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残暑も終わり秋が近づいた9月10日(土)、東京のCGプロダクションへの就職を希望する地方在住の学生に向けたイベント「クリ探 in 仙台」が開催された。 ILCAの岩下みどり氏(ディレクター/プロデューサー)の「全国各地で行なっているクリ探が仙台にもやって来ました!」という第一声から始まった本イベント。 大阪(第1回)、名古屋(第2回)、福岡(第3回)に続く東北の地で「未来のCGクリエイター」を発掘すべく、東京のCGプロダクション4社(神央薬品スパイスドロイズエヌ・デザイン)が参加した。 3DCG業界の現状や展望などをテーマにしたパネルディスカッション形式のトークで盛り上がったあと、各プロダクションのメインスタッフが個別にポートフォリオの講評、具体的な面談をする、といった流れで進められた。

TEXT_峯沢★琢也 / Takuya★Minezawa
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

■セッション1「プロダクションの業種のコト」

最初のセッション「プロダクションの業種のコト」では、各社がどのような仕事を手がけているのか、どういった人物を求めているのかがパネルディスカッション形式で紹介された。

トップバッターの神央薬品は、代表のノブタ コウイチ氏がCGアニメーター出身という縁もありセットアップとアニメーションをメインに手がけているCGプロダクションだ。 主に手がけている案件の推移としては、2~3年前までは遊技機系の案件が半分ほどを占めていたが今年は控えめになっており、ゲーム映像の比率が約半分となり、大きく変化しているという。 映画の案件も増加しているそうで、『シン・ゴジラ』『ONE PIECE FILM GOLD』『MOOM』といった著名な大型案件に関わっている。 制作内容も実写VFXからアニメ作品の3DCGパート、フル3DCGアニメーション作品と多岐に渡っている。

  • ノブタ コウイチ氏
    (代表取締役/神央薬品)

次に紹介されたスパイスは、今年で32年目を迎えるスパイスグループの一員として、20年の歴史をもつCGプロダクションだ。 グループ全体としてはグラフィックデザインやWeb制作、CMの企画を手がける部門があり、モーションキャプチャの機材販売も行うなど幅広く展開している。 グループ内で横断的にCG部とコラボレーションしている点は多様な機能をもつ同社ならではの特徴だ。 3年ほど前までは案件全体の半分ほどを遊技機が占めていたが、現在はイベント映像、VR&AR、ゲーム関連の案件が増加している。 スタッフは基本的にジェネラリストを採用をしており、女性の割合も多くヨガ教室などの社内イベントも活発に行なっているそうだ。

  • 喜藤健介氏
    (グループヘッド・ディレクター/スパイス)

三番目に紹介されたドロイズは実写合成などの映像制作を得意としており、TVCMやアーティストのライブ映像、PVの制作を手がけている。 元々CMの3DCG制作をメインにしていたこともあって、モーターショーなどのイベントやCMの案件が特に多いといい、大手メーカーの製品プロモーションを手がける機会もあるそうだ。 遊技機案件も受注することはあるが今年はその機会がなく、映画の案件が多かったという。

  • 山浦正裕氏
    (執行役員/ドロイズ)

最後に紹介されたのは、「ずばり映画をつくりたい」というエヌ・デザインだ。遊技機やゲームの映像、フル3DCG、TV番組と幅広く制作しているが、その言葉の通り、手がけている作品も劇場作品のVFXが多いそうだ。 他3社と異なるのは基本的に分業制を敷いており、モデリング、アニメーション、エフェクトとチームに分かれている点だ。 また福利厚生にも力を入れており、社内行事(登山、マラソン他)やクラブ活動(珈琲クラブ、自転車クラブ他)も盛んだ。 ゆくゆくはハリウッド映画の制作に参画することがひとつの目標になっており、制作体制強化のためスタッフ増加に力を入れている。

  • 阿部広久氏
    (管理部 主任/エヌ・デザイン)

