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6月25日(土)、九州大学芸術工学部大橋キャンパスにて、マウスコンピューターpresents「CGWORLD Entry LIVE NEXT」が開催された。テーマは「表現をひとつむこうの次元に」。
3DCGの制作環境や最先端の表現に関するトピックスはもとより、就職活動やポートフォリオ作成のコツなど、第一線で活躍するゲストスピーカーによるトークやアドバイスに参加者は夢中で聞き入っていた。当日はマウスコンピューターの高性能ワークステーションをはじめとした、3DCG・映像編集向けマシンの展示も行われ、内容充実のイベントとなった。当日の様子をレポートする。
▲マウスコンピューター製品展示コーナーの様子。3DCG・VR・4K映像編集など高負荷処理対応の高性能ワークステーションと、扱い易さにこだわったクリエイター向けPC、DAIVシリーズが紹介された。本イベント登壇の各社も用いている機材とあり、来場学生も興味津々だ
セッション01
『進化し続けるCG技術とテクノロジー、進化し続けるModelingCafe 』
▲北田栄二氏(ModelingCafe 福岡スタジオ代表)
コンセプトデザインとモデリングに特化した制作会社、ModelingCafe。『KINGS GLAIVE FINAL FANTASY XV』『シン・ゴジラ』『TOYOTA プリウス擬人化プロジェクト映像』他、ゲーム、映画、CMなどジャンルを問わず数々の話題作に携わっている。同社福岡スタジオ代表の北田栄二氏は、自身のキャリアや海外での就労経験をもとにしながら、「学生時代はツールの習熟だけに固執しないでほしい」と強調。
「ソフトウェアは、あくまでも表現したいことをかたちにするための手段。特定のソフトのオペレーションをどんなに覚えても、カッコいいものをつくることができるかどうかは別です」と語る北田氏は、流行の移り変わりの激しいソフトウェアに依存した技術ではなく、先人たちによって長年培われてきた黄金比や三点照明といったアートの基礎を築くことの重要性を説いた。
セッションの後半ではModelingCafeのコンセプトと制作環境が紹介された。ジャンルを問わず、ニーズに合った最高のアセットを提供することを企業理念とする同社では、スタッフにも最短の時間で最良のクオリティを生み出す努力が求められるのだという。
「規定時間を超えて働くことをスタッフに認めていません。その代わり、決められた時間の中で最良の結果を出せるように常に方法を模索するよう、指導しています」と語る。こうした合理性追求の姿勢は同社の制作環境にも反映されている。「表現力や作業効率の向上につながる設備投資は惜しみません。新しいツールの検証や導入にも積極的です」と語るように、Maya、3ds Maxといった業界標準の3DCGツールの他に、ZBrush、MARI、Substance Designer、Substance Painterといったツールを案件やアーティストの職種、スタイルに合わせ、柔軟に取り入れているそうだ。
3DCGを用いた高品質な表現を追及するためには、伝統的なアートの技法を習熟するとともに、日ごろから最先端のソフトウェアに慣れ親しんでおくこと、さらにはこうした最先端の3DCGツールを使いこなすための適切なハードウェアを整備しておく必要性があるといえるだろう。
▲ModelingCafeで導入されているソフトウェアの一覧
▲ModelingCafe(東京・福岡)、AnimationCafeでは高いコストパフォーマンスと拡張性を理由として、マウスコンピューター製品が積極的に導入されている。
「AnimationCafeの職種別マシン構成を徹底取材!」もぜひ参照してもらいたい
セッション02
プロダクション&教育機関クロストーク
「今現場で求められる人物像とは?学生時代に必要な教育・環境」
▲壇上左から尾形美幸(ボーンデジタル)、小倉以索氏(デジタルハリウッド)、小倉裕太氏(東映アニメーション 企画製作本部 デジタル映像部)、北田栄二氏
セッション02には北田栄二氏に加え、小倉裕太氏、小倉以索氏、尾形美幸の4名が登壇した。前半のテーマは「学生時代に必要なPCとは?」。
モデレーターの尾形が登壇者それぞれに対し、PC自作経験について質問を投げかけると、全員が「自作経験あり」と回答した。登壇者たちの学生時代、CG制作をおこなうには、一般的なPCではスペックが不十分だったという。そのため自ら必要なパーツをカスタマイズしてハイパフォーマンスなPCを自作する必要性があったという。その過程で必然的にハードウェアの知識も培われたとのことだ。一方で、近年の若手の傾向について小倉以索氏は「PCを自作する学生は少なくなった」と指摘する。尾形も「若い世代になればなるほど、ハードウェアに対する知識や理解が浅くなっていると感じる」と語った。一般的なPCのスペック向上に伴い、知識がなくとも3DCG制作が可能となったことの裏返しとも言えるだろう。だが、ハードウェアに関する知識は持っておいたほうがベター。知識さえあればBTOでPCを購入する際にも、自分にとって最適な構成を選択することができるからだ。
