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前作から 6 年の時を経て、シミュレーション RPG『サモンナイト』シリーズの新作が発売された。PSP 対応の本作は、ゲーム画面をフル 3DCG で開発する一方、イベント画面には Live2D Cubism(以下、Live2D)を導入している。本作における Live2D の導入理由や開発の舞台裏を紹介しよう。

2Dグラフィックス表現の新たな可能性を開くツール

飯塚武史氏が描く多彩なキャラクターたちは、『サモンナイト』シリーズの人気を支える大切な要素だ。Live2D の導入によって、本作のイベント画面では飯塚氏のイラストの魅力を保ったまま、キャラクターに感情豊かな動きを付けることが可能となった。「飯塚さんのイラストがそのまま動くという評判を聞いて、発売前からユーザーの期待値は高まっていましたね」と、プロデューサーの深澤智和氏は語る。
Live2D は、ラスター形式のキャラクター画像を複数のパーツに分割し、各パーツに平面ポリゴンを貼り付け、それらを 2D モデルとして再構築する。さらに、そのモデルを変形させることで任意のモーションを作成できる表現ツールだ。従来の 3DCG によるキャラクター表現とは大きく異なるアプローチだが、一方で、2D グラフィックスに慣れたアーティストやユーザーとの親和性は非常に高く、最近のゲーム開発では高い評価を得ている。バンダイナムコゲームスでも、Live2D を導入したゲームやアプリを数多く発売してきた。
しかし、約 50 体のキャラクターを Live2D で構築し、2 体のキャラクターを 1 画面内で同時に描画することで会話シーンまで表現した本作の試みは、過去に類をみないものだという。ところが、開発を担当したフェリステラの吉田圭太郎氏は、当初予定では Live2D を活用する割合が今よりさらに多かったと語る。「PSP というハードの制約上、制作してみたものの、残念ながら搭載を諦めたデータもあります。将来的には、会話シーンだけに限らず、もっとダイナミックな表現でも Live2D を使っていきたいですね」。今回の開発を通して、2D 表現の新たな可能性を大いに感じたとふり返ってくれた。

モデル

Live2Dで構築されたキャラクターたち。これらを含め、約50体のキャラクターが表現された

導入の決定打は、アニメーション表現における自由度の高さ

本作での Live2D の使用は、企画の初期段階から検討されていたと吉田氏は語る。「Live2D を選択する決定打になったのが、アニメーション表現の自由度の高さでした。最初に決め手となる始点と終点のキーポーズを設定でき、その間の中割りも柔軟に調整できる。細部の動きにまでこだわりを反映できるツールだと感じました」。こうして Live2D の導入を決定したフェリステラは、自社のマスコットキャラクターを使い、Live2D による試作を開始した。「2 週間くらいの試行錯誤で、キャラクターのセットアップからアニメーションまで、ひと通りの工程を理解できました。当社のアーティストは 2D グラフィックスでのキャラクター表現に慣れていたので、2D キャラクターのパーツを動かすという Live2D のやり方には抵抗感がありませんでした」とグラフィックデザイナーの岩垣知恵氏は語る。

細やかな動きにもこだわりクオリティアップを実現

この試作で手応えを感じた同社は、開発後期から Live2D を担当するアーティストを 3 名に増やし、本格的な制作をスタートした。元々 2D グラフィックスの経験者が多かったこともあり、Live2D での開発はスムーズに進行したという。「ゲーム機でのデータ表示や組み込みといった技術面に関しては、Live2D 開発元であるサイバーノイズのサポートを受けました。けれどデータの制作自体は、自分たちだけで十分に対応できました」と岩垣氏は語る。
キャラクターの重要度によって制作期間に多少のちがいはあったが、平均すると 1 体あたりセットアップに 3 日、アニメーションに 1.5 日を要したという。Live2D 導入によって細やかな動きにまでこだわれるようになったそうだ。「素材となるキャラクターのイラストが良質であるほど、Live2D で作ったモデルの見映えは良くなります。美しい 2D イラストと Live2D の相乗効果で、クオリティアップを実現でき、キャラクターの魅力やゲームの面白さも高まったと感じています」と吉田氏は語る。
キャラクター表現の新境地に挑戦した本作と Live2D に、ぜひ注目してほしい。

Topic 1
キャラクターモデルのセットアップ

モデル モデル

動くパーツを切り分けた後 Live2D で再構築する

Live2D による制作は、飯塚氏のイラストを切り分けることから始まった。「動くパーツは全部切り分ける必要があるので、細かいアニメーションを設定したいキャラクターほど時間がかかりました」と岩垣氏は語る。左側は切り分け後の画像で、これらを Live2D で再構築すると右側の画像となる。PSP の解像度でもキャラクターの表情を鮮明に表示させるため、あえて前髪から顎までのパーツのみ、大きめのサイズで作っている。「全部のパーツを同じサイズにするよりも、ユーザーが最も注目する顔のパーツだけを大きくした方が、より印象的な仕上がりになると判断しました」と吉田氏はその理由について語ってくれた。

Topic 2
アニメーションのセットアップ

アニメーション

キーポーズだけでなく臨機応変に中割りも調整する

キャラクターの再構築が完了したら、動きを付けていく。上では、1 枚目と 4 枚目のキーポーズを設定した後、中割りの設定を行なっている。自動補完だけでは違和感がある部分が多いので、細かくキーを打って調整したと岩垣氏は語る。「基本的には飯塚さんのイラストをキーポーズにしていますが、完全に合わせてしまうと動きを付けた際に違和感が生じる場合もありました。そんなときは自然に見えることを重視して、実際のイラストよりも移動幅を小さくするといった判断をしました」。

TEXT_尾形美幸(EduCat)
PHOTO_弘田充

Live2D

サモンナイト 5

対応機種:PlayStationPortable/ ジャンル:シミュレーション RPG/発売日:2013 年 5 月 16 日発売/価格:5,980 円(パッケージ版)、5,380 円(DL 版) www.summonnight.net/sn5