>   >  劇場アニメーション長編『009 RE:CYBORG』 神山健治監督&サンジゲン中核スタッフインタビュー
劇場アニメーション長編『009 RE:CYBORG』 神山健治監督&サンジゲン中核スタッフインタビュー

劇場アニメーション長編『009 RE:CYBORG』 神山健治監督&サンジゲン中核スタッフインタビュー

神山健治監督、待望の新作『009 RE:CYBORG』(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)
2012年秋の劇場公開を目指し、現在、鋭意製作中という本作は、キャラクターアニメーションをフル 3DCG で描き、さらに立体視作品に仕上げるという。そんな本作のメイキングについて、神山監督と、制作プロデューサー 松浦裕暁氏並びにアニメーションディレクター 鈴木大介氏(共にサンジゲン)に本プロジェクトの意気込みを語ってもらった。

神山健治監督による新たな映像表現

サイボーグ戦士達の活躍を描いた、石ノ森章太郎の原作漫画『サイボーグ 009』。この原作を、2013年に舞台を移し、新たな物語として映像化したのが、『009 RE:CYBORG』(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)(以下『009RE』)である。
『009』自体はこれまでにも何度かアニメ化されているが、本プロジェクトでは日本特有のキャラクターアニメーションを全編 3DCG で描くのだという(※背景等には作画も採り入れるとのことでフル 3DCG ではないとのこと)。
本作を指揮する神山健治監督は、これまでにも『東のエデン』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 シリーズ等で、積極的に 3DCG を使ってきた。その神山監督が、日本アニメ特有のキャラクター表現を作画ではなく 3DCG ベースで描いてきたサンジゲンとタッグを組み、満を持して挑む『009RE』の映像表現とは、一体、どのようなものなのだろうか。


『009 RE:CYBORG(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)』PV
© 2012『009 RE:CYBORG』製作委員会

セルアニメ調の 3DCG 作品 への挑戦

一般的に、3DCG ベースのアニメーションというと、ゲームに登場する写実的な映像や、ピクサー作品のようにデフォルメされた映像を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
しかし『009RE』は、現在、公開されている PV を観ると分かるように、3DCG にも関わらず、セルアニメに似せた映像に仕上がっている。
「企画初期の段階からキャラクターはフル 3DCG で制作することが決まっていました。当初はフォトリアル(写実的)な映像を目指していたのですが、3DCG で作ると限界がない分、どこまでリアルを目指せばいいのか......落とし所が見つからなかったんです。そこで、セルアニメ調の 3DCG を採用しようと」。
これは、日本のアニメーション独自の魅力でもある「(現実には存在しない)漫画絵で作るリアルさ」を 3DCG で表現しよう、という試みなのだと言う。

3DCG アニメーションの手応え

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の頃から、背景やモブキャラなどに、3DCG を積極的に採り入れてきた神山監督は、アニメーションに 3DCG を使うメリットを、どのように考えているのだろうか?
「一番は、トライ&エラーを繰り返せる時間が、格段に増えたという点。2D でアニメを作ると、どうしても作画にカロリーを奪われがちで、試行錯誤が難しい。後は、3DCG ならではの表現のおかげで、演出の幅が広がったという点ですね」。
この 3DCG ならではの演出......というのが、主人公 島村ジョー(009)が、特殊能力である加速装置を使う場面だ。これは、PV の中でも少しだけ見ることができるのだが、009だけが高速で動き、その他の雨やキャラクターがスローモーションに見えるというもの。映画『マトリックス』 でお馴染みの、ハイスピードカメラ撮影によるスロー映像を思い出してもらうと分かりやすいだろう。
作画の場合、例えばキャラクターが走っている場面を、スローモーションで表現しようとすると、通常の6倍程度もの作画枚数を描いてようやくスローに見える......という具合に、手間がかかる割に、あまり効果的な映像が得られない。それを、3DCG を使うことで、効率的に表現できるようになったわけだ。

009場面写真

© 2012『009 RE:CYBORG』製作委員会

アニメ作品における 3DCG の課題とこれから

さて、ここまでは 3DCG の利点を神山監督に紹介していただいたが、一方で、まだ作画には及ばない点もあるはず。
「そうですね......例えば、クローズアップした時の、キャラクターの細かい表情や顔の中の情報量の少なさなどは、これから調整していかなければならないと思っています。作画だと線の太さひとつとっても、強弱を付けているものですから、情報量という意味では、まだ作画のレベルまでは至っていない。しかし、サイズアップした時のために、情報量の多いモデルを別に用意しておくなど、ライブラリを充実させていけば、最終的に作画に近いクオリティまで近づけることができるはずです」。

その他にも、デジタルならではの利点が仇になっている部分もある、と神山監督は語る。
「"正確すぎる"ってことですね。正確さっていうのは、実はアニメ作品の中では邪魔になるのです。2D アニメーションは、人間が手描きするからこそ生まれる、歪み、アニメーターの個性、誇張表現こそが、最大の魅力とも言えますから」。
日本や世界のアニメーションファンを魅了してきた、"手描きの味"と言う不確定な要素。作画アニメーターの個性が作りだす、その魅力を、デジタルで表現することが難しい......というのはもっともな話に思う。とは言え、3DCG の中にも、この "個性" が実は存在すると、神山監督は言うのだ。
「サンジゲンのスタッフを見ていると、たまたま鉛筆ではなく PC を使っている作画マンなんだな......とよく思います。彼らは作画マンと同じように、隙があれば自分達の個性を 3DCG 上に表現しようとしてくれます。その持ち味を、いかに引き出せるか。そして、それを殺さずに演出できるかっていうのが、僕の仕事ですね」。
このように、いくつかの課題はあるものの「現時点ではフル 3DCG にしたことによるメリットの方が大きい」と神山監督は語る。

2013年を舞台に、新しい物語が展開

さて、神山監督とのお話の最後に、気になるストーリーについても少しだけ話を聞いてみた。
「70年代に描かれた原作には、ポリティカル(政治的)な題材やテーマを扱ったエピソードが多くある。小さな多国籍軍だった009達が、21 世紀という時代に生きていたらどうしていたのか? 舞台が2013年ということで原作とは多少変更点もありますが、006(張々湖)の経営する中華飯店がようやく繁盛していたりと(笑)、原作から続くキャラクター達の悲喜交々も描く予定です」。
インタビュー時(2011年11月)はプリプロダクション真っ只中だった『009 RE:CYBORG』。原作ファンにとっても、アニメーションファンにとっても、公開が待ち遠しい作品になりそうだ。

Profileプロフィール

Kenji Kamiyama

Kenji Kamiyama

神山健治(かみやま けんじ)
1966年(昭和41年)3月20日生まれ。埼玉県出身。
代表作『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズ、『精霊の守り人』、『東のエデン』他

『009 RE:CYBORG』(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)

『009 RE:CYBORG』(ゼロゼロナイン リ・サイボーグ)

西暦2012年 秋 全国公開予定
原作:石の森章太郎
脚本・監督:神山健治
キャラクターデザイン:麻生我等
アニメーションディレクター:鈴木大介(サンジゲン)
制作プロデューサー:松浦裕暁(サンジゲン)
プロデューサー:石井朋彦
共同制作:Production I.G / サンジゲン
配給:Production I.G / ティ・ジョイ

© 2012『009 RE:CYBORG』製作委員会
http://009.ph9.jp/

スペシャルインタビュー