スペースデータは宇宙ステーションのオープンプラットフォーム「Space Station OS」を公開した。「Space Station OS」は、世界中の技術者が協調して、宇宙ステーションの共同開発と利用を行うためのプラットフォームだ。宇宙ステーションの制御ソフトウェアとして、世界初のオープンソースとなる。
「Space Station OS」について
「Space Station OS」は、宇宙ステーションの開発や利用に必要なソフトウェアおよびシミュレーション環境をオープンソースとして全世界に公開し、世界中の技術者が協力して宇宙ステーションの開発や利用を促進するためのプラットフォームだ。世界共通の宇宙ステーションの開発および運用環境を提供する。
第一弾として、宇宙ステーションの開発に必要なソフトウェアおよびシミュレーション環境を、世界最大のソフトウェア開発プラットフォームであるGitHubにて公開した。GitHub上では、世界中の数百万人もの開発者と共同開発を進めることができ、国境を越えた技術協力が可能となる。
「Space Station OS」は、いわば「宇宙のOS」です。コンピューター産業におけるWindowsのようなOSは、異なるハードウェアの差異を吸収し、共通の操作環境を提供することで、コンピューターの普及を促進し、インターネットという新たなインフラを生み出した。同様に、「Space Station OS」は、異なる企業や国が開発した宇宙ステーション間で共通に動作するソフトウェアを提供し、宇宙ステーションの開発や管理、運用を容易にする。これにより、誰もが宇宙ステーション事業に参加できる時代を開く。
「Space Station OS」が提供する機能
宇宙空間は、地球には当たり前にある空気や水、対流などの自然資源が無く、昼間は120度、夜には-150度に達する極端な温度環境にある。また、強い宇宙放射線、無重力などの人にとって過酷な環境が広がっている。
宇宙ステーションは、地球と同等の環境を工学的に再現することで、宇宙でも人が安全で快適に生活できるように設計されている。宇宙ステーションの技術は、地球の自然な営みを工学的に再現した「小さな地球」と言い換えることもできる。
「Space Station OS」には宇宙ステーションを構成する、熱制御、姿勢制御、電力、熱、通信、生命維持などを制御するソフトウェアが搭載されている。また、各機能を統合し、システム全体の最適化を図る機能を備えている。
主要機能
Space Station OSモジュール群
| |→シミュレータ
| |→熱制御
| |→姿勢制御/軌道変換
| |→電力供給・制御
| |→通信
| |→生命維持
| |→有人宇宙船/輸送船ポート
|→取扱説明書完備
加藤裕基氏 コメント
加藤裕基氏
「Space Station OS」開発責任者
カーネギー・メロン大学大学院修士課程修了、東京大学大学院工学系研究科博士課程終了。2007年から宇宙航空研究開発機構(JAXA)にて、宇宙ロボティクスの研究開発および戦略立案を牽引。現在は、火星衛星探査計画(MMX)のフォボスの砂を自律的に採取するサンプリングロボット開発を主導するとともに、2024年にスペースデータに参画し「Space Staion OS」を開発。
宇宙ロボティクスの専門家である私は、ロボティクスミッションが自由に宇宙に打ちあがっていく未来を目指しています。
数十年もの間、宇宙ミッションは有人か、無人(ロボット)か、という論争がなされてきましたが、私の中での答えはただ1つです。「ロボットが、有人ミッションに自由を与える」のです。そして、この「Space Station OS」は歴史を一つ刻み、世界に誇れるステップです。
宇宙ステーションは大きなロボットであり、スマートホームのようなものです。宇宙ステーションへ人がその維持作業のために行くのではなく、ロボットが管理しきれいにしてある宇宙空間にリモートワーク出張している世界は必ず実現できます。
Space Station OSが普及し、「宇宙の民主化」が進めば、有人火星探査や、スペースコロニーの話もどんどん出てくる、つまり人類の進歩への貢献を感じられるのです。
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株式会社スペースデータ
spacedata.jp/contact
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