2020年11月28日(土)、東京丸の内・丸ビルホールにて第22回「DigiCon6 ASIA Awards」が開催された。同イベントは、アジアの16地域から、優れたコンテンツクリエイターを発掘することを目的として、選ばれたクリエイターたちが一堂に東京に集まり、DigiCon6 ASIAのステージで競い合う。

本稿では、DigiCon6 ASIA Awardsのセレモニーの様子や各アワード受賞者達のインタビューなどをレポートする。

TEXT&EDIT_江連良介 / Ryosuke Edure
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

日本のWASABIMELON制作『OASIS』がSpecial Mention賞を受賞

▲WASABIMELON制作『OASIS』

日本からWASABIMELON制作の『OASIS』がSpecial Mention賞を受賞した。同作は、人類の発展に伴って環境破壊が進行する中、どんな状況でも生きている生命の強さを表現したフル3DCGアニメーション作品だ。

登壇した橋詰隆成氏は、作品制作においてこだわった点として、「あまり現実離れしすぎず、モチーフにしたAIが将来実現できそうなことを考えながら作品をつくりました」と語った。

▲受賞した喜びを語る橋詰隆成氏

また、同じく日本からThat's Entertainment!賞を受賞した田邊 馨氏の『私にティッシュをください。』は、独身アラフィフOLサチコがティッシュ配りのお兄さんと壮絶なティッシュ争奪戦を繰り広げるという奇想天外なエンターテイメント作品だ。

田邊氏は地元札幌からインタビューを受け、「自分自身が試供品を貰えななかった疑問から作品制作の着想を得た」と語った。

ASIA Gold賞には韓国の『MASCOT』が選ばれる

ASIA Gold賞には、韓国のKIM Leehaが制作した『MASCOT』が選ばれた。同作品は、街のマスコットになりたいキツネがマスコット養成学校に入学し、マスコットのオーディションや整形手術を受けるために高利子のローンを組んでしまうというストーリーだ。

作品は全体的に薄暗い雰囲気で、キツネの置かれている環境の困難さや社会の影の部分を映し出している。

彼らは、「自分たちの作品を見てぜひ若い人たちの痛みを知ってほしい。同時に、悲惨な状況は変えることができるのだというメッセージも伝えたかった」と語る。

▲「この作品で困難な環境を少しでも知ってもらえたら」と語るKIM Leeha

また、審査員のポール・ウィリアムズ氏は「この作品のキツネはどこに向かっているのか」と問いかけると、彼らは「自分では結末は決めておらず、観客に委ねたいと思っている」と語った。

ASIA Grand Prizeには壮大な世界を描いた『Dragon's Delusion: Preface』が選定

ASIA Grand Prizeは中国Kongkee制作の『Dragon's Delusion: Preface』が受賞した。同作品は、秦の始皇帝が不死を可能にする秘密の技術開発に取り組んで300年後の世界を描く。作品内ではサイボーグやアンドロイドが人間と共存する世界になっており、そこで起こる不思議な出会いや出来事、AIと心といった現代的なテーマをカラフルな色彩で見せる。

審査員の杉野希妃氏は、「キャラクター造形や世界観が完璧で引き込まれました。内容は1度だけでは理解できず審査会で2度見ました。作品の発想に自由さを感じ、私たちクリエイターも刺激を受けました」とコメントをした。

▲作品に賛辞を贈る審査員の杉野希妃氏

受賞後のインタビューでKongkee氏は、作品に込めたメッセージについて、「香港へのラブレターです。自分たちの歴史や文化を知ることがいかに大切であるかを伝えたいと思いました」と語った。

▲受賞した喜びを語るKongkee氏

同作品は台詞の節々に香港の社会情勢を想起させる内容がある。このことについてKongkee氏自身は明言を避け、「我々は諦めてはいけない」と手短に語った。

また、次の作品についてKongkee氏は、「今までの作品は皆さんに応援していただいたいので、オフィシャルな作品として何か展開できれば良いと思っています」と展望を語った。

コロナ禍におけるDigiCon6 ASIA Awardsの意義

▲イベントの総評をする塩田周三氏

最後に、株式会社ポリゴン・ピクチュアズ 代表取締役/CEOであり同イベント審査員である塩田周三氏により、総評が行われた。塩田氏は昨年香港で行われた第21回「DigiCon6 ASIA Awards」を振り返り、今回オンラインとのハイブリッドで大会を開催できたことに感謝を述べた。

また、今回の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に関して、「全人類共通の敵に我々は直面している。皆さんがつくる作品の多様性が生み出す様々な感情をできるだけ人々に提供してくことが、人類が一丸となる有効な手段なのではないかと感じています」と語り、大会の総評を終えた。