公開延期の逆風を物ともせず、6/11(金)の公開から4週目で興行収入15億円を突破する快挙を成し遂げ、現在も大好評上映中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。2名のCGディレクターが立った本作では、これまで受け継がれてきたガンダムらしさに磨きをかけつつ、作画や美術と3DCGを見事に融和させることで、シリーズ屈指のリアリティをもった見事な画づくりを実現している。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 275(2021年7月号)に新規トピックを追加した増補版になります
※画像の色味は実際の映像とは異なる場合があります

TEXT_野澤 慧
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamda
©創通・サンライズ

  • 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
    6/11(金)より大ヒット上映中

    監督:村瀬修功
    原作:富野由悠季、矢立 肇
    脚本:むとうやすゆき
    キャラクターデザイン:pablo uchida、恩田尚之、工原しげき
    キャラクターデザイン原案:美樹本晴彦
    メカニカルデザイン:カトキハジメ、山根公利、中谷誠一、玄馬宣彦
    メカニカルデザイン原案:森木靖泰
    総作画監督:恩田尚之
    色彩設計:すずきたかこ
    CGディレクター:増尾隆幸、藤江智洋
    編集:今井大介
    音響演出:笠松広司
    録音演出:木村絵理子
    音楽:澤野弘之
    企画・製作:サンライズ
    gundam-hathaway.net
    ©創通・サンライズ

「UC NexT 0100」プロジェクトの第2弾として公開中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。ガンダムシリーズ第1作目の『機動戦士ガンダム』と同じく宇宙世紀を舞台として、第二次ネオ・ジオン戦争後のハサウェイ・ノアの人生を3部にわたり描いていく。これまでにはないリアルで厚みのある映像を目指し、藤江智洋氏・増尾隆幸氏の2名をCGディレクターとしてアサイン。『Gのレコンギスタ』をはじめとして多くのガンダム作品を支えてきた藤江氏が、モビルスーツと呼ばれるロボットのモデリングやアニメーションなど、CG全体の監修を担当。脈々と受け継がれてきた"ガンダムらしさ"をチームでつくり上げた。一方で、増尾氏の率いるチームは、冒頭のハウンゼン356便や一部の戦闘シーン、海など、作中でも特にリアリティが求められるカットを中心に手がけた。劇場アニメ『虐殺器官』を皮切りに村瀬修功氏が手がける作品を3DCG面からと共につくり上げてきた増尾氏。"動く美術"を目指して磨かれてきた背景へのこだわりは本作でもいかんなく発揮され、作画とCGの垣根を取り払うことに成功している。

左から、CGアニメーター・反田駿一氏、CGリードアニメーター・糠谷憲まさ氏、CGアニメーションディレクター・大川 威氏、CGディレクター・藤江智洋氏、CGアニメーター・山下 協氏、CGモデリング・柴田嵩也氏、CGモデリング・平井和希氏(以上、サンライズ

左から、チーフCGIデザイナー・佐藤昭宏氏、CGディレクター・増尾隆幸氏、チーフCGIデザイナー・泉川健二氏(以上、ルーデンス。現・TREE DigitalStudio

本作のフローで特徴的なのはCG作業スタート時にアニメ現場で一般的に使われているタイムシートが存在しないこと。CGが絡むカットについては、コンテが完成した時点でキャラクターやエフェクトのアタリ、背景ガイドなどほぼ全ての要素を一度CGで作成する。そうした「CGでのロケハン」をした上で作画作業に入ることが多かったという(手描き作画チームではこの段階でタイムシートが作成される)。あまりに細かくアタリが用意されているため作画チームも苦労したようだが、その甲斐あってCGと作画の境界を感じさせない驚異的な映像に仕上がっている。

<1>本作の世界観構築に寄与したモデリング

本作では初期段階からCGチームが合流。設定画を基にモデルを作成するのではなくデザイン作成と同時進行し、2016年頃から約2年間かけ、実際にCGモデルで検証しながらデザインを固めていった。その過程では、モデリング参考として、デザイナーによって粘土の原型まで用意された。実際の空間に立体造形があることで、面や線の見え方、角度、デザインのコンセプトがつかみやすく、ひと目でイメージが共有できる。また、削ったり、付け加えたりとその場で形状を変えることも、直感的だったという。

