して体全体を作成し【左】、それぞれを縫い合わせます【右】。

STEP 05 シミュレーションと補正

次にシミュレーションで縫い付けを閉じて衣装の形にします。3D衣装ウインドウの上にあるシミュレーション実行ボタンを押して実行します。シミュレーションはもう一度ボタンを押すまで終了しません。

実行中は衣装をドラッグして引っ張ったり、シワを伸ばしたり、位置を調整できます【左】。また、衣装に問題ないか確認するために歪みマップという表示モードがあります。これで衣装のどの部分が異常に引っ張られているかが可視化してくれます【右】。

衣装の歪みは穴やポケットのような開口部に歪みを生じさせたり、アニメーションさせたときの衣装の挙動にも影響するので注意が必要です。衣装に歪みや異常な変形がある場合はシミュレーションを停止し、その部分のパターンの形状を修正します。この作業を補正と言います。

衣装の形状を整える際、ダーツという切れ目を入れる場合があります【左】(これは衣装のデザインにもよります)。次に袖の部分を追加します【右】

同じようにパターンの作成、縫い合わせ、補正を行います。このようにMarvelous Designerでは衣装のパーツを後から追加していくかたちで制作を進めていきます。

STEP 06 衣装デザインの追加

作成したパターンを加工してデザインを追加していきます。3D衣装ウインドウのツールに[線(3Dパターン)]という機能があります。これは洋裁道具のチョークと同じです。

【左】のように印を入れたい部分に線を引くと、2Dウインドウのパターン上に線が表示されるので、これをなぞるように内部線を追加します【右】。

内部線とはパターンを切ったり、パターン同士を繋ぎ合わせるための縫い付け位置に使用するなどに使うものです。内部線に関連した機能の[カット 縫い合せ]を行い、内部線でパターンを分割し、その分割位置で縫い合わせます。

そして、パターン同士を中央で結合(Marvelous Designerでは「併合」)させた結果が上の画像です。

[トレース]という機能を使うと、すでにつくったパターンから一部をコピーし、同じ形状のパターンをつくることもできます。これにより、縫い合わせ部分の長さを一致させたパターンをつくることが可能です。縫い合わせの長さが一致しないと、その部分にシワが寄ることになります。フリルなど故意につくる場合は問題ないのですが、そうでない場合、汚いデザインの衣装になってしまいます。このように、後からどこか一致した長さをもつパターンを追加したいときに有効なツールです。

ここではトレースしたパターン【左】を基に、肩の部分に飾りを追加しました【右】。

上図では追加した部分の表面がまだ平坦です。これにフリル感を出すには、パターンを大きくします。しかし、縫い合わせの長さは変更してはいけないので、ここは[パターンを広げる]というツールを使います。これは指定した点を基点にして扇状にパターンを広げることができます。

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