immaRiaといったバーチャルヒューマンをプロデュースしてきたAwwが、この度、新たにバーチャルヒューマンプロジェクト「ANOME」を起ち上げた。

「ANOME」は、新たなバーチャルヒューマンのスターを生み出すことを目標にしており、そのための配信者オーディションが7月8日まで開催中だ。そこで今回は「ANOME」プロジェクトの詳細から、配信者オーディションの詳細、バーチャルヒューマンとVtuberの違いなど、様々なことについて、Awwの畠山拓也氏と簑田葉月氏にお話をうかがった。

もう一つの人生を手に入れる。バーチャルヒューマンが持つ可能性

CGWORLD編集部 (以下、CGW):まずは「ANOME」プロジェクトが発足した切っ掛けをお聞かせください。

畠山拓也氏(以下、畠山):切っ掛けとしては、大きく二つのものがあります。まず、もともと弊社はimmaやRiaなどのバーチャルヒューマンをプロデュースしていたんですが、そんな中でこれからもっとバーチャルヒューマンのコミュニティを作っていきたいという思いがありました。もうひとつは、バーチャルヒューマンによって、人生の選択肢を広げたいという思いがあったことです。

CGW:バーチャルヒューマンで人生の選択肢を広げるというのは、どういうことなんでしょうか?

畠山:もともとVTuber業界やSNSの使い方などでも言われてきたことなんですが、今は一人の人間が複数の人生を歩んでいけるという風潮が段々と増えてきているように思います。分人主義という考え方がありまして、コミュニティーであったり、対する相手であったり、自分の状況であったりで人間の人格って変わってくると思うんです。

ただ、肉体は一人の人間に一つしかないという制約はありますよね。でもバーチャルヒューマンを活用することで、一人の人間が複数の肉体を擬似的に持つことが可能になる、そうすることで人生の可能性をより広げられる可能性があると考えました。

(※分人主義:作家、平野啓一郎氏が提唱する、個人の人格が場面ごとに異なる複数の「分人」から構成されるとする考え方)

CGW:なるほど、ただバーチャルなアバターということですと、いわゆるVtuberの方々が使っているような、アニメ的なセルルックのアバターが人気を集めています。そういったアバターと比較したときの、バーチャルヒューマンアバターの特徴はどのようなものでしょう?

畠山:確かにエンタメ的な活動であれば、私もそういう二次元的なアバターが強いと思っています。ただ人間の社会活動って、エンタメなカジュアルシーンもあれば、非エンタメなフォーマルシーンもありますよね。バーチャルヒューマンに優位性があるとするならば、フォーマルシーンにもハマることだと思います。カジュアルシーンでもフォーマルシーンでも網羅的に社会活動ができることが、バーチャルヒューマンの強みだと考えています。

CGW:なるほど、immaは様々な企業の広告に起用されたりとフォーマルシーンでの活躍も目立っていますね。

今回オーディションを行う2名のバーチャルヒューマン

CGW:今回バーチャルヒューマンプロジェクトに際して、配信者を募集したことの狙いはどういったものなんでしょうか。

畠山:これから先、バーチャルヒューマンタレントの人数を増やしていきたいという思いからです。もともと私は「にじさんじ」や「ホロライブ」等のVtuber業界をリスペクトしているんですが、そこの強みはコミュニティ化されていることだと思うんですね。

Vtuber意外の一般YouTuberでもコミュニティ化されていて、コンテンツもほぼコラボばかりだったりするじゃないですか。それでやれることの幅が増えたり、この人とこの人の絡みが面白いよね、みたいなファンの楽しみ方も増えたりして、コミュニティ化によってエンタメの質が上がっていると感じます。そのためにはまず人数を増やさなければいけないと思いました。

また、弊社の中長期的な目標として、「バーチャルヒューマンで市民権を得たい」というものがあります。VTuberがそうなっていったように、まずはバーチャルヒューマンも一般の方に知ってもらいたい、そのためには一定の大きさの市場を作っていかなければならないですから。

2023年6月18日にANOMEプロジェクトからデビューした美姫仁奈にきびの初配信

なぜバーチャルヒューマンを配信者へ?バーチャルヒューマンとVtuberの違い

簑田葉月氏(以下、簑田):セルルックなアバターのVTuberさんとの違いについて補足しますと、VTuber含め、そういったアバターを使った活動が、タレントとしてはデビューしたいけど顔出しはしたくない、という方々の受け皿になっている状況があります。ただ、セルルックなアバターはちょっと自分の価値観とは違うな、と考えている層も一定数存在します。そういった方々の価値観に近いアバターとして、我々のバーチャルヒューマンを活用していただければと思います。

