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モニタに表示された 3DCG 空間の中にキャラクターや建築物、自然物などのモデルを作っていく作業をモデリング、担当する人をモデラー(あるいはモデリングアーティスト)と呼ぶ。株式会社ディレクションシーズのモデラーに、日々の仕事内容をインタビューした。

※本記事は 「CGWORLD Entry vol.4」掲載記事を転載したものです



プロのモデリングでは
高い完成度が要求される

現在同社で主に背景モデリングを担当する松本強太さんは、専門学校時代から背景モデラーを志していたと語る。「まだまだキャラクターを 3DCG でリアルに表現するのは難しい時代でした。その反面、背景なら比較的リアルな表現が可能で、しかも多種多様なモデル作りに挑戦できる幅の広さが面白いと感じ、強く惹かれましたね」。プロジェクトの進捗に応じて、キャラクターのモデリングやセットアップ、レンダリングなどを担う場合もあるが、一番楽しいのは背景モデリングだと笑顔で断言する。
今では自分の仕事に手応えを感じている松本さんだが、6 年前の入社直後には苦い経験をしたとふり返る。「初仕事の内容は鮮明に覚えていますよ。どこにでもあるような赤い提灯を作るのに、1 週間もかかりました。今なら数時間で作れるような簡単なモデルですが、当時はどう作れば良いのか見当がつかず、無駄な作業も沢山やりました(苦笑)」。ポリゴンの頂点数が 5 個以上ある、ポリゴン数が足りない、逆に少ない、UV がちゃんと展開されていない、マテリアルの設定が不十分、テクスチャが汚い等々、ありとあらゆる失敗を重ねたそうだ。指示されたリテイクは 5 ~ 6 回に上り、期待に応えられない自分自身に嫌気がさしたと語る。「学生は行き当たりばったりで作って、最終的な見た目が良ければ問題ないと思いがちです。けれどプロのモデリングでは、全ての要素において高い完成度が要求されます」。
松本さんの成長を見守ってきたアートディレクターの國雲好隆さんは、新人の多くが同様の道を通ると解説する。「私自身も新人の頃に似たような洗礼を受けました。それでも本当にモデリングが好きで、この仕事に入れ込める強い気持ちがあれば成長していけます」。想像力を膨らませ、自分のオリジナリティを反映させた入魂のモデルを世に送り出す緊張感と喜びを味わえる日まで諦めずに挑戦を続けてほしいと、國雲さんは語った。

モデリングのワークフロー

STEP1 情報収集

情報収集

実作業に入る前に、まずはアートディレクターなどに質問しながら依頼内容をしっかりと把握する。たとえば映像内のカメラが固定されているなら、カメラに映る範囲だけを作り込めば良い。もしカメラが広範囲を移動するのであれば、シーン全体を作り込む必要がある。曖昧な理解のまま作り込んでしまうと、作業が無駄になったり、後でリテイク対応に追われることになる。また、必要に応じて資料も集める。上は國雲さん自身が香港で撮影した資料写真だ。写真撮影は資料やテクスチャ用素材を得られるのに加え、構図やライティングの勉強にもなるので、モデリングのセンスを磨きたいなら積極的に取り組んでほしいと國雲さんは語る。

STEP2 レイアウト

情報収集

シーンの最終形を想像しながら、レイアウトを決定する。「取りあえず必要そうなモデルをバラバラに作り込んで配置してしまうと、一枚の絵として見た場合のクオリティが低くなりがちです。しかもカメラに映らない部分まで作ってしまったり、何かと無駄が多くなります。3DCG であっても、2D の絵を描く場合と同様、どんな絵作りを目指すのか最初から意識する必要があります」と國雲さんは解説する。加えて、この段階でライティングの最終形も想像しておくそうだ。「たとえば単調な画面になりそうな場合は、ライティングによって影を落とすことで変化をつけられます。ライトは大切な演出要素の 1 つです」。

STEP3 モデリング

モデリング

レイアウトが決定したら、個々のモデルをポリゴンで作り込んでいく。背景モデルの場合は、極端なクローズアップで撮影されるなどの特別なケースを除けば、サブディビジョンサーフェス(※1)を適用することはないそうだ。モデリングと並行して、テクスチャ用の UV(※2)も展開していく。比較的シンプルな背景なら 1 週間、作業量の多い複雑な背景であれば 4 週間がかりになることもある。カメラの近くに樹や森を配置する場合などはポリゴン数が 100 万個近くになったりもするが、基本的になるべくポリゴン数をかけずにクオリティを上げるよう工夫していると松本さんは語る。

※1 サブディビジョンサーフェス:ポリゴンの各面を細かく分割していくことで、滑らかな曲面を表現する手法。多くの 3DCG ソフトに実装されており、人体のような有機的な曲面をもつキャラクターをモデリングする際に多用される。
※2 UV(ゆーぶい):ポリゴンモデルにテクスチャを設定する際には、UV マッピングという手法が多用される。U 軸と V 軸からなる座標系の値をポリゴンに割り当て、この値にテクスチャを追従させる。UV マッピングを用いる際には、事前に UV 座標を展開し、値を編集しておく必要がある。

STEP4 マテリアル&テクスチャ設定

マテリアル&テクスチャ設定

モデリングが完了したら、マテリアルとテクスチャを設定していく。加えて、この段階でライトも設定する。「マテリアルやテクスチャの色はライティングに左右されて変化します。マテリアルとテクスチャの設定を完了してからライトをあてても、結局やり直しになってしまいます。だからマテリアル、テクスチャ、ライティングの工程は一方通行ではありません。行ったり来たりを繰り返し、徐々に完成度を上げていきます」と松本さんは解説する。また、テクスチャを使ってシーンのクオリティを効果的に高めるため、ディスプレイスメントマッピングやノーマルマッピング(※3)も使用するそうだ。


※3 ディスプレイスメントマッピング/ノーマルマッピング:本来は平坦なポリゴン面上に、テクスチャを使って擬似的な凹凸を表現する手法。ディスプレイスメントマッピングの場合はテクスチャの明暗で調整し、ノーマルマッピングの場合はテクスチャの RGB の値で調整する。どちらも繊細な凹凸を表現できるため、キャラクター、背景を問わず多用されている。

COLUMN 学生時代にデッサンをやってほしい

学生時代に学んでおいて良かったことは? という質問に対して、松本さんはデッサンと答えた。「対象の形を立体的に把握する力や、対象の部分だけでなく全体のバランスをみる力はデッサンを通して養うことができます。これらはモデリングでも必要な力です」と國雲さんは補足する。加えて、デッサン力はキャラクターのモデリングでも重視されるという。「筋肉の流れを読み取って、その流れをポリゴンで再現できる人は少ないです。見た目の形に合わせて機械的にポリゴンをつなげるだけでは綺麗な形状になりませんし、アニメーションを付けた時に破綻します」。下のように、指の間のポリゴン面の流れにまで神経を行き渡らせた造型をしてほしいそうだ。
コラム

TEXT_尾形美幸(EduCat)

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設立日:2004 年2月9日
資本金:300万円
所在地:神奈川県川崎市川崎区小川町11-10 第 10 平沼ビル4F
TEL:044-211-8078
URL:http://www.d-seeds.com


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