11月14日(土)、東京ビッグサイトにて「東京国際プロジェクションマッピングアワード Vol.5」が開催された。若き空間映像クリエイターの発掘と育成を目的に、2016年に開催した本イベントも5回目の開催となる。今回はコロナ禍の状況にふさわしいとも言える「CONNECT with」をテーマに、学生部門にエントリーされた8作品に加え、今回から新たに創設されたU-25部門にエントリーされた2作品がしのぎを削ることになった。本稿ではその様子をレポートする。


TEXT&PHOTO_オムライス 駆 / Kakeru Omu-rice
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



初の無観客オンライン配信での開催

5回目の開催となった今回、昨今のコロナ禍を受けて無観客オンライン配信となった点もこれまでと大きく異なる点だ。大会の様子は、「MAIN」、「DRONE」、「VIRTUAL」の3種類から視点を選択できるマルチアングル方式でライブ配信された。また、視聴者はライブ配信を視聴しながら「cute」、「ブラボー」、「エモい!」といったリアクションスタンプを押し、上映後には視聴者のリアクションのうち多かったものが可視化され、ビッグサイト壁面に投影された。このリアクションシステムにより、鑑賞した作品について視聴者の感想を伝えることができる。さらに一般投票を通じて「観客賞」の審査にも参加することも可能だ。

▲リアクションスタンプによる視聴者の反応がビッグサイト壁面に投影されて可視化される

無観客での開催ではあったものの、イベントの司会進行を務めるMCとして、司会・リポーター・モデル・俳優など多岐にわたって活躍するハリー杉山氏を迎え、審査員には川本康氏(株式会社玄光社 コマーシャル・フォト統括編集長)、シシヤマザキ氏(アーティスト HOTZIPANG 所属)、橋本大佑氏(演出家・アニメーション作家・視覚芸術アーティスト)、森内大輔氏(NHK デザイナー・プロデューサー)など各界から豪華な顔ぶれがそろい踏みとなった。またフィナーレでは、花火とプロジェクションマッピングのコラボレーションによるスペシャルショーも開催された。次項から投影された作品群を紹介しよう。

「東京国際プロジェクションマッピングアワードVol.5」ONLINE LIVE(見逃し配信)


審査結果:学生部門

受賞作品は4名の審査員による審査に加え、一般視聴者の投票結果を加算して決定された。その結果、見事学生部門の最優秀賞に輝いたのは、FOREST(日本電子専門学校)の作品『共存』だ。審査員のシシヤマザキ氏は、「とてもユニークな作品でしたが、ただユニークというだけではなく、生き物である私たちの内臓に訴えかける表現があった作品でした。社会の構造の管の中で蠢いている私たちも感情をもち、感情に反して食べたり出したりを行なってしまう。私たちもまた管であるということ。消費する私たちって決して美しくないんだけれども、それを茶化したり軽いエンタメで終わらせるのではなく、CGの質感の不気味さを上手く利用して表現していたと思います」と高く評価。チームFORESTの代表者である森 渉吾氏は、「ありがとうございます。ひとりひとり良い働きをしてくれたおかげで面白い作品をつくることができました。幸せです」とのコメントと共に、受賞の喜びをあらわした。

【学生部門 最優秀賞】

▲チーム名:FOREST(日本電子専門学校)/作品名:『共存』

学生部門の優秀賞に選ばれた作品は2点。1点目は34 White City(Royal College of Art:イギリス)の作品『Narstalgia』だ。審査員の川本 康氏は、「マクロとミクロ、極大と極小、宇宙とウイルスといった対照的なものを並べ、それらが調和をとりつつも人の存在はあやふやだったり、街はとっても無機質だったり。全世界の新型コロナウイルスの状況を見事にプロジェクションマッピングによりエンターテインメントにまで高めた作品だと思います。感動しました」と選評を述べた。

【学生部門 優秀賞】

▲チーム名:34 White City(Royal College of Art:イギリス)/作品名:『Narstalgia』

同じく優秀賞を射止めた作品はTEAM KIOI(城西国際大学)の作品『Shape Of Sounds ~音の可視化~』。「ビッグサイトに投影された映像を見るだけで感無量で、この半年間、リモートや大学で制作していく中でそれだけで感無量だったのですが、このように栄誉ある賞をいただき感謝しています。色んな人が協力してくれて、チームメンバーにも今日来れなかったメンバーにも、投票してくれた皆様にも感謝の意を表します」と、チーム代表の藤井隼人氏は受賞の言葉を述べた。

【学生部門 優秀賞】

▲チーム名:TEAM KIOI(城西国際大学)/作品名:『Shape Of Sounds ~音の可視化~』


審査結果 U-25部門/審査員特別部門

U-25部門の最優秀賞を受賞したのは、Harada:Lab(日本)の作品『Mirror』だ。審査員の森内大輔氏は受賞作について、「鏡をテーマにした作品でしたが、非常に日本的な作品だなと感じました。表現の緻密さ、細かいところの色彩や形状に心配りがされており、様々な世界を丹念に描いているなという印象でした。鏡は、日本の神社にもある御神体なんですよね。皆さんも意識されたかもしれませんが、日本人にとって、そして日本文化にとって中心にあるような、自分を映し出すような存在であると思います。リモート期間で自分と向き合うことが多く、鏡に映る自分や自分が見ている世界をテーマに描き出したかったのかなと。良いものを見せていただいてありがとうございます」と評価した。

チーム代表の林 祐太郎氏は、「このような機会を設けていただきありがとうございました。僕は2回目(の挑戦)なのですが、今回からU-25部門が設けられたことで本当に最後のチャンスでしたが、最後にこのような結果をいただけて感無量です。このメンバーで最後までつくり上げることができて、本当に良かったです。ありがとうございました」と受賞の喜びを伝えた。

【U-25部⾨ 最優秀賞】

▲チーム名:Harada:Lab (日本)/作品名:『Mirror』

審査員特別賞を受賞したのはATTO(カナダ)の作品『Fræktal』だ。審査員の川本 康氏は、「地球規模でいま世の中で起こっていることを捉えた作品でした。日本人はどちらかというと、身近なところや身近な人たち、そことの繋がりをとても大事にしているように思うのですが、もう少しグローバルな視点で世界の状況を表現しているところが素晴らしかった」と受賞作を評価した。

【U-25部⾨ 審査員特別賞】

▲チーム名:ATTO (カナダ)/作品名:『Fræktal』


総評

最後に総評として、森内大輔氏は「審査が例年にも増して時間がかかり、意見も割れつつ甲乙つけがたい内容でした。この状況下で、このように素敵な作品をつくられたことに経緯を表します。この環境下でここまで仕上げられるということは、数年前では考えられないことで、テクノロジーや皆さんの感性がもたらしたものだと思っています。テーマが『CONNECT with』だったわけですが、何とつながるかを改めて考えてみると、デザイン力や演出力、ストーリーの面白さ、音楽とのマッチングなどそれぞれの作品の良いところを各チームに見出しました。これを機会に、ソーシャルディスタンスを取りながら情報交換をして、新たにつながった仲間たちと新たなものづくりをしていただければと思います」と、改めて大会テーマに沿ってコメントを述べ、大会を締めくくった。

▲「花火とプロジェクションマッピング」の様子。花火とプロジェクションマッピングのコラボレーションによるスペシャルショーがイベントのフィナーレを飾った