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『Unity道場 教育スペシャル2』で明かされた、教育機関別Unityの活用法

『Unity道場 教育スペシャル2』で明かされた、教育機関別Unityの活用法

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは11月21日(土)、YouTube Liveにてオンラインセミナー『Unity道場 教育スペシャル2』を開催した。大学・専門学校および高校・高専などの教育関係者を対象に、教育現場で活用できる実践的なテクニックを共有する内容で、3時間で6本の講演が行われた。本稿では、Unityを用いて授業展開を行なっている3名の教育関係者による講演内容をレポートする。なお、セミナーの模様はYoutubeで無償公開されている。


TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



大学教育におけるUnity公式教材の活用

はじめに登壇したのは、大阪工業大学准教授の矢野浩二朗氏だ。矢野氏は「大学教育におけるUnity公式教材の活用」と題して、5年間の取り組みをふり返った。千葉大学の医学部を卒業後、医師免許は取得したものの医師にはならず、海外の大学院などを経て情報系の教員になったというユニークな経歴をもつ矢野氏。現在は、教育分野でのVR活用について研究を進めている。

そんな矢野氏がUnityと出会ったのは2013年のことで、1~2年生向けの課外授業「学生プロジェクト」がきっかけだったという。デジタル教材開発の推進役となった矢野氏は、学生たちと小学生を対象にした学習アプリケーション開発に取り組んでいった。もっとも、その際に使用した開発環境はHTMLアニメーション作成ソフトのAdobe Edge Animate。矢野氏が使い慣れていたというのが主な理由だ。

そうした中、学生たちからUnityの存在を知らされた矢野氏は、さっそく資料を入手して学生と共に勉強会を開始してみたが、今ひとつ敷居が高く感じられたと話す。市販のUnity関連書籍がUnityエディタの操作解説を主眼としており、プログラミング初心者を想定していないものが多かったことや、矢野氏自身がオブジェクト指向言語に慣れていなかったことなどが理由だ。受講する学生数が数十名と多く、全員にテキストを用意できなかったことも、理解の妨げになってしまったという。

そこで2015年から始めたのがUnity公式教材を活用した指導だ。はじめに使用したのが『2Dシューティングゲームのチュートリアル』だ。「3Dゲームより内容がシンプル」、「早い段階からスクリプトを作成する課題がある」、「解説が日本語で行われる」、「毎回その時点での完成プロジェクトがダウンロードできる」といったように、矢野氏にとって理想の教材に近かった。これに加えて用語解説やスクリプトを解説するための補助教材も自作し、授業に臨んだという。

他に活用されたのが、UnityでC#スクリプトを学習するための教材『Beginner Scripting』『Intermediate Scripting』だ。前者はプログラミングの初歩とUnityでよく使用するメソッドの解説。後者はC#そのものに関する解説が中心で構成されており、とても良い教材だという。授業ではこれを基にクイズ形式の補助教材を作成し、あわせて用いたと説明された。

2017年度からは「初年時導入科目における、Unity公式教材を活用した指導」の取り組みも始めた。使用した教材は3Dで玉転がしゲームをつくる『はじめてのUnity』だ。「シンプルだが、最低限の機能をカバーした3Dゲームを作成できる」、「チャプター数が少なく、短時間で終わらせられる」、「操作方法の解説が丁寧で、初心者でも取り組みやすい」といった利点を挙げ、プログラミング初心者でも取り組みやすいと評価した。

もっとも当時はPCの台数が少なく、2~3名の学生が共同で使用する状況だった。そのため、学生のC#スクリプトに関する理解不足が懸念されたという。そこで併用したのが「質問づくり」によるグループワークだ。書籍『たった一つを変えるだけ クラスも教師も自立する「質問づくり」』をベースにデザインされたもので、あるルールに従って質問をたくさんつくり、そこから学習の幅を広げていくというもの。これによって初心者が陥りがちな数々の質問~「X座標とZ座標だけでY座標がない理由」、「()、{}、<>のちがい」、「空の()の意味」などを効果的に引き出すことができた。「学生に質問を促してもなかなか手が挙がりません。しかし質問作成をルール化すると、思わぬ質問が出てきます。それに対して解説することで、学生の理解を深めることがねらいでした」(矢野氏)。

