>   >  歴代ルパンへのリスペクトを込め、2Dから3Dへ『ルパン三世 THE FIRST』メイキング|CGWCCレポート(5)
歴代ルパンへのリスペクトを込め、2Dから3Dへ『ルパン三世 THE FIRST』メイキング|CGWCCレポート(5)

歴代ルパンへのリスペクトを込め、2Dから3Dへ『ルパン三世 THE FIRST』メイキング|CGWCCレポート(5)

12月6日(金)ロードショーとなった、シリーズ初のCG映画『ルパン三世 THE FIRST』「『ルパン三世 THE FIRST』メイキング~2Dから3Dへ」と題されたセッションでは、本作の制作を行なったマーザ・アニメーションプラネット(以下、マーザ)より、本作の監督補・波田琢也氏、同アニメーション スーパーバイザー・坂本知万氏、同ショットワークチーム マネージャー・赤木達也氏が登壇し、マーザの歴史と蓄積を踏まえたCGキャラクター・アニメーションづくりのメイキング解説を行なった。

TEXT&PHOTO_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
PHOTO(メインカット&登壇者)_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

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『ルパン三世 THE FIRST』12/6(金)ロードショー
ルパン三世:栗田貫一、次元大介:小林清志、石川五ェ門:浪川大輔、峰 不二子:沢城みゆき、銭形警部:山寺宏一、レティシア:広瀬すず、ランベール:吉田鋼太郎、ゲラルト:藤原竜也
原作:モンキー・パンチ、監督・脚本:山崎 貴、音楽:大野雄二
lupin-3rd-movie.com
©モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会



<1>10年前、モンキー・パンチ氏の「3DCGのルパン三世が観たい」からスタート

左から、坂本知万氏(『ルパン三世 THE FIRST』 アニメーション スーパーバイザー)、赤木達也氏(同ショットワークチーム マネージャー)、波田琢也氏(同監督補)。以上、マーザ・アニメーションプラネット

きっかけは10年前、マーザを訪れたモンキー・パンチ氏の「3DCGのルパン三世が見たい」という一言だった。だが、その当時はパイロットフィルム制作に留まる。その理由について波田琢也氏はマーザの映画製作の歩みとともに話をはじめた。

2013年の『SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK』は同社初の映画作品。ここでの経験は現在のマーザのワークフローやパイプラインの元になったという。2014年冬にスタートし、残念ながら凍結になっている『Robodog』は北米をターゲットにしたファミリー向け作品のプロジェクトで、監督を含めスタッフの半分が北米向け劇場アニメ経験者で、日本にいながら彼らと仕事をすることで様々な経験を積んだ。その次の作品の『バイオハザード・ヴェンデッタ』は限られた予算の中で効率よくつくることが求められ、SHOTGUNを使ったチェックフローを実践した。

これらを通じ「大規模制作のためのワークフローとパイプライン」、「フルアニメーションによるキャラクター表現と物語を中心とした映像制作」、「限られた予算内で効率的に映像を制作する経験」を経験したスタッフによって、この度の『ルパン三世 THE FIRST』は制作された。波田氏は結果的に、表現力や生産能力を獲得する10年前に「やらなくてよかった」と述懐する。

制作準備においては、アニメ『ルパン三世』シリーズを制作したトムス・エンタテインメントテレコム・アニメーションフィルムから過去の膨大な設定資料や、『ルパン三世 PART4』の友永和秀総監督からCGを想定した表情集の提供を受けた。友永氏とは面談も行ない「ルパンらしさ」を徹底的に突き詰めたという。本作で「フルアニメーションでコメディを表現する」ために、どんなルックでつくり上げるか。「表情や目の表現」にこだわることによって、キャラクターデベロップメントに向けての方向性が示された状態でスタートを切れたことは、現場のパフォーマンスを出す上で最も大きかったと語る。

キャラクターデベロップメントにおいては2Dで20数種類のキャラクターデザインを起こした。それはハリウッドCG系A、同B、TVアニメ風など様々なパターンがあったが、決定稿はモンキー・パンチ氏を含め、満場一致で採用された。

つづいてスクリーンテストが行なわれた。プロダクションに入る前に実際のカメラを通して表情や動きの方向性を決め、リグやシェーディングなどのデータの安定性を確保し、それらをチームで共有。「ルパンは瞳の色が重要で、黒くなりすぎると日本人っぽくなってしまう」ため、茶色にすることで多国籍感を出していったという。

テストシークエンスの制作プロセスの一部については、テレコム・アニメーションフィルムのスタッフによって線画での原画撮影を行い、それを元にCGで制作した。
最終的にはドラマとアクションシーンを2分間程度の映像としてまとめ、これを製作委員会内に向けて上映会を催し、本編のクオリティと方向性の合意を得た。これにより「大きな後戻りはなく、迷うことなく進むことができた」という。



<2>「歴代ルパンへのリスペクト」を込めた画づくりを徹底

続いて、坂本知万氏からキャラクター開発についての説明が行なわれた。制作スタッフが大事にしたのは「歴代ルパンへのリスペクト」。そのため、「アニメ版の徹底リサーチ」を行ない、「PART4」を参考に進めていった(2018年放送の「PART5」は制作当時は未放映)。ルパンの顔を司る重要な要素は「最も重要なのは美しいラインで描かれた口」、「ドーム型の目、正円ではない瞳、特徴的な眉尻」、「顔の造形を誇張するアウトライン」、「髪型」で、これらをリギングチームにリクエストした。「1個1個のコントローラーの動きを洗練し、少ない数で望む形が出せるようになるまでチューニングした」という。

目と眉の周りでは頭蓋骨を調整する特殊なコントローラーが用いられた。これはルパンが「眉毛の上がり下がりが大きいのが特徴のキャラクター」であるため、きれいな影を眉毛の下に落とすため。奥側の目を違和感なく表現するために時間をかけたという。アウトラインではsoftModというMayaのデフォーマーを使用して調整し、表情の僅かなちがいにこだわった。

これらの調査結果をアニメーションチームに情報共有する際に重要だったのは、紙にプリントアウトするということ。実作業に入った際、参考をサーバーに置いておいても都度都度は参照されづらいため、それぞれのパソコンに貼り付けて作業してもらったという。またこのドキュメントは英語でも書かれている。マーザでは1人でも英語話者がいる場合はこの形式で行なう。本作では22名中13名が外国人だったという。

最後に赤木達也氏よりマーザの会社説明が行なわれた。同社のビジョンは「世界中の子供たちに最高の物語を」であり、ストーリー開発専門の部署があり、ストーリーボードを元に仮の音楽や効果、台詞を入れたストーリー・リールを制作し、それを関係者に観てもらってストーリーを洗練させていく「スクリーニング」という手法を採っている。
もちろん『ルパン三世 THE FIRST』プロジェクトでも本手法が用いられている。また同社の特徴としてコミュニケーション量が多く、気軽に相談できる環境にあるという。さらに先に挙げたように外国人スタッフも多く、17ヵ国から20人が集ったそうだ。

最後に『THE PEAK』を例に、今後はゲームエンジンを使った映像制作を行なったり、オリジナルキャラクターを使った映像制作を行なっていく方針を説明し、新たな人材を募集していることを表明し、講演を締めくくった。



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