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Fermi アーキテクチャを採用した最新世代の NVIDIA Quadro シリーズ に待望のミドルレンジ/エントリーモデルが登場。前世代モデル比でワンランク上のレンジに匹敵すると評される、その実力はいかに? Quadro FXシリーズ、GeForce と比較検証し、活用度を探る。
テスト環境:DELL PRECISION T5500(3)
CPU:インテル Xeonプロセッサ E5630(2.53GHz)/OS:Windows 7 Pro 64bit/メモリ:12GB/HDD:320GB
協力:デル株式会社
ワンランク上のリアルタイム性能
NVIDIA Quadro(以下、Quadro)ブランドは世代を重ねるごとに知名度と信頼を獲得してきた。そして昨年 9 月にリリースされたQuadro 5000/4000 からは、さらに新たな進化を遂げたと言えるだろう。その進化のポイントは次世代 CUDA と謳われる Fermi アーキテクチャ を採用している点だが、ここでは11月中旬より出荷がスタートしたミドルレンジ/エントリーモデルである Quadro 2000/600 の実力と有益性を検証していきたい。
Fermi アーキテクチャは、元々 CPU で行なっていたレイトレーシング、カラーグレーディング、物理演算等のグラフィック系作業を GPU 内で行わせるというものである。元来映像をディスプレイに映すための装置であったグラフィックスボードだが、今日では CPU の演算を凌駕する機能を兼ね備え、PC 全体の処理スピードを向上させるといった役割まで担うようになった。エントリー/ミドルレンジとして位置づけられるこの 2 つのグラフィックスボードも、その構成からは高いパフォーマンスが期待される。
まず目につくのはコア数の増加である。それぞれの対応グレードで約 2〜3 倍に増えており、以前の上位モデルと同等であることが判る。GPU の構造自体は既存の Fermi 製品とほぼ同じで、API としては DirectX 11、OpenGL 4.1 世代となるメモリ容量はこれまでの FX シリーズに比べても拡大され、Quadro 2000 は 1GB(128bit GDDR5)、Quadro 600 は 1GB(128bit DDR3)を搭載している。メモリ容量を増やしたことで、ローカルで大規模な演算処理が可能となっている。その他のポイントとしては、ハイエンドモデル Quadro 6000/5000はECC(誤り訂正符号)に対応しているのも大きな売りであったが、Quadro 2000/600 は非対応である。
こうした Fermi アーキテクチャを採用した Quadro の登場によって、CG におけるリアルタイムレンダリングの状況も整いつつあると言えるが、Quadro 2000/600 では推奨されていないことには留意していただきたい。その領域については、ハイエンドモデル Quadro 6000 などを用いたマルチGPU による V-Ray RT の活用などが本筋となる。その他、CG 関連の大きなトピックスとして、高い GPU 性能からThe Foundryが開発するテクスチャペイントツール MARI において大きなパフォーマンスを発揮することが期待される。映画『アバター』での活用から注目を浴びる本ソフトではリアルタイムでのブラッシングを行うために GPU の実力が大きく求められる。こうした例を代表に CG ソフト全般での GPU の活用の波が来ていると言えるだろう。
既存製品とのスペック比較
OPERATION TEST 01:ベンチマーク
ここではまず筆者が業務で使用していた実際の環境との比較を目的に、同レンジの GeForce GTS 250 と Quadro 2000/600 を、SPECviewperf 11 を用いたベンチマークテストを行なった。GeForce と Quadro はそもそも開発テーマは異なり、さらに1年前のモデルであることからも、当然大きな差を結果として見ることができた。中でも特に良好な結果を出したのが、Lightwave-01 と maya-03。改めて Quadro の性能の高さを実感するとともに、Quadro 2000/600 は、ミドルレンジ/エントリーモデルの領域を遥かに超えていると感じた。この計測結果を踏まえて、次項から実際に業務で使用するソフトの検証を行なっていく。
SPECviewperfによるパフォーマンス比較
OPERATION TEST 02:Autodesk 3ds Max 2011
生の使用感を検証するため、弊社の業務で使用している Autodesk 3ds Max 2011 で様々なデータを用いて作業を行なってみた。通常であれば、限界までモデルを並べ膨大なデータでどこまで描画がスムーズかなどを試すところだが、あくまで実務に乗っ取ったデータ量での描画性能に注目したい(とは言え、近年では上記のような非常に重いシーンが当たり前となっているが)。GeForce と Quadro をそれぞれで同一シーンの作業を行なってみたが、レスポンス的には大きな違いは感じられなかった。しかし、GeForce ではパンやズームなどを行なった際に一瞬パカッと描画が飛ぶような現象が生じるが、Quadro ではその現象が回避された。非常に安定した描画性能を有していることが判る。