手がけている案件に関しては、各社ともに遊技機案件の比率を下げている印象で、その代わりに劇場作品やフル3DCGアニメーション、VRの案件が増えていて、特に劇場作品の案件の増加が顕著だとのことだ。

求められる人材については、尺が短く納期がタイトなCM案件ではゼネラリストが求められる一方、劇場作品など長期スケジュールの案件では分業制が有利なので、専門分野に特化している人が求められるのではないかとの意見があった。 「分業制の良さは前後の工程を考えながら自分の工程に専念できるという点。反面、小回りはききませんね」とエヌ・デザイン阿部氏は分析する。 また「どの3DCG会社に就職したいか考える時に、その会社が手がけた作品を重要視する傾向がありますが、自分の得意な分野を活かせるかという点も考えた方が良いかもしれません」と神央薬品ノブタ氏はアドバイスした。

■セッション2「東京のCG業界で働くコト」

セッション2では「東京で働くことの魅力」についてのパネルディスカッションが展開された。 仙台で開催された本イベントでは仙台市内からの参加者が約半数、ほかは宮城県内と近隣の県からの参加がほとんどで、ほぼ満席であった当日の盛況ぶりから東京の3DCG業界への関心の高さを実感できた。

東京と地方の大きな違いとして、プロダクションの数が挙げられた。 東京には約350社ものCG会社がある(※)と具体的な社数で語られたことで、一大CGプロダクション圏であることを再認識させられた。 そのように、多くの企業がひしめき合う中で、お互いにどのような関係にあるのかを各社が語った。 「競合していそうな会社同士でも、技術的な交流や人的な貸し借りを含めて実は意外に仲が良いです(笑)。弊社は50社ほどとおつきあいがありますね」と語るのは神央薬品のノブタ氏。 「CM業界は実は横の繋がりはあまりないですね。でも映像のお仕事が増えていくなかで、徐々に横との繋がりができてきて、現在は30社程度とおつきあいがあります。」と、ドロイズ山浦氏は語る。 喜藤氏に代わり、セッション2から登壇したスパイス林氏は「ウチではドロイズさんからの依頼もありますよ。モーションキャプチャやリアルタイムの部分などでご協力させていただいています。やはりデータの受け渡しやクオリティライン、スピードの部分はお互い交流がないとわかりませんね」と話す。 エヌ・デザイン阿部氏もまた「横の繋がりはとても大事にしています。日々の案件で"人が足りない"という場合に非常に助かる(笑)」と言い、東京の3DCG業界では横の繋がりが大切ということで意見が一致した。
※月刊誌CGWORLD 216号付録「CGプロダクション年鑑 2016」をもとに算出

  • 林 丈二氏
    (専務取締役/スパイス)

また、従業員の通勤時間については、各社ともに30分強という企業が多く、気になる家賃も東京だからと言って高いところばかりではなく、安い場所もあるので困ることはないだろうとのこと。 最後に仙台出身だというスパイス林氏は「"絶対にCGをやりたい"という気持ちさえあれば東京で働くことは可能だと思います。東京ではセミナーや説明会が頻繁に開催されますし、 なにより会社が多いので選択肢の幅が広く、人との出会いの機会が多いです」と東京の3DCG業界で働くことの魅力を語った。

■セッション3「採用されるコト」

最後のセッションでは、面接やポートフォリオなど「人材採用」に関わる点について、各社の方針が紹介された。 まず、各社の採用活動の流れが語られたが、企業毎に細かい部分では違いがあるものの、まず主要スタッフがポートフォリオと履歴書で書類審査を行なった後、合格者のみがその後の面接に進むケースが多いという。 ポートフォリオの中身に関しては、ほかの人と同じように見えてしまわないよう、"自分が3DCGで本当は何をつくりたいのか?"という部分で特色やひっかかりをつくっておくことも採用側の目に留まる要素になっており、学校の課題にしても「見る人を楽しませる」という点でプラスアルファをしてまとめて欲しいと語っていた。 学生のポートフォリオではグループ制作の作品も多く、その際にはどの部分をどの程度担当したか、などの情報も加えると良い、という意見が相次いだ。


