株式会社マウスコンピューターは、クリエイター向けPCブランド「DAIV」のデスクトップのシャーシ(筐体)をリニューアルし、1月18日より発売する。新シリーズ名は「DAIV DDシリーズ」。

従来型のシャーシは、著しく発熱量が増えた近年のハイエンドCPU・GPUに対応することができなかった。新型DAIVは、シャーシの内部空間を大型化し、エアフローを大幅に改善することで、24コア32スレッドの第13世代インテル Core i9 やNVIDIA GeForce RTX 4090などの最新のハイエンド向け機材の搭載が可能になった。

本記事ではリニューアルされた「DAIV」の特徴を従来モデルと比較しながら紹介する。なお、CGWORLD編集部では、Houdini、Unreal Engineを用いた、ハイエンドCG向けのパフォーマンス検証を予定している。ご期待いただきたい。

新モデルは「DAIV DDシリーズ」。NVIDIA GeForce RTX 4090/RTX A6000搭載モデルより発売開始

シャーシが変更された新生DAIVは「DAIV DDシリーズ」として発売。インテル Core i9-13900KFプロセッサー、GeForce RTX 4090を搭載した「DD-I9G90」(税込:679,800円)と、インテル Core i7-13700KFプロセッサー、NVIDIA RTX A6000を搭載した「DD-I7N60」(税込:999,900円)の2モデルがまずはフラッグシップとしてリリースされた。GPUにNVIDIA RTX 4000番台の下位モデルを搭載した機種や、CPUにAMD Ryzenシリーズを搭載した機種も、今後登場予定とのこと。

▲DD-I9G90
▲DD-I7N60

DAIVとは?

DAIVとは、マウスコンピューターのクリエイター向けPCシリーズだ。

2016年にリリースされて以来、デスクトップとノートPCの両モデルで、イラスト、写真、3DCG、映像など、様々な用途に合わせたマシンが発売されている。3DCG向けモデルについては、MayaやAfter Effectsなど標準的な3DCG・映像ツールの運用に適合したバランスの取れたパーツ構成やコストパフォーマンスの高さ、そして黒を基調にしたスタイリッシュなデザインが、これまでCGプロダクションの現場で高く評価されてきた。

製品開発には日本を代表する広告ビジュアル制作会社株式会社アマナが協力に加わっているほか、2000年代後半より3DCGクリエイター市場に向けていち早く製品リリースを行ってきたマウスコンピューターの知見を活かし、クリエイターが使いやすいスペック・筐体デザインが採用されている。こうした特徴は筐体デザインにも表れており、クリエイティブの現場では起こりがちなスタジオ内のPCの移動や、頻繁なケーブルの抜き差しの負担を軽減するために、持ち運びに優れたハンドルキャスターが採用されている。

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新型DAIVと従来のDAIVとの大きな違いは?

▶内部空間の大型化で大型グラフィックスカードの搭載が可能に

今回のリニューアルで一番大きい変化はシャーシの内部構造の大型化だろう。近年のハイエンド向けのCPU、GPUの発熱量増加やサイズの大型化に対応するため、新シャーシでは内部空間が広く設計されるようになった。
大型グラフィックスカードを最大2基搭載可能なスペースが確保されている。年々、大きく重くなるGPUに対応するために最初から支持ステーを搭載している点も注目したい。大型GPUを搭載したモデルはねじ止め部分に力が掛かって、PCIスロットの接点がズレることがあり、支持ステーによってしっかり固定することで、故障を未然に防ぐことができるのだ。

▶エアフローが大幅改善し、高い排熱効率が実現

サイズの大型化だけではなく、ハイエンド機材の安定的な運用を実現するためには高い排熱処理が欠かせない。新型DAIVにおいては、発熱量の多くなったハイエンド機材を冷却するために、空冷ファンの搭載可能数も、従来の2基から6基へと大幅に増加。水冷での冷却時には、従来の120mmラジエーター1基から、240mmラジエーターを最大2機同時に搭載することが可能となった。加えて、同時に排熱要求が高くなる電源ユニットについても、専用の吸気穴と排気穴を設けることで、電源の排熱をPC内部で滞留させることなく、別ルートで排熱することができる点にも注目したい。

▶シャーシ全体のサイズはやや大型化。

従来モデルと比較して今回一番変化を感じたのは、筐体サイズの大きさだ。従来モデルは幅190mm、高さ490mmだったのに対して、新モデルは幅220mm、高さ525mmとなっている。編集部でも実際に両モデルを横に並べて比較してみたところ一回り大きくなっているのを確認できた。ただし、シャーシのデザインが滑らかな曲線を描いているからか、サイズほどの圧迫感は感じなかったのと、一般的なデスクの下に置いても余裕を持ったサイズ感だった。

▶持ち運び便利なハンドルとキャスターは継承。USBポート、電源はシャーシ天面に集約

次に、新型DAIVのシャーシ全体のデザイン・インターフェースについて説明したい。まず、既存ユーザーにとって好評だった移動用のハンドルやキャスターなどは新モデルにも受け継がれた。ハンドルについてはパソコンの重量に耐えられるように強度を高めるとともに、滑りにくくするためにラバーグリップを採用されている。実際に手でもってみると、シャーシの素材自体が軽量化されたのか、見た目ほど重量感は感じなかった。

一方で旧モデルで特徴的なデザインのひとつだったダイヤル式の電源はボタン式に変更された。こちらは確かにデザイン性が高くDAIVらしさを構成していたが、電源であることが分かりづらかったのも確かだったので、惜しい気もするが英断といえるだろう。この電源ボタンは、USB、イヤフォンジャックなどのインターフェースとともに、シャーシの上部にまとめられた。PCを机の下に設置して使用する場合、着座したままUSBの抜き差しができるのは便利だろう。

▶脱着しやすいマグネット式のダストフィルターが採用

脱着可能なダストフィルターがフロントパネルとシャーシ底面の2箇所で採用されたのも見逃せないポイントのひとつ。マグネット着脱式のために取り外しが簡単で、清掃も手軽に行うことができる。機材の取り扱いが得意でなくても、冷房のフィルター掃除を行う感覚で掃除できる気軽さが魅力だと感じた。

まとめ

新型DAIVは、従来モデルの良い部分は継承しつつも新世代のクリエイター向けPCとして新たに作り直された印象だ。シャーシの内部空間が広く再設計されたことで大型のパーツの搭載が可能になり、ヘビーな制作要求にも応えられるようになった。一方で、ハードディスクドライブを搭載していたフロント側ドライブベイを廃止して、冷却ユニットが占用する場所に変更したり、最新のトレンドであるM.2ドライブをメインに据えるなど、新時代のクリエイター向けPCのあり方に沿ったものになっている。

新生DAIVは最新の環境にフォーカスを合わせたPCとして、自作ユーザーからも注目されると思われる。今後予定されているという、よりリーズナブルな下位モデルの発表も楽しみだ。

レビュー協力:澤田友明氏(コロッサス