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Mac Pro用のハイエンドグラフィックスボード NVIDIA Quadro 4000 for Mac(以下、Quadro 4000)は、3DCG ソフトはもちろんのこと、映像編集/合成ソフトにおいてもそのパフォーマンスを発揮する。特に Adobe Premiere CS4 から実装された GPU アクセラレーション「Adobe Mercury Playback Engine」を利用できるというのは、大きな強みだ。Mac 環境において NVIDIA Quadro 4000 がどこまで効果を発揮するか検証してみよう。

※本記事は、月刊CGWORLD 154号(2011年6月号)に掲載した記事を転載したものです

テスト環境:Apple Mac Pro
CPU:Quard-Core Intel Xeon 2.4GHz
メモリ:6GB
OS:Mac OS X(10.6.7)
協力:アップルジャパン株式会社

GPUによる強力なプレビュー再生が魅力

新世代 Fermi アーキテクチャを採用した NVIDIA Quadro シリーズに Mac 版が登場した。その NVIDIA Quadro 4000 for Mac は CUDA コアプロセッサ 256 基の GPU と 2GB のメモリを搭載したハイエンドグラフィックスボードで、OpenGL 4.0 と DirectX 11 をサポートしている。

まず、映像出力と動作環境に関してまとめると、ディスプレイコネクタはDVI ×1、DisplayPort ×1のデュアルモニタ対応で、最大解像度は 2,560 × 1,600 ピクセル。Mac 本体は Mac Pro 3.1(2008年モデル)以降に対応しており、OSはMac OS X 10.6.5 以上、BootCamp で起動した Windows 7、Vista、XP でも動作する。これらの出力および動作環境に関しては Mac Pro では標準的なものだ。ただし、ビデオボードを装着することによる最大のメリットは、Adobe Premiere CS5 の GPU アクセラレーション機能「Adobe Mercury Playback Engine」を活用できることだ。本機能はAdobe Premiere CS4 から搭載の NVIDIA CUDA テクノロジーを採用した並列処理機能で、GPU を使って AVCHD や 2K、4K といった高解像度映像のスムーズなプレビューを可能にする。今回は、その実力を体験すべく、Adobe Premiere Pro CS5(以下、Premiere CS5 )にて、HDV、AVCHD 映像を用いたテストを行なったが、実数値としても体感としても高いパフォーマンスを発揮することが認められた。

さらに Adobe After Effects CS5(以下、AE CS5 )でも、AVCHD 映像に OpenGL を使用しているフィルタやライト、マスク、3D レイヤー効果を施すテストを行なってみたが、こちらでも高いプレビュー能力を実現することが実感できた。それでは、各テストの結果を紹介していこう。

スペック比較

前世代の同等モデルとのスペック比較

TEST 01:Adobe After Effects CS5

AE CS5 でプレビューに OpenGL を使用すると、Quadro 4000 の GPU パワーの効果が現れる。その恩恵を受けられるのは、主に OpenGL を使用しているフィルタやライト、マスク、3D レイヤーなど。環境設定で OpenGL の使用を ON にでき、3D レイヤーのアニメーションのプレビュー時などではコンポジションパネル下のプルダウンメニューで OpenGL を常時 ON にして高速プレビューすることもできる。最終的なプレビューは RAM プレビューになると思うが、作業途中の段階では OpenGL でのプレビューができるかどうかによって効率が大きく変わってくるだろう。検証として、AVCHD 圧縮の映像に「カートゥーン」エフェクトを適用して再生ボタンでプレビューを行なってみた。プロパティの一番下にある「パフォーマンス/OpenGLを使用」を OFF にした場合は 3~4fps だったが、ON にすると 14~15fps での再生が行えた。
続いて、AVCHD 圧縮の映像の上に 3D レイヤー化させたテキストを2つ乗せてアニメートさせてみたが、通常のインタラクティブ OpenGL 状態では 18fps の再生だったのに対し、コンポジションパネル下の「高速プレビュー」プルダウンメニューで「OpenGL-常にオン」を選ぶとフルフレームでプレビューすることができた。

After Effects CS5 での検証1

環境設定でOpenGLプレビューを ON にする。[ OpenGL 情報]でテクスチャメモリの割り当ても設定できるので 2GB のメモリを搭載する Quadro 4000 の真価を発揮することができる

After Effects CS5 での検証2

AVCHD 圧縮の映像に「カートゥーン」エフェクトを適用してプレビューした例。[パフォーマンス/OpenGLを使用]が OFF の状態では、3~4fps でしか再生できなかった。ON にすると 14~15fps まで向上した

After Effects CS5 での検証3

AVCHD圧縮の映像上に、3D レイヤー化させたテキストを2つ乗せてアニメートさせてみた。通常のインタラクティブ OpenGL 状態では 18fps の再生だったのに対し、「OpenGL-常にオン」に設定するとフルフレームでプレビューされた

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TEST 02:Adobe Premire CS5

Adobe Mercury Playback Engineは CS4 から搭載された機能であり、映像プレビューを並列処理することによって、高解像度( 2K 以上)の映像や複雑な合成結果をスムーズにプレビューすることができるというもの。Quadro 4000を用いることで、この GPU アクセラレーションが最大限利用できるようになり、AVCHD や 2K といった高画質映像の編集を快適に行うことができるようになる。ここではいくつかのテスト結果を紹介しよう。

まず、グリーンバックで撮影したHDV 圧縮の映像を「Ultraキー」エフェクトでAVCHD 圧縮の映像に重ね、カラーコレクションを施してみた。Adobe Mercury Playback Engine を使うと、フルフレームのプレビューが可能であった。続いて、AVCHD 映像同士のピクチャー・イン・ピクチャーを試してみたが、2つのはめ込みまではシャドウを落としてもフルフレームのプレビューが可能であった。そこで、さらに AVCHD 映像に対してカラーコレクションしてブラーエフェクトを掛け、その上にテキストを乗せた1分間の映像を作成。このムービーを、H.264 コーデックで出力してみた。すると、Adobe Mercury Playback Engineが OFF の状態では、1分45秒要したのに対して、ON の場合は1分程度まで短縮できた。合成方法やエフェクトの種類によってはさらに時間が短縮されそうだ。

Premire Pro CS5 での検証1

Quadro 4000 を載せると、プロジェクト設定から Adobe Mercury Playback Engine の GPU 処理を選択できるようになる

Premire Pro CS5 での検証2

HDV 圧縮の映像を「 Ultra キー」エフェクトで AVCHD 圧縮の映像に合成し、カラーコレクションしてみた。フルフレームのプレビューが問題なく行えた

Premire Pro CS5 での検証3

AVCHD 映像同士をピクチャー・イン・ピクチャーしてみた。2つのはめ込みまではシャドウを落としてもフルフレームでプレビュー可能。3つ以上重ねたり、合成映像をアニメートさせると、さすがにコマ落ちしてしまった

Premire Pro CS5 での検証4

1分間の AVCHD 映像(カラーコレクション+ブラーエフェクト+テキストアニメーション)を、H.264で出力。Adobe Mercury Playback EngineがOFFでは1分45秒かかったのに対して、ON では1分まで短縮できた

TEXT_石坂アツシ(電光石火

Quadro 4000 for Mac パッケージ画像

NVIDIA Quadro 4000 for Mac

価格:オープン(実勢価格15万円前後)

問:株式会社エルザ ジャパン