NVIDIA社のエンジニア・鈴木剛夫(Masuo Suzuki)氏とAnders Langlands氏は8月18日(火)、OpenUSDにおけるレンダリング結果の一貫性と相互運用性を担保するための参照レンダラ「Typhoon」をGitHub上で一般公開した。OpenUSDのHydraフレームワーク向けプラグイン「hdEmbree」の拡張として実装され、Linux、macOS、Windowsでのビルドに対応。様々なレンダラやDCCツール間におけるシェーディングやライティングの忠実な再現性を検証する環境を提供することにより、業界全体のパイプライン効率化を目指す。

相互運用性を保証するリファレンス実装の必要性

※以降、画像は鈴木氏らがASWF Open Source Daysで発表したプレゼンテーション資料より引用

CG制作現場におけるOpenUSDの採用事例は増加している一方で、異なるツールやレンダリングエンジン間でシーンを開いた際に、マテリアルの質感や照明の陰影が微妙に異なって見える問題は長く課題となっている。この差異を解消するためには、各社が開発するレンダラが拠って立つGround Truth(正解の基準)となる参照実装と、規格適合性を測定するCompliance Test Suiteが必要となる。「Typhoon」は、レンダラ開発者およびパイプライン構築を手掛ける技術者が規格準拠度を直接検証できるオープンな土台として設計されている。

hdEmbreeを拡張した高精度パストレーサー

Typhoonは、OpenUSD標準のCPUレイトレーシング用レンダーデリゲート「hdEmbree」を拡張し、完全な物理ベースのパストレーサーとして実装。Intelの高性能レイトレーシングカーネルライブラリ「Intel Embree」を交差判定のバックエンドに活用しつつ、高度な光線追跡アルゴリズムを組み込むことで、特殊な専用ハードウェアに依存することなく、CPUベースで決定論的かつ高精度な光の挙動計算を実現する。

標準マテリアル仕様とライティング規格の統合

本レンダラは、業界標準として策定が進むオープンなマテリアル仕様のMaterialXOpenPBR、そしてOpenUSDのライティングスキーマ「UsdLux」を正確に評価する能力を備える。サーフェスのBSDF(Bidirectional Scattering Distribution Function、双方向反射率分布関数)や多層構造のシェーディングネットワークを仕様通りに評価できるため、ルックデヴ工程において、自社パイプラインのレンダラが規格に適合しているかを直接比較・判定可能だ。

また、レンダリング計算における統計的ノイズの低減と収束速度の向上を実現するため、Typhoonには高品質なサンプリング基盤である準モンテカルロ法のオープンソース実装「OpenQMC」などを統合。最先端のサンプリング技術とレンダリングアルゴリズムを包括的に取り入れた、オープンなフレームワークとして整備している。

■A Reference Renderer for OpenUSD Interoperability(PDF)
https://hosted-files.sched.co/osd2026/20/A%20Reference%20Renderer%20for%20OpenUSD%20Interoperability%20-%20Anders_Langlands.pdf

■Typhoon(GitHub)
https://github.com/NVIDIA-Omniverse/OpenUSD/tree/typhoon/main/pxr/imaging/plugin/hdEmbree

Typhoonのライセンスについて

TyphoonのソースコードはOpenUSD本体のライセンス体系に準拠し、修正Apache 2.0ライセンス(商用・非商用を問わず改変や再配布が可能)で提供されている。

■OpenUSD LICENSE(GitHub)
https://github.com/PixarAnimationStudios/OpenUSD/blob/dev/LICENSE.txt

■OpenUSD Exchange License Notices(GitHub)
https://github.com/NVIDIA-Omniverse/usd-exchange/blob/main/docs/licenses.md

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