そうして立体造形にこだわって作られた本作のモデルは、ライティングでも力を発揮する。しばしば作画のテイストに合わせるための技法として、嘘の光源で光や影の回り込みを再現することがあるが、本作では極力リアルな光源での見え方を尊重。また、モデルにはシーンごとに基本となるライティングを組み込んだ。これによりカットごとのばらつきを抑え、印象を統一することができるという。最終的に各機体でアニメーション用と本番用の2種類のモデルを作成し、カット制作を進めていった。

モビルスーツの3Dモデル

▲【A】Ξ(クスィー)ガンダム。頭部のモデル【B】【C】は、あくまでも作品世界の中では敵側の立場であるという面を意識し、ガンダムらしさを排除した造形に。ラインについてはデフォルトで密度を少なく設定し、スッキリと見せている。アップ時に密度を増やす仕込みも行なったが、本編では基本的に少ないラインで統一。またルックについては、シーンによって色替えできるように色替え用テクスチャも用意された。【D】は特に注力したという、怪獣のような意匠がコンセプトの腕部。細かな演技や迫力ある見映えを実現した

▲【E】ペーネロペー。こちらはΞガンダムとは対象的に、ガンダムらしさを押し出した造形となっている。【F】のようなフライト・フォームへと変形するが、飛行機ではないことを意識したため、【G】のように生き物的な柔らかい動きが求められた

▲【H】メッサーF01型。スカートは滑空の際の姿勢制御に使用するという設定に基づき、空気抵抗が感じられるサイズ感と可動域をねらっている。【I】【J】の大型シールドは粘土造形から何度も試行錯誤した部分で、陰の出方などに関わる面取りが細かく調整されている。ちなみに裏面にはたくさんのギミックが詰め込まれているそうだ

360度空間を再現したコックピット

「本作のガンダムは過去作に比べてボリュームがあり、制作カロリーも高かったです。その甲斐あって、巨大な機体同士の競り合いは迫力あるシーンになりました」とモデリングを担当した平井和希氏も納得のモデルたち。コックピットも全天周モニター含め、3Dで作成した。これはサンライズ第1スタジオが作成したガンダムシリーズでは初の試みで、UIが3D空間に配置されるため椅子の回転もトレースできる。コンソールモニターはCG側でターゲットのみ設定しておき、撮影段階で素材の貼り込みを実施。モニターが点灯していないカットでは、GIを用いて異なる雰囲気の画づくりを行なった。また、椅子のデザインにもこだわり、人間の身体と親和性の高い形状を目指した

▲全天周モニターON時のモデルと完成カット

▲全天周モニターOFF時のモデルと完成カット

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<2>リアルとケレン味の絶妙なアニメーション

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<2>リアルとケレン味の絶妙なアニメーション

社会問題や人間同士の対立からモビルスーツの戦いまで、様々なシーンをひとつのアニメ作品として描く本作は、まるで「実写と特撮とアニメのミックス」(CGアニメーションディレクター・大川 威氏)。アニメーション制作においてもケレン味を大切にする一方で、徹底的にリアリティが追求された。モビルスーツについては、その重量感やスピード感だけでなく、機体ごとの特徴や性能の差による動きのちがいまで再現。近接戦闘などのケレン味が要求されるようなカットであっても、パース変更などの嘘は極力ついていない。またパイロットの主観カットでは、実際に目線の位置にカメラを置き、臨場感を演出。首の位置や画ブレの有無まで、前後のカットに合わせて決めている。繊細な演技にもこだわり、例えば空襲をかけるマフティーを完全に武力を伴う反政府勢力として扱う一方で、情け容赦なくマフティーを迎撃する地球連邦軍の様子を表現。「アニメとしての表現とリアリティのバランスがこれまでとは異なり、そこから生まれるテンポも通常のアニメとはちがいます。そのあたりも楽しんでもらえたら」と大川氏は語る。