その後、2019年度からは全学生が個人PCをもつようになりPCの台数問題が解決。グループワークから個人ワークに重点が移り、テキスト通りの作業と作品制作が可能になった。そこで用いられた教材が『あそびのデザイン講座』だ。こちらも操作方法とスクリプトが非常に丁寧に説明されており、実際に制作するピンボールゲームが面白いこともあって学生が様々な工夫を行い、バラエティに富んだ成果物をつくるようになったという。

2020年度は大学としてUnity Academic Alliance(UAA)に加入し、Unity認定資格向けの課外授業なども計画されていた。ただし、これらはコロナ禍により中止となることに。それでも、UAAの契約で活用可能になったアソシエイト教材を3年次のゼミで活用するなどしているという。動画教材・付属アセット・簡単なクイズ・教師向け資料等がセットになった教材で、英語ベースだが、ところどころ日本語に対応している部分もあり、問題はないという。それよりも量が多すぎることが悩みの種で、ポイントを絞りながら使用していると述べた。

「初心者向けには『学生自身で何とかできるだろう』という考えを捨てて、シンプルなプロジェクトで基本を徹底的に、かつ丁寧に教えることが大切」と述べる矢野氏。「スクリプトを一行ずつ確認して、大文字・小文字のミスや、セミコロンの打ち忘れを確認するといった行為を授業を通して習慣づけさせることが重要です」。その上で可能な限りUnity公式の教材を使い、教員は補助ワークのデザインやサポートに注力することが、限られた時間で授業の質を上げるポイントだとまとめた。


Unityを使用した授業の活用事例と結果

続いて登壇したのは日本電子専門学校で教鞭をとる伊藤靖彦氏だ。東京ゲームショウで毎年ブース出展を行い、フォトリアルなレースゲームのデモを行うことで知られている同校は、これまで多くのゲーム開発者を業界に送り出してきた。

中でも3年制のゲーム制作研究科は、全学生がプログラミング、グラフィック、ゲームデザイン、サウンドを学習する、独自のカリキュラムが特徴だ。教科書も学校で独自に制作したものを使用するなど、熱心な授業が行われている。もっとも、それだけに授業内容のレベルは高く、1年次でつまずく学生も少なくなかったという。

「学習内容が多く多岐にわたることから、挫折する学生が多いことが問題になっていました。当時はC言語とDirectXをベースとした開発環境から入っていたため、ゲームが形になるまで時間がかかります。また2015年から1学年が100名を超える大所帯になり、コンピュータを触ったことのない学生が増えたことも、挫折者を生んでしまう遠因となっていました。そこで2016年度からUnityを導入し、ゲームをつくる楽しさ・面白さを早い段階で提示するようにしました」(伊藤氏)。

Unityが導入されたのは、1年生前期のゲーム開発だ。従来は4月から9月までの全15回で、1回270分(実習180分、講義90分)を使い、がっちりとC言語とDirect Xによる2Dゲーム開発を教えていた。これをそのままUnityによるゲーム開発に置き換えたのだ。授業のねらいは「全学生がゲームを完成させて、成功体験を得る」こと。学校側で用意した素材を基に、前半でシューティングゲーム、後半でアクションゲームを作るところからスタート。それぞれ自分なりの内容に改造して、オリジナルゲームに昇華させるという目標が設定された。

授業のポイントはColliderやRigidbodyなどのコンポーネントを利用して、とにかくゲームを完成させること。その上でUnityエディタの操作をハンズオン形式で行い、操作で遅れる学生をフォローした。また、サブ教員を配置したり、学習の進み具合が遅れている学生を一箇所に固めるなどして、効率的な学習支援ができるようにも配慮したという。他に大量のコメントをつけた自作のソースコードをオリジナル教材として開発し、いわゆる「写経」をさせながら体験的に理解させるようにもした。

このほか同学科ならではの取り組みとして、プログラムの入力を時間で管理・調整している点がある。10分、15分といった短い時間で区切り、集中して取り組めるように演習内容が調整されているのだ。もっとも、学生によって入力時間には差がある。そこで早く終わった学生には、処理内容や動作状況のしくみを自分の言葉で教科書に記入させ、理解度を深めるという方法が採られている。一方で時間内に終わらなかった学生は放課後に続きを行い、その日のうちに完成させるのだ。宿題にするのではなく、学校で終わらせるように指導を徹底しているのだという。

