荷物のダンボールが配送業者の倉庫から出発し、様々な場所を旅する様子が描かれたtofubeatsの新曲『自由』のMV。5月19日(金)に公開された本作は、松竹stuが共創した、全編バーチャルプロダクションによる作品だ。

バーチャルプロダクション(以下、VP)は、LEDのパネルを多数組み合わせて壁面「LEDウォール」を構築し、そこに3DCGを表示することで、演者とバーチャル背景が自然に馴染んだ状態で撮影が行えるシステム。LEDウォールへの投影シーンはUnreal Engine 5を用いて制作されている。

本作ではMV本編の公開に加えて、BTS(Behind The Scenes)映像も同時に公開されている。

本MVはtofubeats演じる配達員が、配送業者の倉庫からダンボールと共に様々な場所を巡るというコンセプト。段ボールが倉庫内で浮遊する倉庫のシーンや、配送者からみた各地の風景、また、ラストシーンで大量の段ボールが空を舞うシーンなどがすべてLEDウォールを使って撮影されている。また、よりリアルに近い表現を実現させるためにLEDモニターとカメラが連動するシステムを使用しているとのこと。

VPによるメリットはいくつもあるが、特に本作では映像内に登場する10ヶ所以上のロケ地全てをスタジオ撮影できた点は大きい。演者のスケジュール確保が最小限で済み、移動時間や天気待ちの時間なども不要となった。

また、プリプロ段階で3DCG背景を使ったロケハンを行えるため、早期に完成形のイメージができ、クオリティアップの時間も多く確保できたという。そのほか、3DCGを利用することで美術セットが不要となり、コストと廃棄資材の削減も実現した。

VP撮影が行われた「代官山メタバーススタジオ」は、松竹とカディンチェが共同で設立したミエクルが運営するスタジオ兼研究開発拠点。今回は技術パートナーとして、松竹ベンチャーズから第一号案件として出資したstuと連携して新たな映像制作ワークフローの開発に取り組んでいる。大手エンターテインメント企業がVPスタジオを持ち、コンテンツと制作ワークフロー開発のために新しい試みを広げていることの意味は大きい。

Unreal Engine 5.2ではVP関連機能のアップデートも

5月11日(木)に公開されたUnreal Engine 5.2ではバーチャルプロダクションツールセットが強化。デスクトップのICVFX(インカメラVFX)エディタと連携するステージ操作用のiOSアプリが用意され、LEDボリューム内でのグレーディングやライトカードの配置、nDisplay管理などのステージ操作をタッチベースで行えるようになった。

また、VCamシステムに搭載された追加機能によって、単一のエディタインスタンスから複数のバーチャルカメラを同時に操作したり、よりレイヤー化されて洗練されたカメラの動きをつくり出すことも可能になった。その他、SMPTE2110ビルドに対する拡張nDisplayもサポートされている。

●Unreal Engine 5.2 がリリースされました!(Epic Games)

https://www.unrealengine.com/ja/blog/unreal-engine-5-2-is-now-available