緻密に設計された雲の表現

リアリティを追求する姿勢は空中戦においても徹底されている。地上が背景として映る場面では、バーチャルの地球儀を用い、高度やカメラの位置に合わせて正確に地形や街を描いた。また、機体が降下したり上昇したりする速度と時間から、各シーンの高度を計算しているというから、一連のカットに費やされる時間と手間は計り知れない。さらには、雲でさえ一連のカットで整合性が図られている

▲ガイド用雲素材。三角形のポリゴンを大量に配置して雲モデルを作成。ポリゴン同士の間隔のちがいでいくつかのバリエーションを用意した

▲ガイド用素材の指示書。高度によって雲の形状を分けて作成するよう指示が出されている。作成された高度別のムービーはコンポジットで合成され、背景作成用のガイドとなる



  • ▲ガイドを使用したアニメーション作業



  • ▲原図出し

▲完成カット。「コンテ内容を意識してレイアウト通り置けば上手くいくはずが、それでは3Dカメラのように見えず、最終的には頭の中で構成しながら作成していくこともありました。雲、モビルスーツ、その他のアタリなど様々な要素のモデルがある中でアニメーションをさせていくのは大変な作業でした」と当時の苦労をふり返るCGリードアニメーターの糠谷憲まさ氏。カットによってはBOOKだけでも数百におよぶ美術素材の中、調整を重ねて完成に至る

物理挙動を意識したファンネル・ミサイル

アニメ作品においてミサイルが登場すると、必ずと言っていいほど名前の挙がる「板野サーカス」。カットに華やかさを与える表現だけに多くの作品が参考にしている。しかし、本作ではそういったケレン味の強い表現とは異なり、現実的な挙動のミサイル表現を目指した。基本的に軌道は担当アニメーターに任されているが、物理法則から逸脱するような動きにはしない。また、あくまでも誘導ミサイルという表現にはしたくなかったため、敵を追いかけるように何度も方向を変えることは禁止したという

▲完成カット連番

▲増尾氏による軌道修正指示。タイトなスケジュールの中、複雑なカットに対して的確に指示を伝えるために、Fusion Studioを用いて動画に直接軌道を描き込み指示を出すこともあったそうだ

<3>CGの良さを活かしつつ作画と融和した背景

海などの最終画までCGで作成する背景に限らず、最終的には美術素材となる箇所についても、多くのカットでCGガイドを作成。背景は距離感まで正確に設計されており、その設定に合わせてキャラクターが歩く速度や歩数まで計算されている。表からも裏からもCGを活かしている本作だが、そんな本作の背景まわりについて増尾氏は「サンライズのガンダムシリーズは聖域みたいなもので、CGのもつリアリティは活かしつつ、その世界観から逸脱しないように気をつけています」と話す。

リアルな背景であっても、金属部分の反射や水周りのハイライトなど、どこを抑えてどこを際立たせるかという情報量の取捨選択に配慮。「ハイライトのグラデーションを短くしたり、トゥーンシェーダを使うとスッキリするなとか。そういった試行錯誤の中での発見を活かしています」(チーフCGIデザイナー・泉川健二氏)。ほかにも、モブ車のガラスも透明度をコントロールして、車内の人物は影絵のように表現。情報量のコントロールだけでなく、キャラクターの作画コストの削減にもつながっている。

"動く美術"を体現するカメラマップ

本作では約30ものカットでカメラマップを使用。美術らしくレンダリングした背景素材に対して美術チームにレタッチを加えてもらうことで、3D的なカメラワークでも違和感のない仕上がりとなっている



