急激に進化を続けるジェネラティブAIとアートの関係はまだグレーな問題を抱えているが、勢いがあることは事実だ。クリエイターとしては、現在の技術の精度、可能性、ポジティブな側面などについて知っておくのに損はない。

そうした情報収集源のひとつとして、日本のAdobe Community Evangelistのひとり、Mr.Creative.Edge氏のVlog「CreativeLife Diary 2023」に注目してほしい。画像生成AIの「Midjourney」、「DALL·E 2」、「Runway」、「Relight(Clipdrop)」、「Microsoft Designer」などを活用し、Photoshopで新しいアートワークを創造する試みを行っている。

Mr.Creative.Edge氏が本Vlogで追究するのは、PhotoshopとジェネラティブAIを融合させた新しいアートワークの創造。ゴールは「AIで架空のファッション雑誌をつくること」で、そのための試行錯誤をVlogとして公開している。

AIで生成したファッションフォト

ここでは、最近のVlogから内容の一部を紹介する。

DALL·E 2+Midjourney+Photoshopのニューラルフィルター(2023/3/4)

この日のVlogは、AIによる大幅な写真編集の方法から。DALL·E 2を使って、Adobe Stockにある男性が女性を背負っているカップルの写真から男性を消し、女性だけの写真にしてしまうというものだ。

続いては、Midjourneyで生成したコミック風線画にPhotoshopのAI機能「ニューラルフィルター」→「カラー化」で着色する様子を見せた。「このプロジェクトは、AIに画をつくらせるだけでなくて、Photoshopで画をつくっていく過程でいかにAIを活用していくか、画材としてAIを使うかが目的です」とMr.Creative.Edge氏。

Microsoft DesignerとRunwayの活用(2023/3/11)

この日はまずMicrosoft Designerでグラフィックデザインを生成させるところから。どんなデザインを生成するかをテキストでAIに伝え(=プロンプト)、提案されたデザイン案から好きなものを選び、微調整をする。Mr.Creative.Edge氏は「Microsoft Designerはデザインのプロではない人向けのもの。プロレベルのデザインにはならないが、できるだけダサくならないようにAIが提案してくれる」と解説。

続いてはRunway(AI Magic Tools)。帽子をかぶった少女のイラストの帽子部分を消しゴムツールで塗り、どんな帽子にするかをプロンプトに入力してジェネレートすることで、代替の帽子の候補がいくつも出てくる。もちろん、帽子の形状は頭の形に沿っている。Mr.Creative.Edge氏は「プロがAIを使うならこういう作業」と話していた。

Midjourneyでのプロンプトエンジニアリング(2023/3/14)

この日のVlogはMidjourneyでのプロンプトエンジニアリングの試行錯誤。「浅草」をベースにSFのモチーフを加え、押井守『イノセンス』の世界観を参照するといった試みが行われた。

Mr.Creative.Edge氏はVlog内で「AIの利点は短時間で無限に生成できること。でもそれをどう組み合わせて新しいアートワークをつくっていくかを考えることが大切。そうしないとAIに飲み込まれてしまう。AIも進化して、我々も進化する。そうして結果的に人間が進化する」と話していた。