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『ガールズ&パンツァー 最終章』第2話、安易にゲームエンジンを使うのは危険!|CGWCCレポート(4)

『ガールズ&パンツァー 最終章』第2話、安易にゲームエンジンを使うのは危険!|CGWCCレポート(4)

11月3日(日)、「CGWORLD 2019 クリエイティブカンファレンス」が文京学院大学本郷キャンパスにて開催された。セッション「『ガールズ&パンツァー 最終章』第2話~Unreal Engine 4 の使用事例~」ではアニメCG×ゲームエンジンをテーマに、最新作の戦車戦をどのように生み出したのかをふり返った。

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TEXT & PHOTO_高橋克則 / Takahashi Katsunori
PHOTO(メインカット&登壇者)_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

<1> 最も地獄だったジャングル戦

セッション前半はアニメ制作会社・アクタスの3DCG部門として新発足したSTUDIO カチューシャから柳野啓一郎3D監督が登壇。柳野氏は2012年のTVシリーズから『ガールズ&パンツァー』に携わってきたスタッフであり、「最終章 第2話」制作において、ゲームエンジンのUnreal Engine 4(以下、UE4)を導入するまでの経緯を明かした。

左から、小宮彬広氏(グラフィニカ、京都スタジオ代表 & テクニカルリード)、柳野啓一郎氏(STUDIOカチューシャ、3DCGI監督)

まずは開始早々、プロジェクタに「安易にゲームエンジンを使うのは危険!」という文字が映し出され、客席の笑いを誘った。柳野氏は「UE4やUnityなどのゲームエンジンを使えば、楽にアニメができるのではないか?」という軽い考えでは、ろくなことが起きないと断言。理由として、開発のための人手が必要で実装するまでに予算がかかること、苦労してつくり上げた割にはゲームのような映像になってしまうことを挙げた。そのような失敗をしないためには「目的と手段を明確にすること」が重要だと語る。

『ガールズ&パンツァー』の目的は「戦車ファンにこれまでにない戦車描写を楽しんでもらうこと」、手段は「戦車の形と動きに徹底的にこだわること」である。それを念頭に置いた上で、アニメーションというメディアがもつ「1ピクセル、1コマ単位でレイアウトや演技がつくれる」という独自性を生かせるような手法を考えていった。

柳野氏は作画にはない3DCGの優位性は「アセット」だとコメント。アセットは一般的には素材データのことを指すが、「『ガールズ&パンツァー』のアセットは少し異なる」と口にした。戦車マニアも納得できるように軍事監修チェックでディティールの精度を上げることはもちろん、戦車のリグは半自動にしてボタンを押すだけで地面に接地するようにしており、車体の傾きやサスペンションも自動化した。

「劇場版」からはエフェクトを簡単に付けられるようにするため、After Effects上で使えるテンプレーションを大量に制作。キャラクターモデルもある程度の表情を即座につくれるようにするなど、作業の簡略化や自動化を意識した内容となっている。『ガールズ&パンツァー』のアセットは「アニメーターの負担を軽減し、やりたいことを実現できる環境を整える」ためにつくられているのだ。

だが柳野氏はそういった準備をしても理想にはほど遠かったと述懐し、具体例としてジャングル戦に触れた。『ガールズ&パンツァー』は背景動画フル3Dの主観視点が多い作品のために3D作業負荷が高く、自然物が多いジャングル戦は「最も地獄」だったそうだ。しかし水島努監督の「2話はジャングル戦がやりたい」という鶴の一声によって、TVシリーズやOVA、劇場版で困難を極めた森の表現に今度は真っ正面から向き合うことになってしまった。

そこで登場するのがUnreal Engine 4だ。高機能なゲームエンジンで豊富なアセットも販売されているなど、さまざまなメリットをもつが、デメリットも数多く存在した。主な問題点は「TVシリーズから蓄えてきたアセット資産が完全再現できないこと」と「ゲームエンジンでつくった映像がセルアニメと馴染むのかがわからなかったこと」だった。

前者の問題は完全再現をあきらめて、既存のアセットの部分はUE4に形だけをもっていき、その部分をくり抜くという手法で解決。後者は過去作での背景の出力方法を分解・再構築し、それと同じことをUE4で行えば、After Effects上で似たようなものができるのではないかと考えた。最終的にはUE4の背景と3ds Maxの戦車・キャラクターをAfter Effectsで合成するという手法を採用して、実作業に移った。

<2>「すぐできる! UE4使用法」を伝授

後半はグラフィニカ 京都スタジオ代表の小宮彬広氏が登壇。実際に作業風景を見せながら、映像ができるまでを紹介した。「最終章 第2話」では、既存の戦車やキャラクターは3ds Maxでレンダリングして、背景だけUE4を使うことになったが、ジャングルという舞台のために草木がカット内の戦車やキャラに絡みすぎるという問題が生じた。そのためマスク用として、UE4に戦車とキャラを取り込むことになった。

戦車やカメラデータはFBX、キャラクターや揺れものはAlembicでエクスポート。さらにFBX、Alembic、カメラデータがあれば、シーンデータを作成できるスクリプト「Auto Import System」(AIS)も用いている。このように「CGWORLD」255号の特集記事にも掲載された制作フローを、デモンストレーションを交えて丁寧に解説していった。

その後再登壇した柳野氏は、開発が間に合わなかった場合のバックアッププランとして、UE4から連番出力した背景を使って戦車を挟み込むという手法を用意していたことを語る。このバックアッププランを大量に用いるために、絵コンテを「斜めフォロー」、「前後フォロー」、「横フォロー(寄り)」、「横フォロー(引き、地面あり)」の4パターンに類型化した。連番をバンク化したことによって、UE4のカットを倍増させたと制作秘話を打ち明けた。

この手法は、2Dで背景を引いた感じが出せるためセルアニメと馴染む、3D作業が発生しない作画のみのカットも撮影上で兼用作業ができる、法線マップをバンク出力すれば撮影で木々への照り返しや光の調節ができるなど、多くのメリットがある。特別な開発が不要ですぐできる手法のため、「ぜひお試しください」と太鼓判を押した。最後に柳野氏はSTUDIOカチューシャがスタッフ募集中であることを伝え、来場者に向けて「お客さんを楽しませる作品を一緒につくっていきましょう」とメッセージを送った。



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