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少し以前の話になるが、「GDC(Game Developers Conference) 2012」 にてオートデスクはゲーム開発用ミドルウェアブランド「GAMEWARE」最新バージョンに関する様々な発表を行なった。ゲーム専門のメディアでは既に情報が流れているので既知の方も多いかと思うが、今回は3DCG制作者向けに改めて各製品の最新バージョンのトピックをまとめてみた。
オートデスクの3DCG製品とゲーム開発をシームレスに繋ぐ
オートデスクの3DCGアニメーション製品の最新バージョンと共に紹介されたのが、ゲーム開発用ミドルウェア製品群 「Autodesk GAMEWARE」 だ。オートデスクでは、2008年の Kynagon 買収以降、Illuminate Lab(Beast開発元)、Scaleform、GRIP technology といったミドルウェアのベンダーを次々と傘下に収めて、製品を拡充してきた。同社としては、自社の 3DCG ソフトウェアを用いたゲーム開発において、各 3DCG ソフトウェアの機能を最大限利用できるミドルウェアを開発することで、ゲームオーサリングをより効率化させることが目的だという。
今回、Autodesk GAME WARE 最新版としてリリースされたのは、Beast 2013、Scaleform 4.1、Kynapse 2013、Cognition 2013、Population 2013、Human IK 2013 の 6ツールだ。それぞれにおいて、Autodesk ブランドの各種 3DCG ソフトウェアと連携をさらに向上させたという。
1.Beast 2013
Beast 2013は、Unity や Unreal といったゲームエンジンに対応した、グローバルイルミネーションレンダラだ。インタラクティブな設定に応じて、リアルなライトマップを生成することができる。Beast 2013 からは、Maya へのインテグレーションが可能になっており、Maya でのシーン作成時も、Beast 2013 のレンダラを使用することで、グローバルイルミネーションが計算された状態で、高速にプレビューすることが可能になっている。
Autodesk Maya 2013 にインテグレードされた状態の Beast 2013
また、Maya上でライティングを編集し、即座にライトマップを生成することも可能だ。ライトマップ作成時に、モデルのUVに不具合があっても、MayaのUVエディターを使って修正することができるため、アーティストは、ツールを移動することなしに、ゲーム用のライトマップの修正などを行うことができるようになっている。
Autodesk Beast Installation & Usage
Autodesk Beast-GlobalIllumination Visualization with eRnsT
2.Scalform 4.1
Scalform4.1 は、Adobe の FLASH を使用して、ゲーム内で使用するユーザーインターフェイスなどをデザインするためのツールだ。UDK(Unreal Development Kit)、Unity 3.5 にインテグレーションすることができるようになっている。現在1000タイトル以上の使用実績があるミドルウェアだ。3D的な動きのあるUIなど作成したい場合には非常に使用しやすいツールだ。4.1の新機能としては AMP が、2.0 にバージョンアップされ、GPU プロファイリングの改良により、メッシュキャッシュとテクスチャサイズの可視化することができるようになっている。さらに GFxExport の機能は、アーティストでも簡単に使用できるツールとしてアップデートされている。XML に関しても、最新の XML(E4X)APIs クラスをサポートしている。
GFx Export によるユーザーインターフェイス生成。各プラットフォームに最適化した状態で、ユーザーインターフェイス用のテクスチャを生成することができる
また、ActionScript 3 によるビットマップデータのピクセル情報にもアクセスすることができるようになっている。対応するデバイスに関しても、Android、iOS、Windows 8 など、オールラウンドで対応している。今年の後半には、Mobile Game Kit として、サンプルコードの配布が予定されている。Scalform は、ゲームのインターフェイスを作成するだけではなく、FLASH で作成したゲームを、GFx エンジンによる、Android や iOS 用のゲームアプリとしてコンバートすること可能で、FLASH ゲームのクリエイターにとっても便利なツールだ。
Scaleform AMP Profiler 2.0 の画面。実行時のメッシュキャッシュやテクスチャサイズなどの状態をプロファイリングし可視化してリアルタイムで確認することができる
ScaleformではPCだけでなく、iOS や Android といったモバイルデバイスのゲーム用のインターフェイスも作成することが可能だ
Autodesk Scalform4.0
Scalform 3D Interface(3Di)
3.Kynapse 2013