こうした取り組みの結果、前期では9割以上の学生が、自分なりに改造したゲームを完成させることができた。また、CGデザインの授業と一部連携させることで、8割以上の学生がグラフィックスを自作する成果も。特に、従来はグラフィックに凝る学生の多くがプログラミングにまで手が回らず、課題を完成させることができなかったことに対して、Unityを用いることでビジュアル的にも優れたゲームが多く出てきたことが特徴だったという。

このように大きな成果を見せたことから、伊藤氏は「ゲームエンジンを用いると、本来ゲーム開発に必要な知識を有していなくても、ゲーム開発の成功体験が得られる」と評価。入学直後の早い段階で「やればできる」という学習のきっかけが与えられる点が大きいとした。「従来はゲーム開発で必要な知識を教えることに重きを置いていたため、ゲームの開発経験やつくる楽しさを知ること、そしてゲーム開発のイメージをもつことが後回しになっていました。Unityを導入することでこの関係を逆転させられるようになり、高度な内容を独習する学生を増やすことができました」(伊藤氏)。

続いて後期授業では、ColliderやRigidbodyなどのコンポーネントを自作させつつオリジナルゲームの作成に進んでいく。Unityを用いる授業は1年次で終了し、2年次以降はガッツリと3Dプログラミングを学ぶ方向に切り替えていく。これによって、より深いレベルでゲームが開発できる人材を育成していく方針だ。また、従来は入り口でつまずいてしまい、後々まで尾を引いてしまう学生もみられたが、Unityを導入することで早々に「諦めさせてしまう要素」が減らすことができた点が大きいという。

この影響がしっかりと出たのが就職状況だ。それまでは中間層の学生がゲーム業界に採用される割合は半々だった。これがUnity導入後は中間層の学生で採用される割合が急増。成績が悪く、それまではゲーム業界で内定を得るのが難しかった学生でも、採用につながる例が見られるようになってきた。「ゲームを形にしやすくなったことで、東京ゲームショウで自分たちが開発したゲームを出展し評価が得られる学生が増えました。会場で低評価を受けたことで発奮し、そこからつくり込んでコンテスト受賞まで進む学生も。学生の想いが技術を越えた瞬間、面白いゲームが開発できるようになった......、そんな事例が見られるようになってきました」(伊藤氏)。

さらに、「今後はより一層、時代にあわせた教育を検討していく必要がある」と伊藤氏は語る。その一方で、全ての変化を容認するわけではないとも言う。重要なことは、ゲーム開発に必要な要素である「伝え方」を常に検討していくこと。その第一歩として、Unityを用いた「成功体験を優先させる教育」は概ね成功だったとまとめた。


xRを総合芸術として学ぶ「NEWVIEW SCHOOL」の取り組みと、教育機関様向けカリキュラム展開

最後に登壇したのはPsychic VR Labでクリエイティブディレクターを務める八幡純和氏だ。同社はアーティストを対象としたxRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」の運営や、xR分野の研究開発を進めるかたわら、ファッションビルのパルコ、クリエイティブカンパニーのロフトワークと共同で「NEWVIEWプロジェクト」を推進している。

本プロジェクトの目的は、三次元空間を自在に操る次世代のアーティストの発掘と育成で、アワード・スクール・コミュニティの3つの分野から構成される。背景にはxRの活用領域が生活全般に広がっていくという想いがあり、そのためにはエンジニアだけでなく、アーティストの力が欠かせない。そこで人材育成からガッツリとかかわることでxR分野全般、そしてSTYLYを盛り上げていこうというわけだ。

続いて説明はNEWVIEW SCHOOLに移った。これはxRを体験デザインとしての総合芸術と捉え、そのための技法を教える教育サービスだ。講師陣にはアーティストだけでなく、放送作家、建築家、音楽家、ファッションデザイナー、編集者、作家など多様な分野で、第一線で活躍している人材を揃えている。前述したNEWVIEWアワードの入賞を目的の1つに掲げ、実践的な教育が行われているのだ。受講生は40名で、国内外から応募があった120名から厳選された。なお、2019年度は東京と京都で対面授業が行われたが、コロナ禍に見舞われた2020年度は、Zoomによるオンライン授業に移行している。

カリキュラムは大きく「テクニカル講座」と「思考と表現の講座」に分かれる。前者ではUnityとSTYLYの学習を進め、後者では作品制作に必要なセンスを学ぶ。これにより、作品制作に必要なアートとエンジニアリングの要素をバランス良く学ぶことが可能とのことだ。「様々なワークショップがあり、実際にアウトプットすること