トータルで100万ポリゴンを超えるシーンでも安定した描画を実現している。オブジェクトの移動、パンやズームなどの視点の変化時にラグが全く生じない
OPERATION TEST 03:Adobe After Effects CS5
Quadro の実力を見る上では、やはり GPU によるリアルタイム演算に注目していくこととなる。正直このあたりは数値化することが難しいが、ここでも実務に近い作業を行なった際のレスポンスを体感することができた。下の作業画面では、高解像度の静止画に様々な GPU 対応のエフェクトを掛けてみたもの。軽快に処理が行われるため、エフェクトを複数重ねてもストレスがない。中でも、あくまで体感となるが、ブラー、ノイズなどを掛けた際の処理演算が軽快であったことが非常に有効であると感じられた。これらの映像の中で特に使用頻度の高いエフェクトが素早くプレビューできるのは、生産性にも直結するため、高く評価できるポイントだ。
高解像度の静止画(4,000×3,000)に様々なエフェクトを掛けてみたが、プレビューが素早く非常に軽快な作業が可能だ
OPERATION TEST 04:Adobe Photoshop CS5
ソフトウェアでの作業の検証の最後に、Adobe Photoshop CS5 Extended で 3D 機能を用いて、ペイントを施してみた。本機能には注目していたものの、制作環境の問題から実際に使用するには少し躊躇する部分があったが、Quadro では非常に軽快な作業が行えた。その実力が特に感じられたのが、3D ソフトの使用時と同様に、移動や視点の変更などのラグが生じなかったという点である。これは弊社で元々使っていた GeForce と比較した際に、3D ソフト上のそれより、大きな差となって現れた。GeForce で作業した際に発生していた大きなラグがまったく生じなかったのだ。このことからも高いリアルタイム性能を有していることが判る。
3D データでのリアルタイムペイントは高い負荷が掛かるものだが、視点の変更にまったくラグが生じず、ストレスなく作業が行えた
TEXT_谷口充大(テトラ)
<Column>
先進ソフトをサポートする一歩進んだリアルタイム性能
おまけとして、インディゾーンが Quadro 2000/600 で各製品の動作検証を行なった結果から、その有用性、可能性について考えていきたい。まず最初に紹介したいのが、MARI での Quadro の活用度である。以前まで本ソフト対応の Quadro シリーズは、先にリリースされていた Quadro 5000 などのハイエンドモデルであったが、同社代表取締役・田中一郎氏によれば、「結果から言えば、Quadro 600 でも MARI は動作します」とのことだ。MARI と言えば、3D データをリアルタイムにブラッシング(ペインティング)してテクスチャ類を作成することができるソフトであり、非常に高負荷な作業が行われるため高い GPU 性能を持つグラフィックスボードが必須となる。
Quadro シリーズはそれに応える性能を有するブランドではあるが、エントリーモデルでこの領域に達していることは、驚きとしか言いようがない。「 Quadro FX 1800 ではブラッシングした際に描画が若干遅れるが、Quadro 600 ではまったくラグが発生しませんでした」と同社でサポートを行うデービッド・リン氏。ハリウッドクオリティを実現するハイエンドソフトをエントリーモデルのグラフィックスボードが支えるという何とも興味深い状況である。また、同社が取り扱うNuke、Houdini に関しても、Quadro シリーズ、つまり Fermi アーキテクチャに対応している。この 2 つのソフトはハイクオリティな映像制作において草分け的なソフトであり、それを支える Quadro の安定性は高く評価できる。
映画『アバター』で活用されたとして注目を浴びる MARI。そのハイエンドな制作ツールが、Quadro 600 でサポートされるのは大きな驚きだ 3D コンポジットの普及から爆発的に需要を伸ばす Nuke。現在 GPU 対応のエフェクトプラグインなども増えつつあり、さらに GPU の活用度が増すことは必至ノードベースの草分け的な3DCGソフトHoudini。最新バージョンではGPUサポートのハードウェアレンダリングの強化も行われた
先進ソフトをサポートする一歩進んだリアルタイム性
Quadro シリーズの性能を検証する上で最も注目するのは GPU である。それを数値化することは難しく、また、それを加味したコスト換算で導入検討することも困難だが、実際に使用して感じたことはミドルレンジ/エントリーモデルの領域を遥かに超えた性能を有しているということだ。その1点だけを考えても、今回紹介したQuadro 2000/600 は非常に安価であることから、単純に得だと言える。これまで数十万掛けて実現できたパフォーマンスが 6 万弱で手に入ることは驚きとしか言いようがない。また、前述した MARI 、Nuke 、Houdini を代表として Fermi 対応のハイエンド映像制作ソフトも多数あり、今後を見越した環境としても価値あるものであろう。
TEXT_谷口充大( テトラ )