Kynapse 2013 は、パスファインディングもしくは空間認識を使用したローレベルの AI システムだ。すでに 100 タイトル以上で利用されている実績のあるミドルウェアだ。2013 では、キャラクターの移動範囲などを設定したパスや空間設定が、他のシミュレーションの結果に応じて、動的に変化していく Dynamic Graph Update の機能や、生成範囲を任意に設定することができるナビゲーションメッシュの生成処理の高速化、生成されたナビゲーションメッシュをランタイムで再生して、リアルタイムで確認することができるビジュアルデバッガのサポートなど、全体的に処理の高速化、作業の効率化を主眼に置いたアップデートとなっている。
Kynapse 2013 を使ってキャラクターを広範囲で動かしている状態
Autodesk Kynapse Material Terrain Type
Autodesk Kynapse Path Data Genaration
Autodesk Kynapse Intgegration into Ureal Engine3
4.Cognition 2013
Cognition 2013 は、ハイレベル AI 用のビジュアルプログラミングシステムだ。様々なビヘイビアのブロックを繋ぎながらツリー構造を作成しながら、キャラクタの挙動を設定していく。ビヘイビアのブロックには、条件文や各種設定を入れることができ、アニメーションとの連携なども設定することが可能だ。各ノードに関しては Unreal Script や C++で独自のノードを作成して組み込むこともできる。動きの確認には UNREAL ENGINE を使用してリアルタイムでデバッグが可能になっている。 ボスキャラやノンプレイヤーキャラクターの挙動を設定する時に利用されるツールとなっている。
Cognition 2013
Cognition 2013 の挙動設定画面
5.Population 2013
Population 2013 は、ゲーム内に登場する遠景用の大量のエキストラモデルの動きを設定するためのミドルウェアだ。街中のような背景の中で動き回るデジタルエキストラに対して、徘徊行動や衝突回避運動などを設定していくことが可能だ。これらの動きは、搭載されたFlowシステムによって簡単に動きの設定を行うことができるようになっている。行動の始点と終点を設定するだけで、設定した方向に逃げるなどの動きも簡単にシミュレーションさせることができる。Flowの設定は UREAL ENGINE を使って直感的に操作が行えるようになっている。非常にローコストでありながら存在間のあるAIシステムを構築することが可能なツールだ。
Population 2013を使ってステージに存在するエキストラキャラクターを動かしている
6.HumanIK 2013
HumanIK 2013 は、人型キャラクターの動きを正確に再現するバイオメカニカルランタイム IK システムだ。Autodesk MotionBuilder のコアを抽出しており、ミドルウェアとして動作させるために最適化されているため、非常に処理が軽く、環境に応じたキャラクターのリアクションなどを容易に作成することが可能だという。異なったプロポーションのキャラクター間でのモーションリターゲットの機能も用意されている。長年 MotionBuilder などで培ってきたアニメーション技術を使ったクオリティの高いリターゲット技術で、モーションデータを移植することが可能だ。
Human IK 2013
Autodesk Human IK Demonstration
Autodesk Human IK Features
「Project Skyline」最新動向
GAMEWARE バージョン 2013 リリースと同時に、前バージョンの頃から継続中の 「Project Skyline」 の最新状況もアップデートされた。Project Skyline はこれまで紹介した 6 つのミドルウェアで作成した素材をまとめて、オリジナルのゲームタイトルを開発することを目指した、いわばそのパフォーマンスを実証しようという自主プレゼンテーションと言える。
タイトル開発は Maya をベースに、専用のインターフェイスをかぶせて使いやすくなっている。タイムトレースは、ランタイムとスカイラインは常に交信をしており、ランタイムで行われている状態をスカイライン上でレコードしたり、後で再生したりすることができるようになっている。さらにステートマシンをサポートしており、状態の変位を可視化してコントロールすることが可能だ。設定した条件における動きがおかしいような場合でも、Maya をベースにしたツールであるため、その場でFカーブを調整して、アニメーションデータを修正することができる。修正されたデータは自動的にランタイムへ転送され、ランタイム上で確認することができるようになっている。修正する範囲も、修正したい部分だけにマスキングして、そこだけを修正することが可能だ。
本プロジェクトでは UNREAL ENGINE などの今日主流のゲームエンジンに組み込んで使用できるようにしており、自分たちの開発環境に合わせたワークフローを構築することもアピールしていた。
Project Skyline では、『HYPERSPACE MADNESS』(開発中)というオリジナルのゲームタイトル開発を通して、GAMEWARE 各ツールの機能検証が行われている
Project Skyline 概要
TEXT_大河原浩一(Bit Pranks)
Autodesk GAMEWARE
オートデスク社のゲーム開発用ミドルウェアブランド「GAMEWARE」公式サイト。一部、日本語化もされているので、一度アクセスしてみるといいだろう。
http://gameware.autodesk.com/