また、ハードウェアのトピックに関連して、ModelingCafeと東映アニメーションで活躍中の若手アーティストが学生時代に使っていたPC、デジタルハリウッドの学生用PCのスペックについて紹介された(下図参照)。CPUはCore i7以上、メモリは16GB以上と、いずれもハイスペックなPCを用いていることがうかがえる。一方で、使用ソフトや志望業界の違いによる構成の変化も見られた。
コンテンツが高解像度・高品質化の一途を辿る中、業界就職を目指す若手にも、目的に応じた必要なPCを選ぶための最低限のハードウェアの知識が必要だといえるだろう。
▲東映アニメーション、ModelingCafe入社1年目社員が学生時代に用いていたPC、 デジタルハリウッドが学生向けに推奨している作品制作用PCのスペック表。デジタルハリウッドでは、リアルタイムレンダリングへの対応やゲームエンジンの使用を想定し、GeForceを選択。東映アニメーション若手スタッフの出身校では、高負荷な処理を必要とするHoudiniやNUKEを用いた映像制作がカリキュラムに組み込まれているため、これらをストレスなく動かせるよう、CPUにXeonを積んだハイスペックなマシンが導入されている
セッション03
『正解するカド』Mayaで挑むセルルックTVシリーズCGアニメ
▲<左から>加藤康弘氏(東映アニメーション 企画製作本部 デジタル映像部)、小倉裕太氏
セッション03では、東映アニメーションがTVシリーズでセルルックのフルCGキャラクター表現に初挑戦する『正解するカド』のPVを取り上げ、ワークフローや各工程における職種間の連携、キャラクターや背景表現についてなど、制作現場の舞台裏について語られた。同作品のCGディレクターを務めた加藤康弘氏(東映アニメーション 企画製作本部 デジタル映像部)、セッション02に続いて小倉裕太氏のふたりが登壇した。
近年では、フル3DCGのアニメ作品が増加しているが、『正解するカド』は、あえて作画と3DCGのハイブリッドで制作されている。東映アニメーションが長きにわたって培ってきた作画のノウハウと最新のCG技術を掛け合わせ、独自のアプローチでアニメの世界に新風を巻き起こそうとする同社の意欲作だ。加藤氏は「双方のメリットを生かすための試み。ある意味で、とても贅沢な作品」と語る。基本的なワークフローは従来のアニメ作品との共通項もあるが、キャラクターのモデリングや本作品の特徴的モチーフである3Dフラクタルによる「カド」の表現など、加藤氏の解説からはCG工程における綿密な作業や検証が行われたことが伺えた。同作品の絵コンテやラフモデルなど、ふだんはなかなか目にすることができない資料もふんだんに公開され、参加者にとって有意義な時間となった。
▲『正解するカド』Teaser Trailer 02
▲本セッションでは『正解するカド』の絵コンテも紹介された。見る人を作品の世界観に没入させるために、カメラの設定が必ず誰かの視点として設定されている。こうした情報を絵コンテからくみ取り、世界観を構築。作画であれCGであれ、どのような手法をとるにしても、演出側がいかに見せたいかを咀嚼することは作品世界をつくり上げていく上で欠かせない
©TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI
▲セルルックの作品の場合、最も留意しなければならないのが仕上げ作業である。キャラクターなら、洋服のシワやささいな動きなど、作画なら無意識につくるようなニュアンスやディテールであっても、CGでは意識的につくり込んでいく必要があるからだ。この作業を効率的に進めるために、本作品では「3DTP(TP:仕上げ作業)」という工程を設け、線の太さや影の落ち方など、レンダリングやレタッチによって細部を整えていく。画像は本作の象徴的なキャラクター、ヤハクィザシュニナの仕上げ前(左)、仕上げ後(右)の比較
©TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI
本作品のキーでもある「カド」の表現には、3Dフラクタルを採用。マンデルバルブやマンデルボックスといった数式を利用し、Houdiniでの再現が試みられた(上)。しかしレンダリングしたところ1枚10時間、軽量化させても3時間を超えることが判明。TVシリーズの量産体制に求められるスピードでレンダリングするため、ゲームエンジンのUnityが選ばれたという(下)
©TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI
▲本作品を特徴づける3Dフラクタル「カド」の制作にはマウスコンピューターのLITTLEGEARが選択された。その理由としては、筐体がコンパクトでありながらハイパワーなCPU・GPUが搭載可能なことと、SSD+HDD+光学ドライブの3つのドライブを搭載することが可能なためだという。さらにはUnity開発に求められる高速なリアルタイム性能や、サイズの大きなコンテンツを格納できる大容量のHDD、デモなどを行う際に便利な優れた可搬性など、本機は様々な要求に応えることのできるスペックを有している。
TEXT_菅原淳子(Playce)
PHOTO_弘田充
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