プロダクションによって分業制をとっていたり、ゼネラリスト制であったりと違いがあるため、求められるスキルが変わってくる。 そのため"アニメーターになりたい"、"モデラーとして生きていきたい"、"ゼネラリストとして働きたい"といった希望をかなえたければ、きちんと企業情報を収集してマッチする企業を探してほしいと各社とも口を揃えた。

新人スタッフに関しては未来への投資という考えの元に、伸びしろを大事にしていて、各社とも研修や一定期間のトレーニングのカリキュラムを組んで無理がないように人材育成を計画しているという点も注目すべきだろう。 具体的には健康に関するケアであったり、神央薬品では新人は工数にカウントせずに周囲のスタッフが注視しながら育成をする、ドロイズでははじめの2~3週間は研修を行い、配属後にも人事スタッフが月に一度の面談を実施している。 スパイスではタレントや広告写真等の機密性の非常に高い情報に触れるため、社内で情報トレーニングと新人研修を実施、その後もスタッフの適正を見つつ長く自信をもって働けるようにケアをしているとのこと。 エヌ・デザインは最初はデッサンなどのアナログの知識を教育、その後にひと通りの作業を経験したあとに各所に配属しつつ適正を判断しながら少しずつ実務へ慣れてもらうようにしているという。

3DCG業界を目指す若者に向けてのメッセージと総括

セッションの最後には、各社から3DCG業界を目指す若者に向けてのメッセージが語られた。

「もし3DCGを仕事にしたいのなら、とりあえずやってみてください。3DCGをやって死ぬことはないですし(笑)。ちょっと東京で暮らしてみようかな......というのもいいし、趣味のレベルからプロのレベルになれるように頑張ってほしいです!」
(神央薬品 ノブタ氏)

「3DCGの会社に入っても一般的な人からの視点、技術・興味の面からの視点とさまざまな視点が必要になってきます。つくることも大事なのですが、観ることも大事なんですね。それも映像業界で働くには大切なことだと思います」
(ドロイズ 山浦氏)

「ものの見方を変えて観るということが大事です。意識していなければ、周囲の人と同じことを考えてしまいがちなので。また、3DCGの技術やツールの話だけではなく様々なことについて、子供にもわかるように人に伝えることをこころがけて理解するようにしてください。理解力を付ければ、仲間と一緒に仕事がやりやすくなります! 最後に怖がらずにCGプロダクションにアタックしてください(笑)!」
(スパイス 林氏)

「楽しむことが一番大事かなと! 作品やポートフォリオ、履歴書にそれが出ると思うんですよね。ですので楽しみながらものづくりをしていただくと良いと思います!」
(エヌ・デザイン 阿部氏)

セッションの後も参加者からの質疑応答が相次ぎ、東京の3DCG業界への関心の高さが改めてうかがえた。


本イベントは就職や3DCG業界についてだけでなく、ソフトウェアや業界内のキャリア形成に関しても現場の意見を聞ける絶好の機会になったように思える。 あらかじめ用意したポートフォリオを持込み、実際に講評を受ける学生や、静止画だけでなくスマートフォンに動画作品を入れてきて講評してもらう学生などもおり、ざっくばらんな話から実際に就職に繋がるヒントまで、各企業のブースには待機の列ができるほど多くの人が集まっていた。


今後も様々な分野に広がる3DCG業界。外からでは実情の見えにくい東京の3DCG業界の生の声を聞くことができた本イベントは、新たに業界を目指す若者に大きな刺激を与えてくれたと強く実感することができた。

  • 「クリ探 in 仙台」

    開催日:2016年9月10日(土)
    時間:13:30~18:00(開場13:00)
    会場:仙台駅前貸会議室
    〒980-0021 仙台市青葉区中央1丁目10番1号 ヒューモス5 8F
    参加対象:学生(専門学校生、大学生など)エンターテイメント業界を目指す方、教職員場
    参加費:無料(事前登録制)