  • ▲キャビン内のテクスチャデザイン



  • ▲モデルのUVチェック



  • ▲コンセプトデザインのpablo uchida氏が作成したイメージボード



  • ▲レンダリングした背景ベース。GIによるライティングテストを経てこちらの工程へ



  • ▲cam1のレイアウト。このカットは複雑なため、2つのカメラマップで対応



  • ▲cam1 CGレンダリング



  • ▲cam1の美術レタッチ済みカメラマップ素材



  • ▲cam2の美術レタッチ済みカメラマップ素材

▲カット連番。この後撮影処理を経て完成へ。「3DCGで完結してしまった方が早いんですが、美術らしいシズル感を出すにはこの手法が適していると判断しました」(チーフCGIデザイナー・佐藤昭宏氏)

Houdiniを用いた夜の海

夜の海はHoudiniを使用して作成

▲Oceanのポイント作成工程。Oceanではポイントのアトリビュートを使い波の分布や見た目を詳細にコントロールできる。ディレクションに対応できるように、あらかじめポイントを複数に分けて用意した

▲Ocean Spectrum工程。波形情報を決定するためのノードは2つ作成。それぞれに先ほどのポイントを読み込ませる。強弱などの設定の異なる海面を組み合わせ、自然な海面となるように調整。また、奥にいくにつれて波を間引きシンプルな造形にすることで、手描きアニメのような印象の海を再現した

▲ベイク工程。先ほどのSpectrumをキャッシュとしてベイクし、シェーダ側でディスプレイスメント情報として読み込む。レンダリングしながら、波のスピード感などを確認・調整する。夜の海では、コンポジット時に明るさの調整がしやすいように、明るめに出力したとのこと

▲完成カットの例

Houdini FLIPで構築した昼の白波

終盤に向けて物語が大きく展開していくきっかけとなる浜辺のシーン。穏やかな海が嵐の前の静けさを演出する。そんな昼の海については、約半数のカットでHoudini FLIPが用いられている。それ以外のカットではMayaのBifrostが使用されているが、ここでは主に複雑なカットで用いられたHoudini FLIPの例をご紹介しよう



  • ▲白波の発生源の作成。Whitewater Sourceで、パーティクルの発生源、面や速度といったボリューム情報などを生成する



  • ▲Whitewater Solver でのシミュレーション。【A】で作成した情報をSolverに読み込ませてシミュレーションを行う。DepthやErosion、Repellantなどのパラメータを調節してルックを整える



  • ▲ルックの調整。シミュレーションだけで完全にルックを制御するのは難しいため、シミュレーション後にはPoint Cloud VEXで直接修正している。他のパーティクルからあまりに離れているようなパーティクルについては削除。また、Transform SOPで、白波のスケールも調整していく



  • ▲コンポジット。作成した白波素材をシーンに合成する。画像はコンポジット後の様子。CG素材を美術素材の上に重ねることで、作品に馴染んだリアルな水辺を再現した。下地の美術素材の見え方は、水による屈折なども考慮されている



  • ▲白黒テクスチャ化。こうしておくことで、この白波素材を他のカットにも流用することが可能となる



  • ▲素材を流用したカット制作。カメラが岬の上空を旋回するシーンでは、[E]の白黒テクスチャ素材を配置。効率的に制作を進めることができたようだ

「昼の海では、真面目にシミュレーションして、リアリティのある海をつくりました。砂浜に残る波の跡までこだわっています」と泉川氏も自信をのぞかせた。ちなみに、海を担当したルーデンス(現・TREE Digital Studio)では、Bifrostを使ったカット制作は本作が初めて。水の表現はHoudiniの得意とするところではあるが、それだけに頼らない制作体制構築のための挑戦だったという。今後は作品やカットに合わせて使い分けていくことができそうだ

tyFlowを活用した破壊表現

こちらでは後半のカーゴ・ピサのシーンを解説。地球に向かって落下しながら、徐々に崩壊していくカーゴ・ピサ内の様子が臨場感たっぷりに描かれている。担当したのはルーデンス(現・TREE Digital Studio)の上野雅志氏だ。

