[PR]
外部のクラウドサーバを使用してレンダリングすることで、突発的な受注業務にも柔軟に対応でき、管理コストも節約できるクラウドレンダリング。CG制作の現場でも徐々に浸透してきたが、まだまだ敷居が高いのが現状だ。こうした中、マイクロソフトが新たに「Azure Batch Rendering」サービスを開始した。従来のサービスとのちがいや、CG・エンタメ業界に及ぼす影響について関係者に聞いた。
TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_島田健次 / Kenji Shimada
Maya、3ds Maxとシームレスに連携
ーーIT業界ではすっかり一般化したクラウドサービスですが、CG・映像業界ではまだ文字どおり「雲をつかむ」ような印象もありますよね。
ボーンデジタル 細見龍一氏(以下、細見):一般的なサーバ用途ならまだしも、ことクラウドレンダリングとなると、まさにそういう感じがありますね。制作現場から「メリットがわかりにくい」、「設定方法がわからない」、「価格が高そう」という話をよく耳にします。
Azure Batch Renderingとは?
Microsoft Azure上でバッチジョブ型の3DCGレンダリングなどが行えるサービス。2017年11月末時点で、Maya、3ds MaxとArnoldが対応(V-Rayは近日提供予定)
マイクロソフト 田中 洋氏(以下、田中):クラウドレンダリングはローカルのレンダーファームで行われているレンダリング業務を、そのままクラウドサーバ上で行うためのサービスです。クラウド化することで、突発的な業務でもサーバの増強などを気にせず、必要な時に必要なだけのレンダリングパワーをお使いいただけます。中でも当社のクラウドサーバ「Microsoft Azure」で動作する「Azure Batch Rendering」を使用することで、3DCGツールから直接クラウドレンダリングを行なっていただけるようになりました。そして、2017年5月からMayaと3ds Max向けにプラグインの提供も開始されています。
細見:実際に試させていただきました。MayaであればレンダリングしたいシーンをUI上で選択するだけで、自動的にデータがクラウドサーバ上に展開されてレンダリングが行えたので、驚きました。一方、3ds MaxではDispatcherを介してクラウドレンダリングを行うことになりますね。プラグイン自体はソースウェアが無償公開されているので、ユーザーの環境に合わせて自由にカスタマイズが可能で、さらなる自動化もできそうです。対応レンダラはArnoldとV-Rayですが、V-Rayは限定的な対応に留まっており、今後に期待でしょうか。
Maya、3ds Maxのプラグイン感覚で使える
Azure Batch Renderingの正式提供が開始され、手元のPCからMaya、3ds MaxのArnoldのレンダリングジョブを直接投げることが可能。まさにプラグインの感覚で利用できる
ーーお試しなどは可能なのでしょうか?
ネクストスケープ 岩本義智氏( 以下、岩本):Microsoft Gold Cloud Platformパートナーであるネクストスケープは、Microsoft Azureを用いたクラウドレンダリングサービス「NS-Render」(nsrender.nextscape.net)の一環として、クラウドレンダリングの活用をご検討されている企業様にAzure Batch Renderingの導入支援を行なっています。また、Maya、3ds Max、Arnold、V-Rayを利用したクラウドレンダーファーム構築支援サービスも提供しています。NS-Renderのホームぺージからは、当社オリジナルのAzure Batch Renderingベンチテスト結果付きのレンダリングテスト用サンプルと設定チュートリアルをダウンロードいただくこともできます。パフォーマンスはもちろん、機材を常に確保する必要がないメリットも実感していただきたいですね。
田中:Azure Batch Renderingの導入セミナーやハンズオンなども行なっていく予定です。公式サイトには日本語ドキュメントも整備されていますが、実際に触って体験していただくことが大切ですから。またレンダリングだけでなく、破壊や流体などの大規模シミュレーションに応用することで、表現の幅が一気に広がることが期待できます。
[[SplitPage]]ハリウッド映画のVFXスタジオでも採用
