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CGコンテンツを手がけるプロダクションにインタビューとアンケートを実施し、3DCGの利点や需要増の背景、そしてデファクトスタンダードとなっているオートデスク製品の導入理由を掘り下げる本企画。第一回の「TV・FILM編」に引き続き、第二回のテーマは「アニメーション業界編」を取り上げる。近年、アニメ作品における3DCGの活用範囲は拡大の一途を辿っているが、その背景について各プロダクションに伺った。
CASE01:オレンジ
>>>3DCGによる次世代の映像表現を追求していきたい
2004年にフリーランスのCGアニメーターだった井野元 英二氏を中心に設立されたオレンジは3DCGと作画アニメで作るハイブリッドなアニメーションを武器に『蒼穹のファフナーEXODUS』、『攻殻機動隊ARISE -GHOST IN THE SHELL-』、『コードギアス 亡国のアキト』など、数々のアニメ作品で3DCGによる新たな表現を提示してきた。中でも3DCGの利点を活かしたスピード感溢れるメカアクションに定評がある。
アニメーション作品における3DCG活用の変遷について井野元氏は「CGアニメーションに携わって20年近く経ちますが、その歴史は視聴者の皆様に3DCGを受け入れてもらうための工夫の歴史といいかえても過言ではありません」と語る。特に大きな節目となった作品としてTVアニメ『ゾイド -ZOIDS-』(1999)と劇場版アニメ『コードギアス 亡国のアキト』(2012)の二つを挙げる。「『ゾイド -ZOIDS-』では3DCGとメカアクションものは相性が良いことを世に示すことができました。形状の正確な描写やアクロバットな視点移動が可能な3DCGの利点をうまく活かせたんです。この作品を契機として、メカCGの案件が一気に増加しましたね。次に『コードギアス 亡国のアキト』ですが、オレンジとしては"3DCGならでは"の表現が受け入れられたはじめの作品だったと思います。メタル表現や、CGの自由なカメラワークが非常に好評だったことを覚えています。それまでは3DCGをいかに作画アニメと違和感なく併存させるか、または本来3DCGが苦手な"外連味のある"表現を再現できるかというところに力点をおいていましたが、本作をきっかけに3DCGならではの表現はまだ新しいことに挑戦できると確信しました」とその経緯を語る。
▲同社が手がけたロボットアニメ『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』におけるロボット同士のバトルシーン。ダイナミックなアクションシーンのアニメーションを演出するため、パースの誇張なども使われている。作例はロボットがカメラに向かって腕を突き出すカットだが、ケレン味のあるアニメ独特のパース感を表現するため、腕のパーツのスケールを極端に変形させて表現している
©創通・フィールズ・フライングドッグ/ACTIVERAID PARTNERS
近年では、アニメーションにおける3DCGによる表現領域は拡大し、これまで3DCGが苦手としてきたキャラクターの表現にも用いられるようになってきたという。オレンジが初めて元請として制作するTVアニメ『宝石の国』(2017年10月放送予定)では、これまでのアニメ作品では難しい3DCGによるキャラクターの日常芝居に挑戦をしているという。「アニメーションの本質はキャラクターの"動き"だと考えています。これまで多くのCGアニメーション作品はディテールアップやポージングといったところで勝負してきましたが、本作はキャラクターの動きで視聴者を魅力するエポックメイキングな作品にできるかもしれない」と語った。
▲TVアニメ『宝石の国』のプロモーションビデオ。市川春子氏の描く、美しい世界をいかに3DCGが表現するか期待がかかる。キャラクターの髪の毛や草原などの質感表現も見どころの一つだ。「原作ファンの方に喜んでもらえる、確かな手ごたえを感じています」とは井野元氏のコメントだ。ぜひ期待したい
©2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会
