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大規模、複雑化を続けるCG・VFXのコンテンツパイプライン。大量のデータを効率的に処理する、より緻密なキャラクターアニメーションを実現する、ツール同士の連携を高めるなど、制作環境に応じたツールカスタマイズのニーズは確実に高まっている。これらを進めるうえで最も標準的なプログラミング言語としてはPythonがあげられるだろう。

開発現場におけるニーズが高まる一方で、プログラマーの採用機会に恵まれないプロダクションではデザイナー自身がツール開発を担当しなければならない状況も多い。しかし、Pythonに限らずプログラミング言語を独習するのは困難で、途中で挫折してしまった経験のあるデザイナーも多いのではないだろうか。数ある教則本もプログラミングの基礎知識があることが前提で、まったくの未経験者が通常業務のかたわらに学べるようなものは少ない。

こうした中、バンタンではプログラム初心者でも週末に計3日間でPythonの基礎を学ぶことができるという 「Pythonキャリアカレッジ」が開講される。講師をつとめるビープラウドの清水川貴之氏に、コースの概要などについて伺った。

Pythonキャリアカレッジ

  • Python 3.5を対象に、基礎から応用まで週1日、全3回(合計18時間)で学べる特別コース。社会人・大学生・専門学校生が対象で、プログラミング未経験者からでも受講できる。レベル別に「基礎講座」「機械学習プログラミング講座」「Webアプリケーション講座」があり、清水川氏をはじめビープラウドの講師が指導。受講料は一括で180,000円(税込)、分割払で月々15,409円(税込み)から

    >>申込み・詳細はこちらから


ビープラウド

  • ビープラウドは、Pythonをメイン言語とした、 優秀なPythonistaが在籍するソフトウェア開発のプロフェッショナル集団。Webシステム開発以外にIT勉強会支援サイトconnpassの運営、Python研修やPython技術サポートなどのエンジニアのサポートにも力を入れている

    >>http://www.beproud.jp/

CGアーティストがPythonを学ぶべき理由とは

日本有数のPythonエンジニア集団・ビープラウドで、ITアーキテクトとして活躍しつつ、本講座でも講師をつとめる清水川貴之氏。清水川氏はCGデザイナーがPythonを学ぶメリットとして「汎用性・拡張性が高く、最初に覚えるべき命令数が少ないなど、プログラミング初心者にも最適。さらにCG・VFX分野のツールで標準になっており、業務に直結している」点をあげる。

  • 清水川貴之(ビープラウド)
    ビープラウド所属エンジニア。Pythonを用いたWebシステム開発、法人向け研修、技術サポートなどを主業務としている。清水川氏もまたITアーキテクトとして、主に業務に密着したデータ管理や流通システムなどを開発しつつ、Python研修の講師を担当している。大手通信キャリアや個人事業主などを経て2011年に同社に合流。「エキスパートPythonプログラミング」(アスキー・メディアワークス)の翻訳を手がけた

実際にPythonはMayaが2008年にサポートしたのをきっかけに、3ds Max、MotionBuilder、Houdiniなど、今では主要な3DCGツールでサポートされており、ツール同士の連携やパイプライン構築などに必須の言語となっている。ライブラリも非常に豊富で、Mayaユーザーに限定したMELではできないことが、Pythonでは可能になるメリットは大きいと言えるだろう。

「6月に開催された勉強会『PyCon night Tokyo』で、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのPaul Hildebrandt氏から『Inside the Hat: Python @ Walt Disney Animation Studios』、デジタル・フロンティアの齊藤弘氏から『VFX 業界における Python 活用事例』という講演が行われました。共に現場でPythonが重要な役割を果たしているという内容でした」(清水川氏)

もっとも日本のCGプロダクションでは10~15人規模の企業が多く、専任のテクニカルアーティストやテクニカルディレクターを雇用する余裕に乏しい。そんな状況でも現場のCGデザイナーがPythonを使用できれば、ちょっとしたツールのカスタマイズや制作が可能になる。実作業の自動化により、アーティスト自身の作業、または現場の作業効率が大きく改善されることになる。デザイナー自身の市場価値向上、キャリアアップにも直結することは間違いないだろう。現に当サイトの求人コーナーJOBSでもPythonを応募要件とする企業はゲーム・アニメ・実写VFXといったジャンル問わず、企業規模問わず増加しているようだ。

初心者でも挫折しない、これだけの理由

こうした状況をふまえて、ビープラウドではスキルや目的などさまざまな対象向けに、Pythonの研修講座を行っている。バンタンでも本年8月から「Pythonキャリアカレッジ」が開講した。内容に応じて3コースに分かれているが、ビープラウドは「Python 基礎講座」と「Python Webアプリケーション講座」を担当している。講座は同社の豊富な研修経験に裏打ちされた内容となっており、平日業務で忙しい社会人でも、週末短期間で無理なく学べる内容になっている。いずれも1日あたり6時間、計3日間で18時間のカリキュラムだ。

講習スケジュール


初心者向けの「Python基礎講座」ではPythonの概要説明から、基本構文、四則演算や論理演算、ファイルの入出力から基本的なデータ処理までを学ぶ。このようにプログラミングの初歩から段階的に学ぶことで、初心者でも無理なく学べるというわけだ。CG・VFXに特化した内容ではないが、それだけに汎用的な内容で、その後のすべての学習の基礎がカバーされている。

Pythonキャリアカレッジ 基礎講座カリキュラム


また、本講座ならではの特徴ともいえるのが、ビープラウドが独自開発したウェブ上のeラーニングコンテンツ「PyQ」の併用だ。段階別にさまざまな解説や、Pythonを用いた演習項目が用意されており、講師の解説と併用することで、自分のペースで理解を深めていける。講義の合間に自宅からアクセスし、予習・復習することもできる。

「PyQ」 はビープラウドが長年のPython講習で培ってきたノウハウが詰まった自学用のプログラムだ。初心者でもつまづかないための工夫が随所にみられる。なお、現在PyQはクローズドベータで、新規のアカウント登録を受け付けていない。正式リリース後、利用できるようになるとのことだ

CG・VFX以外にも、機械学習やロボット「Pepper」のアプリ開発にも使用されるなど、社会的に高い注目を集めているPython。受講者層もCG・VFX業界から、IT・ゲーム業界、さらには医療・金融業界に至るまで多種多様。年齢層も20代から40代まで幅広く、そのことが講座の活気にも繋がっているという。自分の視野や可能性を広げる上でも、興味深い機会を提供してくれるだろう。

TEXT_小野憲史
PHOTO_弘田 充