CGW:オーディションの特別審査員に人気ゲームストリーマー SHAKA氏、yokaze代表取締役社長 岩永太貴氏(元ANYCOLOR株式会社COO)が起用されていますが、それぞれ、バーチャルヒューマン配信者にとってはライバルとも言える業界の方々ですよね。そういった方々に敢えて審査員を引き受けていただいた意図は何なのでしょうか。

畠山:リアルストリーマーとVTuber、両方のスペシャリストの視点を取り入れたかったからです。リアルストリーマーのみを見ていて、VTuberを外見で敬遠してしまっている視聴者も存在します。私自身も最初はVTuberを少し敬遠していましたが、実際に見てみると非常に面白かったんです。そのため、私たちのバーチャルヒューマンの配信者が「バーチャルタレントは面白い」と思ってもらえる入り口になったり、リアルストリーマーとVTuberの視聴者の橋渡しの役割を果たせればいいなと考えています。このような思いから、お二人に特別審査員として参加していただくことになりました。

タレントの価値観を活かすオーダーメイドマネジメントとは

CGW:では次に、技術的なことや配信の設備についてお聞かせください。バーチャルヒューマンをアバターとして配信することで、作業フローや設備は一般的なVTuberのそれと違いはあるのでしょうか?

畠山:基本的なフローとしては違いはありません。ただ、これまではバーチャルヒューマンのようにフォトリアルなアバターを使って配信するとなると、モーションキャプチャの機材を使って、部屋をスタジオ化して、高価なソフトウェアを使って、費用も最低でも1000万円からかかるような大掛かりなものにならざるを得ませんでした。

しかし今回弊社が手がけるシステムでは、高性能なPCとiPhoneがあれば配信可能になっています。やっぱり、まずはタレントを増やしていきたいというところから始まっているので、既存のVTuberと同じように一般家庭から配信できるようにしています。

CGW:必要な設備のハードルを下げることで、参入者の数を増やす狙いがあるんですね。そういったシステムはどういったものを使っているのでしょうか?

簑田:詳細はお答えできないんですが、アバター自体はUnreal Engineを使って動かしています。それらに自社で研究してきた技術などを組み合わせて、誰でも簡単に操作でき、配信できる形にしています。

CGW:では最後に、配信者オーディションについてお聞きします。今回のオーディションは、どのような方に応募していただきたいですか?

畠山:我々としては、どういった人というのはないですね。人間の面白さというのは色々あると思っていて、色んな面白さ、色んな魅力、色んな動機がある中で人生を選択すると思うんです。その上で、バーチャルヒューマンって自分の肉体やこれまでの人格に左右されずに活動できるものなので、極端な話、これまでと180度違う方向にシフトして、全く新しい人格でやっていくことも可能です。

そんな中でも、自己実現したいとか、自分の人生をこういう風にしたいという思いが強い人ならより良いですね。配信業界って色んなタレントさんがいて、みんな面白いので、そんな中で戦っていけるような面白さやスキルが必要だとは思うんですが、それも含めて色んな人が来てくれればいいなと思いますね。

簑田:タレントとして活動していくというのは、やっぱり世間一般のお仕事とは違ってくると思います。配信活動を通じてファンの皆さんと大きくなっていくということになるんですが、そういった才能が、バーチャルヒューマンというアバターを通じて、活躍できる場所を提供したいという思いがあります。

「ANOME」プロジェクトとしては、「オーダーメイドマネジメント」と内部では呼んでいるんですが、配信者個人に合わせて、画一的なやり方ではなく、それぞれの価値観や強みを活かした形で配信活動のサポートができればいいなと思っています。なので「誰にもこれは負けないな」という強みがある人に来ていただきたいですね。

畠山:僕らは「人生大好転」という企業理念を掲げているので、タレントさんの人生を預かるつもりでやっていきます。デビューまでしっかり支えていくので、人生大好転したいと思う人が来てくれたら嬉しいですね。

CGW:今回はありがとうございました。

募集要項

・18歳以上日本在住
目安として2023年8月末時点で18歳以上が対象
外国籍の場合は、日本国内での芸能活動に関して適切なビザを持っている(あるいは今後取得できる)人物
・1年以上にわたり、日本国内を中心に継続的に活動できる
・特定のプロダクション又はレコード会社等と拘束力のある契約を締結していない(例:専属契約・専属実演家契約等)
所属していても合格後に契約解除できる場合は応募可能
・月間60時間以上の配信ができる
・都内在住か都内・都内近郊に引っ越し可能
・仕事として責任感を持ちながら活動を楽しめる
・体調及び精神面が健全な方

歓迎要件
・配信活動の経験、実績がある(ジャンルは問いません)
・ゲーム関連の実績がある(大会入賞、ランキング上位など)
・日本語に加え、英語もしくはその他の言語を話せる

オーディションへの応募はこちらから

TEXT_オムライス駆
EDIT_山下一貴 / Itsuki Yamashita(CGWORLD)