そんな井野元氏にアニメーションにおける3DCGの利点について伺うと、「アニメーションという技術体系を細分化して、技術習得がしやすいところです。特定の分野、例えばフェイシャルアニメーションだけに特化してスキルをあげるといったことも可能です。
CGアニメーションにおける様々なスキルを一から十まで覚えるとどうしても10年かかってしまいますが、特定の分野であれば3年くらいでプロレベルまで成長する可能性があります。また、プロダクションの中に効率化のノウハウが蓄積しやすいので、社員一人当たりの生産性が高まり、より面白い作品に挑戦できるようになるのだと思います」(井野元氏)。
今後、ますます増え続けるアニメーション需要に対し、技術の蓄積や効率化のノウハウがたまりやすい3DCGの活用分野は広がっていきそうだ。ぜひ今後のオレンジの活躍に期待したい。
CASE02:ダンデライオンアニメーションスタジオ
>>>世界規模の動画配信の盛り上がりとともに生まれる新たな需要
これまでに劇場長編・TVシリーズアニメを中心に様々なジャンル・テイストの作品を手がけてきたダンデライオンアニメーションスタジオ。代表の西川和宏氏は1997年頃からCGアニメーション制作に携わってきた。ちょうどアニメ業界で色彩・仕上げ・撮影の工程でデジタル化が進み始めていた頃である。「作画や美術でやれること以上に新たな表現や効率化ができないか、実験的に3DCGの活用を始めていった時期でしたね。その後、現在に至るまでにアニメーション制作における2Dと3DCGの比重のバランスは大きく変化してきました。CGのカットで求められるカット数は、当時百カット未満ぐらいだったのが数百カット規模に変化してきましたし、レイアウトを起こすときはまずCGで表現するといったことを業界も受け容れてくれるようになったのではないでしょうか」とその経緯を語る。
こうした需要拡大の中で、2007年に西川氏はダンデライオンアニメーションスタジオを立ち上げる。5名で始めた小さなスタジオは、確かな技術力と高い演出力から10周年を迎えた本年には80人に迫る規模の体制にまで成長した。現在はアニメーションの受託制作だけではなく、世界展開を念頭に置いたオリジナルIPの創出・ライセンス事業など新たな展開に力を入れている。「ご存知のように日本のアニメーション市場においてはマンガを原作とした作品が中心です。そのため、オリジナル作品を企画しても市場規模や認知度・回収計画の問題から、なかなか主力事業に育てるのが難しい状況が続いていました。しかし、それが3年前くらいから、世界規模の動画配信の盛り上がりとともに、アジア、ヨーロッパの企業を中心に、これまでに無い新たなIPに対する需要が生まれてきているのを感じました」と、新たな需要変化について語る。
▲『ROBOMASTERS:THE ANIMATED SERIES』 ©RoboMasters
ドローンメーカーDJI社と制作中のオリジナルアニメーションシリーズ。工学系学生がロボット開発に没頭する青春ドラマだ。2017年夏よりアジア各国で配信予定
こうした同社の強みとして西川氏は「特定のジャンルや手法にとらわれず、3DCGを生かした様々な作り方を模索している点」を挙げる。「日本では、セルルックのアニメーションが主流ですが、一方で、世界のアニメーション市場では、フル3DCG、実写合成など、様々な表現が受容されています。作品の世界観やお客さんのニーズにあわせ、適切な手法を追求し続けていくことがとても重要だと考えています」。
国内市場の成熟に伴い、今後求められるアニメーションスタジオの世界進出。3DCGによる様々な表現手法を獲得していくことで更にその可能性が高まりそうだ。
▲TVアニメ『不機嫌なモノノケ庵』に登場する、フワフワと触りたくなるような毛並みが特長の「モジャ」という妖怪は3DCGで制作されている。他の作画のキャラとも馴染むように、モデルの毛は一本一本モデリングし、それぞれの毛にグラデーションがかかっているような質感に仕上げられている。
©ワザワキリ/スクウェアエニックス・「不機嫌なモノノケ庵」製作委員会
▲オリジナル作品『リトルワンダーズ』。実写と3DCGを組み合わせた表現など様々なスタイルのアニメーションを模索している
©DandeLion Animation Studio, LLC.