▲この崩壊の表現にはtyFlowが用いられ、その上で大きく分けて2種類の手法が採られている。まず、1つ目は「擬似的に関節をつくる」方法だ。Voronoi Fracture等を使用して、tyFlow内でオブジェクトを細かく分割し、擬似的な関節を作成する。そうして関節をもったオブジェクトに対して、衝突やフォースによる変形シミュレーションを実施。その後、tyParticle Skinモディファイヤで、別の同形状オブジェクトにシミュレーション結果を反映させる

▲tyFlow作業画面①。画像左は、関節ありのオブジェクトにシミュレーションをかけた状態。関節の隙間はVoronoi分割で作成している。画像右は、オブジェクトにtyParticle Skinを適用した状態。左画像の分割結果を、別のオブジェクトに適用している

▲Voronoi Fractureのパラメータ。このほかにも、ブロック状に分割するBrick Fractureを使用することもある。作成したい関節の形状に合わせて使い分けているそうだ。この1つ目の手法の利点は、変形しやすいオブジェクトのシミュレーション結果だけを利用できること。基のオブジェクトに切れ込みを入れずに作業ができる。主に、爆風に煽られるネットやケーブル、中央通路の金網部分など、構造全体が大きく変形する部分に使用されている。佐藤氏は「複雑な変形もある程度までは破綻なくこなせますし、動作も重すぎることはないので、トライ&エラーの多い場面では非常に重宝しました」と語る

そして、2つ目は「複数のオブジェクトを繋げる」方法だ。あらかじめ、崩壊時に折れ目となる部分ごとにオブジェクトを切り分けて作成。Bind機能でそれらをつなぎ合わせ、1つのオブジェクトとしてシミュレーションを実施する

▲シミュレーションまでのおおまかなながれ。左から、オブジェクトが切り分けられている状態、tyFlowで繋げた状態、シミュレーション後の状態だ。こちらの手法の利点は、ねらった部分以外には破壊が及ばず、強度の調整も可能なこと。鉄骨同士を溶接したような、1つの造形の中に壊れやすい部分と頑丈な部分がある構造の変形に適しているそうだ。主に中央通路周りの変形に使用されている。どちらの手法の場合でも、FFDやXフォーム等の既存モディファイヤと組み合わせることで、シミュレーション後に細かい調整が可能。緻密な画づくりが求められる本作では、この点にも大きく助けられたという

▲シミュレーション後の修正作業画面。画像左はシミュレーション後のモデル。画像右は、修正後のモデル。画像左のモデルに対して、FFD等でさらに変形させた

続いて、こちらでは崩壊するカーゴ・ピサ内で激しく舞い上がる火の粉の制作について見ていく。こちらはAfter EffectsのTrapcode Particularを使用してコンポジットで作成。カーゴ・ピサが崩壊していくアニメーションをプレビューしながら、それに合わせて画づくりを進める

▲Particularのパラメータ



  • ▲火の粉素材(奥)



  • ▲火の粉素材(中間)



  • ▲火の粉素材(手前)



  • ▲カーゴ・ピサのZDepth素材

After Effectsで作成したことで平面的な表現になってしまわないように、火の粉のレイヤーを多層化した上で、カーゴ・ピサのZDepth素材を組み合わせて構成した。ここでは火の粉の調整用マスクとして使用。3D空間と2Dエフェクトに一体感を与えている


こちらのカーゴ・ピサのシーンへは増尾氏の演出指示の下、制作が進められた

▲増尾氏による指示。サンプルキャプチャに対して、ちぎれるタイミングや方向などを、文字や記号で指示している

▲Houdiniでの修正作業画面。閉鎖空間で大量のオブジェクトが複雑な動きをするシーンのため、手描きの指示が難しい場合には、fbxファイルで出力したデータをHoudiniに読み込んで修正することも。そちらを参考にカット担当者が作業していく

こうして爆風に煽られながら引きちぎれたり崩落していく様が「シズル感のある動き」(佐藤氏)として実現。時間的には短いシーンにも関わらず、本作屈指の印象深い場面となった。なお、最終的には変形したキャットウォークが画面内に残るように修正された



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    2021上半期 珠玉のゲームグラフィックス
    定価:1,540円(税込)
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2021年6月10日