2021年6月29日(火)、フリーランスで働くアニメーターを対象にした確定申告セミナーがオンラインで開催された。本セミナーはノーヴォアカウンティングフォース税理士法人freeeの3社共同で開催されている。本稿では、3社によるセミナーの内容をまとめてレポートする。

TEXT_江連良介 / Ryosuke Edure
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamda

<1>市場規模や作品の予算のしくみを知ることがお金を考えるきっかけになる

▲アニメーション業界の市場規模

まずはじめに登壇した株式会社ノーヴォ代表の宇田英男氏は、『アニメーター起業家が陥りがちなおカネとの付き合い方』と題して、アニメーター事業を継続する際の税金に関する注意点を説明した。

宇田英男氏 株式会社ノーヴォ 代表取締役 / 株式会社スタジオコロリド ファウンダー

宇田氏はまず、アニメーション業界の市場規模について説明した。アニメーション業界全体の市場規模は2.5兆円、アニメーターたちが携わるアニメ制作の領域では3,000億円となっていることが確認できる。

「私が入った10年前で1.2兆円程度でしたので、市場規模は約2倍と非常に伸びている分野です。ただ、日本のGDPが約510兆円くらいなので、まだまだ国内外問わず成長の余地がある分野だと考えています」。

▲アニメ1話分の予算配分

また、宇田氏はテレビアニメ1話分の予算における絵づくりに直接かかわるコストを算出している。作品ごとに細かな配分は異なるが、今回の例では表の通りテレビアニメ1話分の予算の約半分が絵づくりに費やされていることがわかる。

宇田氏は、チームを少人数化して管理費などのコストを削減すれば、絵づくりに関するコストを維持しながら作家性を色濃く反映した作品をつくることが可能だと指摘している。

アニメーターは現場の業務を理解しているからといって、必ずしも作品の予算に関して精通しているわけではない。自身の収入がどのように決められているのか、その背景を知ることがお金について考えるきっかけになるだろう。

▲クリエイターはまずお金への苦手意識をなくすことが大切

最後に宇田氏は、アニメーターがお金と向き合うためには、苦手意識をなくすことが大切だと話した。

「お金の全体構造を知っていれば、苦手意識をなくすことにつなげることができます。また、クリエイティブ業界のお金の話も聞くだけで解決することは多いものです。まずは自分の身になってお金について考えていただければ嬉しいです」。

▲お金を貯めるには売上最大・経費最小を目指すべき

続いて、アカウンティングフォース税理士法人代表であり公認会計士・税理士である加瀬氏が登壇した。

加瀬 洋氏 アカウンティングフォース税理士法人 代表社員 公認会計士 / 税理士

加藤氏によると、フリーランスのクリエイターがお金を貯めるためには売上の最大化と経費の最小化を常に意識することが大切だという。

「これだけのお金を使うのであればこれだけ稼がなければと考える人がいますが、この考え方は逆なんですね。売上というのは相手によって決まってくるので、自分ではコントロールできません。収入に見合った支出をしっかり計算し、コントロールすることが大事です」。

支出をコントロールするには、自分の収支を見える化することが必須だ。とは言え、日頃からお金の管理をするのは思いのほか面倒なものだ。そこで加藤氏は、テクノロジーを活用して素早く正確に記録できるフローを構築することが見える化のポイントだと述べている。

▲お金の管理に見える化は必須

「現金で支払いをしていると根拠資料の管理に手間がかかります。しかし、クレジットカードによる支払いであれば、情報を自動でキャッチアップできます。さらに、記録したデータは極限まで自動連携しましょう。銀行の通帳やカードの情報を会計システムに連携することで、データをインポートする手間も省けます」。

▲家事関連費用の経費計上には要注意

続いて話は経費の考え方に移った。経費は事業に関連する支出全てであり、脱税と節税の境目は社会通念に逸脱しないかどうかだ。特に注意すべきは事業関連費用であり、家賃や水道光熱費などの支出は経費計上が可能だが、按分計算が必要になる。社会通念に照らし合わせて妥当な按分、計上が必要だ。

▲経費になるかどうかの具体的な判断のポイント

加瀬氏によると、経費として処理するか否かを判断する際は、2つの問いに照らし合わせて考えると良いという。

「1つはその支出は仕事をしていなかったら発生していないか、もう1つは私的な支出と区別できるかです。どちらにもイェスと答えられる場合は、経費として計上して問題ありません」。

▲経費計上は事業との関連性が問われる

例えば、美容院で散髪をした際の支出は、仕事がなくても必要な支出でありプライベートなものと切り離すことができないため、経費として認められる可能性は低い。

後半は青色申告による控除について解説が行われた。青色申告の大きなメリットは主に3つだ。

▲青色申告のメリット

1つ目は、青色申告控除として最大65万円の控除が活用できる点だ。場合によってはこれだけで10万円以上節税になる人もいる。

2つ目は、一定の条件をクリアすれば家族への給与支払い分を全額経費として計上できる点。こちらも適用となれば10万円以上節税となるケースがある。

3つ目は、赤字を繰越できる点だ。例えば、事業立ち上げ初年度に100万円の赤字が発生し、翌年に300万円の黒字を出した場合、昨年の赤字分を繰越して200万円で申告をすることが可能だ。これにより、翌年の税金を押さえることができる。

確定申告の該当者であれば、これらの制度を最大限活用するべきだろう。

<2>テクノロジーで入力作業を大幅カット、収支の管理から申告業務までfreeeを100%活用すべし

最後に登壇したのはfreee株式会社マネージャーの坂田氏だ。坂田氏からは主に会計ソフトfreeeを使った確定申告のフローや便利な活用方法についてレクチャーがあった。

坂田佑馬氏 freee株式会社 アドバイザー事業部 東日本パートナーサクセスチーム マネージャー

▲坂田氏のプロフィール

従来の確定申告までの業務フローでは、支出に関する各種書類を収集し、入力と修正を繰り返した後、ようやく財務諸表を完成させるという煩雑なフローとなっていた。入力や修正が面倒なため、結局1年間の書類を貯めこんでしまい、申告期限が迫って慌てて作業を行うことになる。

▲従来の確定申告までの業務フロー

これらの問題点を解消するのが会計ソフトのfreeeだ。「業務フローのうち収集・入力・修正作業をできる限りなくすことで、自分の経営状況の見える化をサポートしています」と坂田氏は語る。

▲収集・入力・修正業務をなくして経営を見える化する

具体的に、freeeは2つのテクノロジーを用いてこれらの業務効率化を支援している。

1つは自動仕分けとOCRだ。自動仕分けは預金やクレジットカードのデータなどをAIが自動で仕分ける機能のことであり、OCRはレシートなどの画像を認識して仕分けをする機能のこと。これらの機能を用いることで手作業による入力や修正作業を大幅に削減できる。

2つ目はERPであり、freee上で発行した請求書の内容が会計帳簿の売上として計上されるようなしくみだ。

▲効率化をもたらすテクノロジー

freeeの調査によると、8割を超えるユーザーが入力作業が50%以上効率化したと回答しているという。「うまく会計ソフトを使って記帳を自動化するしくみをつくることで、現在の自分のお金の状況を客観的に把握することができます。これにより、お金に関するさまざまな意思決定を楽にすることが可能です」(坂田氏)。

▲freeeの会計ソフトでは大幅な業務効率化が期待できる

3者の登壇後は参加者からのお金の悩みや税に関する質疑応答がなされるなど、アニメーターにとって終始有益なセミナーとなった。