以降では、インタビューに協力してもらった上記2社を含め、映画・TV分野において数々のCGコンテンツを活躍するCGプロダクションの声を紹介しよう。
導入プロダクションの声
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アイケイアイエフプラス(IKIF+)
http://www.ikifplus.co.jp/plus/
Q1:会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
TVアニメを中心に幅広く映像作品に携わっています。
Q2:メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
現在、3ds Maxを使用していますが、やはり同業他社での大きなシェア率が魅力。横の連携でのお仕事の分担が可能です。さらに技術的な内容でも相互にやりとりしやすく、経験値の共有もしやすいです。
Q3:今後の目標について教えてください。
誰もみたことがない、IKIF+にしか作れないアニメーション作品を生み出していきます。案件の大小や使用ソフトに関係なく、あらゆる作品を効率よくこなせる様な、柔軟性のある社内体制を築いていきたいです。
▲アイケイアイエフプラス制作実績
『モンスターハンターストーリーズRIDEON』
©CAPCOM/MHS製作委員会
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旭プロダクション
http://asahi-pro.co.jp/
Q1:会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
弊社は、TVアニメにおける撮影業務をメイン業態として起こった会社のため、撮影のノウハウを生かしたセル(作画素材)との親和性の高い絵作りや、作画のようなタメツメ、ケレン味あるアニメーション作成を得意としています。
Q2:メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
弊社では現在、メインツールとしてMayaを採用していますが、ツール開発による作業自由度の高さは非常に助かっております。他社様でも採用されていることが多いので、もしものときにご協力をお願いできるのも強みです。
Q3:今後の目標について教えてください。
これまでにさまざまなジャンルの3D制作を担当させていただいてきましたが、これからも視聴者の方々に楽しんでいただけるような作品作りに邁進していきたいです。
▲旭プロダクション制作実績
【左】『弱虫ペダル NEW GENERATION』
©渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル03製作委員会
【右】『ドリフェス!』
©BNP/BANDAI, DF PROJECT
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オー・エル・エム・デジタル R&D部門
http://olm.co.jp/
Q1:会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
OLMグループは、TV・劇場用アニメーションや実写作品の企画立案から、シナリオ・演出・作画・デジタル処理までのトータルマネイジメント事業を営んでいます。またR&D部門により映像制作技術の開発も進めています。
Q2:メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
まずは3DCG制作の要としてMayaを使用しています。また昨年度よりMayaの標準レンダラーになったArnoldを活用してフルCG映画『ルドルフとイッパイアッテナ』を制作しました。現在、Arnold5がリリースされ、社内テスト中です!
