KIRI Innovations社は12月12日(金)、無料のBlenderアドオン「Mesh Wrap by KIRI Engine v1.0.0」をリリースした。3Dスキャンされた地形データやレンガ、複雑なサーフェス構造などを、引きつりや過度な変形を起こさずに、ベースとなるメッシュに対して自然に巻き付けることができる。推奨動作環境はBlender 4.5~5.0。
It's out now! Our new FREE tool for all 3D environment artist and 3d scan enthusiasts
— KIRI Engine - 3D Scanner App (@KIRI_Engine_App) December 12, 2025
It's called mesh scan and can wrap 3D scanned terrain, bricks, surfaces etc onto base meshes without the usual Shrink-wrap deformations pic.twitter.com/4LtoELue4H
「Mesh Wrap by KIRI Engine v1.0.0」は、Blender標準のShrinkwrap(シュリンクラップ)モディファイアーの欠点である、メッシュが無理に引き伸ばされ、テクスチャや形状に不自然な歪みが生じやすかった点を解消する無料アドオン。KIRI Engineの独自アルゴリズムにより、「引きつり」や「過度な変形」を回避しつつ、サーフェスをベースメッシュに対して自然に巻き付けることができる。
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▲インストールはダウンロードしたZIPファイルをBlenderのビューポートにドラッグ&ドロップするだけ。サイドバーからアドオンにアクセスできる -
▲Mesh Wrapの利用例。使用前(左)と使用後(右)
アドオンの利用にあたっては、Mesh Wrapが地形やサーフェスのスキャンデータ(Surface Scans)に最適化されているため、閉じた立体形状(Manifold meshes)に対して使用した場合、予期せぬ結果を招く可能性がある点に注意が必要だ。また、高解像度のスキャンデータを大量に散布(スキャッター)する場合、ポリゴン数が数百万単位に膨れ上がり、パフォーマンスに影響を及ぼす恐れがある。そのため、ポリゴン数を削減するデシメート(Decimate)モディファイアーによる最適化が不可欠となる。
また、ラップ処理の精度を高めるために、Mesh Prep Toolsによる事前準備を行う。Auto Rotateを使用してメッシュをワールド座標軸に合わせて自動的に回転させたり、Set Originを使用して、選択したメッシュの原点を任意の軸の最上点・最下点・中間点へとワンクリックで設定し、ラップの基準位置を修正しておく。
▲事前調整を行わずにラップ処理を行った結果、メッシュに対して浮いている例(左)と、事前調整を行ったためメッシュに沿ったラップ処理が行えた例(右)
ラップ方法は単一オブジェクト用のPlanar Wrap(平面ラップ)と、広範囲にわたる地形作成用のScatter Wrap(散布ラップ)が用意されている。
Planar Wrap
Planar Wrapは、単一のメッシュをターゲットのベースメッシュ(地面や壁など)にラップする機能。ラップしたいオブジェクトを選択し、アドオンからモディファイアーを適用、その後ターゲットとなる表面を指定するだけで完了する。この処理では、ラップオブジェクトからターゲットに向かってレイを照射し、衝突した位置にディスプレイスメントを適用する計算が行われている。
ディテールを維持するための高度な設定として、ターゲット表面からの距離を調整するSurface Offset、メッシュ原点より下にある凹凸情報を保持したまま表面にスナップさせて、くぼみなどの立体感を損なわずに転写できるSnap Sub-Origin Pointsも用意されている。また、ターゲットからはみ出した部分を削除またはぼかす処理を行うOverlap Clean Up機能もある。
Scatter Wrap
一方、広範囲にわたる地形作成に向いているのが、アクティブなオブジェクトを土台として複数のスキャンデータを散布するScatter Wrap。ユーザーは単一のオブジェクトまたはコレクションをソースとして指定し、ターゲットのサーフェスに配置できる。
散布の配置方法(Alignment)は、平坦な地形に適したPlanarと、曲面や非平面に適したNormal Alignedの2種類が用意されている。散布の密度やパターンも細かく制御可能で、規則正しいGrid配置のほか、ランダムなDensity/Amount、さらには各オブジェクト間の最小距離を保ちながらランダム配置を行うPoisson Disk分布も選択できる。
▲ラップ処理前のScatter Alignmentの設定。左がPlanar、右がNormal Aligned
散布によって生じる不自然な重なりや引きつりを修正するクリーンアップ機能として、無理に引き伸ばされたポリゴン面を自動検出し、しきい値に基づいて削除するRemove Stretched Faces機能が用意されている。また、ベースメッシュのノーマル(法線)を一時的に滑らかにするBlur Surface Normals機能により、急激な角度変化によるアーティファクトの発生を抑制することもできる。
■Mesh Wrap by KIRI Engine v1.0.0
https://www.kiriengine.app/blender-addon/mesh-wrap-by-kiri-engine
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