細見:Azure Batch Renderingの料金は、従量課金ですし、低優先度仮想マシンを利用すれば通常価格よりもかなり安く利用できるのは良いですね。ただ、コンテンツ制作現場の方からは「最終的にどれくらいの金額になるのか、事前にわからないと不安」という声も聞かれます。
岩本:クラウドレンダリングの浸透には、そこも課題のひとつだと思いますね。現在、リアルタイムは無理でもセミリアルタイムで料金がわかるカスタムツールを当社サービス契約者向けに提供予定です。
田中:ネクストスケープさんには積極的に取り組んでいただいていますが、Microsoft Azureではバッチ制御アプリケーション開発用SDKも提供しています。今夏に「BatchLabs」をGitHub上で公開したのですが、Python上で動作するバッチジョブの作成・デバッグ・監視を行うクライアントツールを対応するアプリケーション向けに開発できるようになっています。
ーーCG・映像業界ではセキュリティ面などから、クラウドサーバを使用することに抵抗感がある方もいます。海外での採用事例を教えてください。
田中:SIGGRAPH 2017にて、ハリウッド映画のVFXなどを手がけるロンドンのJellyfish Picturesが導入事例の講演を行いました。その際に、主立ったクラウドレンダリングサービスで、国際安全標準規格認定団体であるCDSAのCPS(ContentProtection and Security)認定と、MPAA(Motion Picture Association of America =アメリカ映画協会)監査の両方をクリアしているのがMicrosoft Azureだけだったことが採用する決め手のひとつだったと挙げていました。
岩本:補足するとMicrosoft Azureは日本国内にも東日本と西日本で2つのデータセンターを構えているんです。そのためバックアップ用にリージョンを分けたいが、海外のクラウドサーバを使用したくないという要望にもかなうと思います。また、データセンターが近くにあれば、その分だけ速度も速くなりますからね。マイクロソフトでは営業スタッフだけでなく、サポートエンジニアも国内にいますし、当社独自のサポートプランも準備中です。
田中:実際、ロンドンでは地価が高いため、スタジオコストを抑えるためにテレワークが進んでいるそうです。この点でもAzure Batch Renderingのようなクラウドサービスは適しています。今後は日本のCG・映像業界でも、こうした働き方が増えていくのではないでしょうか。レンダリングだけでなく、クラウドサービスを活用して業務全般を見直せば、さらなる管理コスト削減につながり、よりクリエイティブな部分に注力できるようになると思います。
細見:CG制作の現場でいえば、Maya 2017で標準搭載のレンダラがmental rayからArnoldになったことで、レンダラの乗り換えを検討しているユーザーが増えています。Azure Batch Renderingの導入を含めて、ワークフローの見直しを検討する良い機会かもしれませんね。
ーーCG・映像業界でクラウドサービスの需要が増えることによって、IT業界のエンジニアがデジタルコンテンツ制作現場のテクニカルディレクターとして活躍するといったことも期待できます。Microsoft Azureの展開が楽しみです。
information
Azure Batch Rendering(英語)
rendering.azure.com
Azure を使用したレンダリング
azure.microsoft.com/ja-jp/solutions/big-compute/rendering
【セミナー情報】
「Mayaを Azure Batch Rendering でマイクロソフト社員と一緒に利用してみよう!実践!クラウドレンダリング入門セッション」
内容:Microsoft Azureから直接利用できるMayaを用いたハンズオン支援付きセッション。ABRプラグインをダウンロードして実際に設定する。
Microsoft Azureに関する深い解説ではなく、エンドユーザーにとってわかりやすい説明を意識した内容で、前提知識の有無に関わらず参加できる。
※参加者は自由にテストできるMaya環境を用意が必要。
詳細は こちら
日程:(1)2017年12月14日(木)、(2)2018年1月11日(木)
会場:(1)、(2)ともに渋谷ヒカリエ8F
申込:(1)は こちら、(2)はこちら
問: 日本マイクロソフト株式会社
TEL:0120-952-593