Q3:今後の目標について教えてください。
R&D部門としてArnoldでのアニメ制作ワークフローの確立を目標にしています。また引き続き映像制作パイプラインの改良、Mayaをはじめとする各種3DCGツールのプラグイン開発を進め、映像制作を支えたいと考えています。
▲オー・エル・エム・デジタル制作実績
【左】『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』
©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JRKikaku
©Pokemon ©2017 ピカチュウプロジェクト
【右】TVアニメ『スナックワールド』
©LEVEL-5/スナックワールドプロジェク卜・テレビ東京
Q1:会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
有限会社オレンジは、2004年にフリーのアニメーションディレクターとして活躍していた井野元英二が設立したCGアニメーションプロダクションです。
作画と3DCGの自然な融合を最も得意としており、両方の長所を持つ"ハイブリッド映像"には長年のノウハウと実績があります。
Q2:メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
弊社がオートデスクの3DCGツールを使い続ける理由としては3DCGアニメーション制作に最も適しているからです。
特に3ds Maxは3DCGアニメーション制作に必要なプラグインがほぼ揃っており、手描きでは表現出来ない見せ方を実現出来るのでとても重宝しています。
Q3:今後の目標について教えてください。
今までは3DCGと作画を融合したハイブリッド映像をメインとしてきましたが、今後は3DCGでしか出来ない表現、『次世代の映像表現』を目指し、常に新しい挑戦を続けてお客様に感動と驚きを提供したいと思っております。
▲オレンジ制作実績
【左】『終末のイゼッタ』
©終末のイゼッタ製作委員会
【右】『クビキリサイクル』
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
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コミックス・ウェーブ・フィルム
http://www.cwfilms.jp/
Q1:会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
コミックス・ウェーブ・フィルムは、作家マネージメントに始まり、アニメーション映画の製作・制作・劇場配給・パッケージ販売、海外セールスまでを一気通貫で行っております。全てのパートを少数精鋭で固めることで、強い作家性とともに後世に残る作品創りを目指しています。
Q2:メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
主に使用しているのは、3ds MaxとSoftimageです。業界標準のソフトウェアなため、ツールや情報が豊富なので使用し続けています。
Q3:今後の目標について教えてください。
今後も心ある作家と一緒に、心に残る作品を作って、世界中の人々に届けることを願い、日々奮闘していきます。
▲コミックス・ウェーブ・フィルム制作実績
『君の名は。』
©2016「君の名は。」製作委員会
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小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント
http://www.smde.co.jp/
Q1:会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
3DCGアニメーションを柱に、番組、PV、CM、イラスト等を制作しています。
近年はAR、VRなど様々なデジタルコンテンツ展開を提案も含めて行っています。
アニメシリーズを作る経験とノウハウを持っています。
Q2:メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
現在は3ds Maxがメインですが、今後に向けてMayaラインも構築中です。どちらも得意な領域があり周辺で良く使用されてもいますので、ニーズに合わせて上手に選択しクオリティの高い作品に繋げたいと考えています。
Q3:今後の目標について教えてください。
当面は自社の経験、ノウハウを活かし、これまで以上に業務の幅を広げたいと考えています。2つのツールを活用して大きな案件に繋げていきたいです。
▲小学館ミュージック&デジタル エンタテイメント制作実績
【左】『新幹線変形ロボ シンカリオン』
©プロジェクト シンカリオン JR九州承認済
【右】『シルバニアファミリー』
© EPOCH
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ダンデライオンアニメーションスタジオ
http://www.dlas.jp/
Q1:会社概要について教えてください(業務内容や強み特徴など)
「世界中の子どもたちへプレゼントを」をコンセプトとしたCGアニメ企画制作会社。シナリオ・キャラクターデザイン・美術設定などからオリジナル作品の開発も行う。2017年4月にちょうど10周年を迎え、 新スタジオではライセンス・海外担当スタッフと共に海外共同製作も積極的に行っています。
Q2:メインで使用しているオートデスクの3DCGツールについて、また同社の3DCGソフトウェアを使用し続ける理由について教えてください。
創立当初からテクニカルディレクターを中心にMayaにおける社内プログラム・ツール開発を積極的に推進しており、品質向上や効率化のためのパイプラインやリグシステム等を含めた技術資産の蓄積が大きいからです。
Q3:今後の目標について教えてください。
国内向けの作品に留まらず、特にアジア・ヨーロッパ圏に向けた海外共同製作や海外へ向けた作品づくりを中心に、新しいアニメーションの企画や制作の在り方を追求していきます。また、キャラクターやアニメの他業種との連携も、より積極的に推進していきます。
▲ダンデライオンアニメーションスタジオ制作実績
【左】『ボールルームへようこそ』
©竹内友・講談社/小笠原ダンススタジオ
2017年7月よりMBS、TOKYO MX、BS11 ほかにて放送開始!
http://ballroom-official.jp/onair/
【右】『Robomasters The Animated Series』
©RoboMasters