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「チームラボプラネッツ」の新作パブリックアート『空から降り注ぐ憑依する滝』に込められた想いとは?

「チームラボプラネッツ」の新作パブリックアート『空から降り注ぐ憑依する滝』に込められた想いとは?

幼い頃に裸足になって川や噴水に入って遊んだ記憶はないだろうか。そんな水の思い出が脳裏によみがえってきて、それでいて今までにない新しい体験をできるのが、東京・豊洲の新名所、水に入るミュージアム「チームラボプラネッツTOKYO DMM」だ。コンセプトは「Body Immersive」超巨大なアートに、他者と共に、身体ごと、圧倒的に没入するというもの。巨大な4つの作品空間を中心としたミュージアムで、運営はDMMが担当し、ソフトとなるコンテンツの制作は、ご存知チームラボによるもの。2018年7月の開館から180万人が来客した施設で、7月16日に新たなるパブリックアートと超巨大作品空間をたずさえてリニューアルオープンした。

TEXT & Photo_武田かおり / Kaori Takeda
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
Special thanks to teamLab

水に入るミュージアム「チームラボプラネッツ」作品ダイジェスト

一般公開を前に、チームラボによる館内プレスツアーに参加してきた。新しいパブリックアート『空から降り注ぐ憑依する滝』と、チームラボ代表取締役の猪子寿之氏による解説はクライマックスとして最後に譲るとして、まずはチームラボのコミュニケーションディレクター・工藤 岳氏と、Catalyst・中村文豪氏の話から紹介したい。工藤氏は「デザイナー」というよりは、作品をつくったり紹介する際の、概念の言語化を担当されているようだ。そして中村氏は、『空から降り注ぐ憑依する滝』を担当したCatalyst(プロジェクトマネージャー)である。

「言語化」ということで賢明なる読者の皆様はピンときたかもしれないが、チームラボでは開発環境や開発ツールのような技術的な話題は社外秘とのこと。なので本稿では、思想をどうアート作品に落とし込んだかという点に着目し紹介していく。

来場者が裸足になって水の中を歩く作品。水面を泳ぐ鯉を捕まえると、ひまわりに変化して散っていく。咲く花は季節によって変化させている

ミュージアムの目玉となる超巨大作品空間『人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング』は、かなり広いエリアに水がはってあり、水面には無数の「鯉」と「波」のような水の動きが投影されている。鯉の動きはインタラクティブで、人の動きにも影響を受けるし、他の鯉の影響も受ける。人にぶつかったり手で掴まれたりすると、はじけて花に姿を変える。花はひとときも止まることなく散っていき、波に溶けて姿をけす。鯉の泳いだ軌跡には光の線が残る。線は無数の水の粒子の連続体で表現されていて、粒子間の相互作用も計算されている。

有名な作品を鑑賞する美術館では人が多いと鑑賞の邪魔になるが、この作品では鑑賞者が多いほどに水面に多くの花が咲き、居心地がよくなる。従来の作品や作品鑑賞とは概念からまったくことなっている。

「チームラボプラネッツTOKYO DMM」はDMMからチームラボに話がきて始まった企画だが、チームラボの作品は必ずしも"依頼ありき"ではない。「複合的な要素が絡み合ってできています」とは工藤氏。チームラボはアーティスト、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、様々な分野のスペシャリストからなるチームで、それぞれが「こんな体験をしたんだよね」、「こういうものがいいんじゃない」と話し合って、作品をつくり出していき、途中で頓挫するものもたくさんある。そんな中から「いくつかがうまくいって完成している」と工藤氏は語る。代表の猪子氏でさえ、工藤氏によると「上司」ではなく、対等なチームのひとりであり、チームひとりひとりの発言や想いの強さが作品に反映されているという。

『人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング』も、「DMMからの依頼」や、「誰かの子供の頃に裸足で水に入って鯉を捕まえた体験」などが複合的に絡み合って出来上がった作品なのだろう。

頭の中にあるイメージを、体験する人にそのまま伝えるために、アーティストやアニメーターたちは何度も会場に足を運び、動きに微調整を加え、作品をつくりあげていった。「どういうツールでつくったかは話せないのですが、皆さんの使えるツールでどうすればこれをつくれるか、考えながら体験していただけたら嬉しいですね」と、Catalystの中村氏は言う。

また、ミュージアムにはリニューアル以前からの作品ももちろん残っている。

『The Infinite Crystal Universe』

『The Infinite Crystal Universe』は、ご存知の方も多いだろう。広い空間の6面全部が鏡面で、内部は電光物が通路をさけて立体的に満たしており、光の彫刻群が無限に広がっているようにみえる。光は様々に色を変え、疾走し、踊る。光の世界に迷い込んだかのように錯覚できる作品空間だ。

『冷たい生命 / Cold Life』

『冷たい生命 / Cold Life』は2011年の作品『生命は生命の力で生きている』の表面を剥がし、その構造を明らかにしたもの――とのことだが、筆者の理解力を超えていて、解説しきれない作品であった(......すみません)。率直な感想を述べるなら、まるで水墨画のように美しかった。

『意思を持ち変容する空間、広がる立体的存在 - 平面化する3色と曖昧な9色、自由浮遊』

『意思を持ち変容する空間、広がる立体的存在 - 平面化する3色と曖昧な9色、自由浮遊』は、直径2メートルほどの弾力のある光の球体が空間を満たした空間作品。球体は人からあたえられた衝撃によって色を変え、音色を響かせ、そのまわりの球体も放射状に連続的に呼応し、同じ色になり同じ音色を響かせていく。

『Floating in the Falling Universe of Flowers』

『Floating in the Falling Universe of Flowers』は、四季折々の花々が、時間と共に刻々と変化しながら咲き渡る空間だ。プラネタリウムの天球のようなもので覆われた部屋の床は鏡で、360度を暗闇で囲まれている。飛び交う花は宇宙の星々のようで、自分自身も花でできた宇宙を漂っている感覚に陥る。筆者の一番好きな展示だ。

「チームラボプラネッツTOKYO DMM」のパブリックアート『空から降り注ぐ憑依する滝』はミュージアムの外にあり、光でできた水の滝が空から降り注いで見える塔だ。「ゆりかもめ」線からもみることができる。非常に高い塔で、刻々と移り変わる太陽光の変化によって、『空から降り注ぐ憑依する滝』は見え方を変える。

塔の上部は鏡面になっていて、晴れた日には青空を、曇りの日には曇り空を、夜には星空を反射し、まるで空から滝が落ちてきているように見える

滝はインタラクティブで、近くに立っていると水は跳ねたり割れたりする。猪子氏にあたって跳ね返る水の様子がわかる

プレスツアーの最後に、チームラボ代表の猪子氏からの話があった。

「『空から降り注ぐ憑依する滝』は、光の彫刻のような作品をつくりたいと考え制作したものです。芸術はコロナ禍に対して無力で、無力感に苛まれることもあります。しかし、芸術がほんの少しでも、ひとときでも救いになることができたら嬉しいですね」。

こちらの滝は1年以上かけて制作されたとのことで、CGクリエイターたちは何度も会場に足を運び、水流の速さや光の強さを調整し、どうすれば見ていて気持ちよくなるか、試行錯誤を重ねたという。

塔の隣にある曲がりくねったベンチに座ってのんびり鑑賞しながら、この塔がどのようにつくられたのかに想いを馳せるのも、また一興ではないだろうか。



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