Blender Studioは11月20日(木)、Blender 5.0向けに設計された新しいキャラクターリグ「Storm」を公開した。Blender 5.0のリギングワークフローと機能開発に大きく貢献した実践的なプロジェクトで、アドオン「CloudRig」を用いたボディリグ、リボンガイド・シェイプキー・ラティス変形を組み合わせたカスタムフェイシャルリグ、補正シェイプキーを効率的に作成できる「Pose Shape Key」アドオンなどを、Blender Studioの有料サブスクライバー向けに提供する。ライセンスはCC-BY(クリエイティブ・コモンズ 表示)。
ボディリグ
ボディリグはDemeter Dzadik氏によるBlenderアドオン「CloudRig」を用いて構築されている。このリグは、四肢のワールド座標変換を維持したままFKとIKモードをシームレスに切り替え可能。また、ヒンジやペアレンティングのオプション、微調整用のTweakボーンなど、柔軟なアニメーション制作に必要な機能が多数搭載されている。
今回、脊椎(Spine)の構造設計が全面的に見直され、IKモード時には上下のヒップコントロールボーンを操作することで、脊椎をダイナミックに湾曲させたり、その曲率を拡張したりすることが可能となった。さらに、キャラクターの胴体を伸縮・圧縮させることで、アニメーションに重量感や柔軟性、躍動感を与える「Squash and Stretch(スクワッシュ・アンド・ストレッチ)」機能が追加。CloudRigのUIパネルから簡単に調整できる。
フェイシャルリグ
フェイシャルリグはRik Schutte氏がゼロからカスタム構築。リボンガイド、シェイプキー、ラティス変形を組み合わせたハイブリッドなアプローチを採用している。口や目などの領域には、表面に沿って配置されたスプライン(リボンガイド)を用いた、皮膚の正確なスライドや伸縮挙動を制御するトラックを使用。この手法は、リボンの持つ体積保存の特性とカーブによる軽量な制御性を兼ね備えており、ジッパーを閉めるように唇を密着させる「Lip Zipping」や自動まばたきといった機能もジオメトリから独立して実装する。
なお、眉やほおは複雑な領域であるため、従来のシェイプキーベースのワークフローを適用している。主要な変形をシェイプキーで行いながら、その上に配置した局所的な変形用ボーンで微調整をする。さらに、既存のコントロールの上に変形を押し込むことができるラティスデフォーマを追加し、より幅広い表現力を実現している。
Stormのフェイシャルリギングワークフロー確立にあたっては、Blender 5.0と関連ツールに重要な機能改善が施されている。シェイプキーについては、Pratik Borhade氏が実装した新しいツリービューUIにより、複数選択やドラッグ操作による並べ替えが可能となり、管理の利便性が向上した。
また、Hans Goudey氏が追加した「Copy」「Update」「New from Objects」などのオペレータや、左右対称のメッシュにシェイプキーを適用する「Flipped」オプションにより、外部シェイプキーの管理や対称化のプロセスが簡素化。加えて、特定のポーズに基づいた補正シェイプキー(PSD、Pose Space Deformations)を効率的に作成するための「Pose Shape Key」アドオンも導入。ポーズの生成からドライバの割り当てまでを自動化することにより作業効率が改善している。
また、シェイプキーベースのリグ設定において、コントロールボーンが顔メッシュの変形に正確に追従するよう、「Override Transforms」機能も改良。従来、ボーンの視覚的なオーバーライドを行ってもギズモの位置は元のボーンの位置に留まっていたところ、ギズモが評価後の視覚的な位置に正確に更新されるようになった。
■Storm(Blender Studio)
https://studio.blender.org/characters/storm/v1/
■Storm has been released!(Blender Studio Blog)
https://studio.blender.org/blog/storm-has-been-released/
Blender Studioのサブスクリプションについて
Blender Studioのサブスクリプションは、Blenderの開発を支援しながら制作現場のノウハウ、トレーニング、アセットなどにアクセスできるサービス。個人向けにはMonthly(1ヶ月単位、17ユーロ/月、約3,080円/月)とQuartely(3ヶ月単位、34.5ユーロ/月、約6,250円/月)の2プランが用意され、スタジオや企業チーム向けにはTeamサブスクリプションプランが用意されている。
■Blender Studioサブスクリプション
https://studio.blender.org/join/
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