映画『シン・ゴジラ』のVFXは白組を中心に多数のプロダクションが参加している。今回は中核となったアーティストたちに取材。制作のポイントを聞いた。まずはゴジラのモデリングから解説していこう。
【お知らせ】
8月29日に配信したニコニコ生放送「CGWORLD CHANNEL」映画『シン・ゴジラ』メイキングスペシャルをタイムシフトで配信中!
本作の制作に携わったスタッフがCGWORLD本誌にも掲載したメイキングを生実演!
タイムシフトは9月5日まで。是非ご覧ください。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 217(2016年9月号)からの転載となります
TEXT_草皆健太郎(BOW)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
映画『シン・ゴジラ』予告2
© 2016 TOHO CO.,LTD.
様々な可能性を検討しつつ
生み出されたゴジラモデル
ゴジラのモデリングを担当したのは白組の上西琢也氏。根っからのゴジラ好きで、3歳の頃からゴジラを見続けてきたというゴジラマニアだ。今回の作品は念願のゴジラ造形ということで心血注いで制作したという。
本作に登場するゴジラは造型家の竹谷隆之氏が作成した雛型が3D化され、白組に提供されている。それを基にZBrushと3ds Maxとで、何度もやり取りしながらモデリングされた。リトポロジーには3ds Maxをメインに使用し、ZBrushも補助的に使用。完成したものをMayaに持ち込んでいる。雛型自体も何度か修正が加えられたため、都度データを位置から見直さなければならず、しかも"腕だけ前回のもので"のような部分移植もしなければならなかったので、制作中はかなり大変だったようだ。また、庵野総監督自身もモデリングの段階で様々な可能性を模索してリクエストを出していったため、その都度パターンを出して確認をくり返し、最終的なモデルに行き着いている。
今回のゴジラは「初代ゴジラの着ぐるみっぽくする」というのも庵野総監督からの要望として常に言われ続けていた。これに関して上西氏は「書いて字のごとく怪しい獣なので、怪しさがないと怪獣のキャラクター性として成り立たくなるため、そこは大切にしました。見たことのある生き物ではなく て、まったく新しい概念でとらえないといけない。最終的に落ち着いたところは"着ぐるみがそこにある感じ"で、実在感もあるけど作り物のようなイメージです。その意識にたどり着くまでがすごく大変でした」と、かなり造詣深い話をしてくれて、筆者も大いに納得させられた。
ゴジラ 第2形態モデリングされたゴジラは全3種類で、これはそのうちの第2形態のモデル。こうしたゴジラの形態は前例がなく、制作にも時間がかけられている。庵野総監督の指示により、部分的に深海魚のラブカやミツクリザメなどを参考にしているという。庵野総監督も最終的には非常に気に入ったそうだ。
制作中のモデル。当初はターンテーブル上で回してチェックをしてもらっていたが、途中からは実際のカットに入れ込んだ状態でのモデルチェックが行われた
ZBrushモデル
3ds Maxモデル
ゴジラ 第3形態第3形態は第4形態に近くはあるが、まだ進化の過程といった体を醸し出している。目の形や色味に関しても様々なパターンを出して検討したというが、最終的には竹谷氏の作成した雛型に準拠したデザインに落ち着いた。デザインに手を加えると、竹谷氏が生み出した絶妙なバランスがどうしても崩れてしまい、上手くいかなかったのだそうだ。「探り探り制作を続けてきましたが、何をしてもやはり最後は竹谷さんの雛型に戻っていく。雛型がそれだけ素晴らしいということだと思います」(佐藤氏)。
制作中のモデル
ZBrushモデル
3ds Maxモデル
[[SplitPage]] ゴジラ 第4形態第4形態の3Dモデル。初代ゴジラの恐ろしさを醸し出しつつも、今までにないゴジラである。3Dスキャンから起こしているとはいえ、ゴジラの凹凸はかなり細かく、スキャンではとらえきれない部分もあるため、1ヶ月をかけて雛型とまったく同様の凹凸を作成した。竹谷氏自身、その凹凸を雛型上で作り上げるためにゴーヤのような形状の道具でスカルプトしていたそうで、上西氏はそれを基にアルファマスクを作成。それを使ってZBrush上で再現している。最終的にはリトポロジーした後、ディスプレイスメントマップ、バンプマップ、ノーマルマップなどをフルに活用して最終モデルをつくっている。最終的なレンダーモデルは100万ポリゴン程度になった。
制作中のモデル
ZBrushモデル
3ds Maxモデル
レンダリング後
ゴジラのマスク一覧
コンポジット時にゴジラの質感をコントロールしやすいように、通常のパスに加えて特殊なマスクが 各種用意されている。上西氏はコンポジターも兼任していたため、自分でコンポジットした際に必要と思われるものや、リクエストがあったものを組み込んでいったという。今回のゴジラは内部からにじみ出ているように、部分的に赤く発光している。その表現のため、コンポジットで調整するための9種類のマスクが作成できるしくみがつくられている。それ以外にも発光しないが目立たせたい赤の部分のマスクや、体から尻尾にかけてグラデーションをかけるためのマスクなども出力できるようになっていて、必要あれば随時出力して利用されている。
ベース素材
グラデーションマスク
発光用のマスク
赤い部分のマスク
マスク出力用アイコン一覧
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映画『シン・ゴジラ』
全国東宝系にて公開中
脚本・監督:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
准監督・特技統括:尾上克郎
出演: 長谷川博己、竹野内豊 石原さとみ
www.shin-godzilla.jp
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