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新海 誠監督作品は、ストーリーやキャラクターの魅力もさることながら、圧倒的な画の美しさにも毎回魅入ってしまう。その画づくりにおいては、最終的に出力される色を正しく表現できる「モニタ」の存在が欠かせない。そこで今回は、映画『天気の子』の制作でEIZOのモニタ群がいかに活躍したのか、助監督兼色彩設計の三木陽子氏と撮影監督の津田涼介氏に話を聞いた。
TEXT_草皆健太郎 / Kentaro Kusakai(BOW)
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
繊細な画づくりを忠実に再現する信頼のEIZOモニタ
絶賛公開中の『天気の子』は、新海監督作品らしく非常に鮮やかで緻密に描かれた作品だ。「天気」がテーマということもあり、コントラストの差が大きい画が多く、精細な色のコントロールが必要だったという。コミックス・ウェーブ・フィルムでは、以前からキーとなる工程にEIZOのカラーマネージメントモニタ「ColorEdge」を採用しており、本作では撮影と色彩設計でColorEdgeを10台、さらに作画や美術、3DCGなどの工程でオフィス向けのEIZOモニタ「FlexScan」を合計約50台使用している。本作の制作において、EIZOのモニタ群はおおいに活用され、なくてはならないものとして制作フローの一翼を担ったようだ。
助監督兼色彩設計の三木陽子氏は「EIZOモニタの色の再現度は業界随一なので、以前からColorEdgeを使っています。今回はIMAGICAさんに直接キャリブレーションしていただいたので、安心して作業できました」と話す。ColorEdgeの強みは色の再現性にある。理想のガンマ値になるよう工場で1台ごとに表示階調を調整し、モニタごとにばらつきのない、滑らかな階調表現を実現している。画面を信頼してストレスなく作業できることも、長らく使われている理由にちがいない。また正確な表示品質を維持できるようキャリブレーションに対応している点も、大きな強みといえる。
通常のアニメ作品では、美術ボードに合わせてシーンごとにキャラクターの配色を決めていくが、新海監督作品の場合、ほぼカット単位で色彩設計を行なっている。本作でも1,000カット以上もの膨大な量の色彩を調整していくわけだが、ひとつひとつの色に対しての演出性が高く、シビアな調整が要求される。「新海監督作品では、カットごとの色調整が必須です。特に輝度に関しては、かなり幅広く表示できるモニタだったので、カットごとの色作成時にはとても助かりました。画の印象は、カット内のキャラクターを構成する各色の面積によって大きく変わってきます。ColorEdgeは色表示が正確なので"全体の中でこの色だけ浮いて見える"という違和感をすぐに判断できました。今回は自席の『ColorEdge CG277』(以下、CG277)とは別に、隣席の新海監督との間にもう1台CG277を設置して、リアルタイムに私のモニタと同じ色の画を表示して確認していました。ColorEdgeで見ている色を共通言語のようにして監督とコミュニケーションできる環境だったことで、ぎりぎりまで画をつめることができました」(三木氏)。また、本作では影色が演出効果として多く使われており、わずかな影色のちがいで、そのシーンの雰囲気を演出している。モニタは高輝度での再現性に注目が集まりがちだが、ColorEdgeは暗いシーンでの微妙な色の変化や階調をきっちり表現してくれる点も強い。
最終的な色イメージで作業できる制作現場の大きなアドバンテージ
アニメ制作における「撮影」は、制作終盤に位置し、作品の仕上がりを左右する大事な工程となるが、ここでもColorEdgeが活躍している。撮影監督の津田涼介氏は「ColorEdge CG279X」2台+FlexScan1台のモニタ3台体制を構築。津田氏がColorEdgeを見ながらFlexScanにプリセットなどを表示して作業し、もう1台のColorEdgeで新海監督が画を確認するチェック体制を採ったという。今までは作業用モニタを監督と一緒に覗き込んで確認していたが、確認用モニタと作業用モニタ、2台のモニタがあることで、その場での迅速な確認と反映ができる環境は、作業効率面でも有効だったそうだ。
通常、撮影の段階で色を調整することはないが、新海監督作品では必須の工程となっている。一般的な制作現場では、最終的な色はマスターモニタでないとわからない。そこで作業者は、最終的な出力を見越してある種の「勘」を働かせて色調整を行い、編集室のマスターモニタで監督チェックを行い、そのチェックバックを受けて再度調整するため、やりとりに時間がかかる。本作では、最終的な色を表示できるColorEdgeを見ながら、撮影の段階で監督チェックを行なっているため、チーム内で色に対する認識のずれがなく、無駄な工数が減り、その分、画づくりに注力できたという。この「見ているものが正しい色」という信頼性は、非常に重要だ。制作期間ギリギリまでクオリティアップのため作業していたこともあり、最後の1ヶ月でスタッフが増員されたが、ColorEdgeを使用することで、最終画と同じ色イメージで作業することができ、効率化につながったそうだ。「信頼できる色表示のおかげで、1カット1カット追い込めました。最終出力先と同じ色環境で作業できると、いろいろな齟齬がなくなるので良いですね。本作以外でも、そういう環境を構築していきたいです」(津田氏)。
制作現場でしっかり色管理がなされなければ、制作者の意図した色は、観客には届かない。本作のように、緻密な色を使って演出がなされる作品ならば、なおさらである。ColorEdgeの信頼性や安定性が、『天気の子』の鮮やかな色彩の映像美を支えていると知り、制作現場におけるモニタの重要性を改めて認識させられた。
Point1 明暗部の繊細なディテールを再現
このカットは、元素材のディテールが少なかったため、ライトやバスの貼り込み、車内などの要素を足し、また光の演出面でも難しい部分があったため、三木氏が撮影まで行なっている。「かなり明るい色にしていたのですが、新海監督から"もっと明るく"とオーダーがありました。通常のモニタでは白飛びしてしまいますが、ColorEdgeはしっかり元の色調・階調を保ったまま輝度が上がるので、調整がしやすかったです」(三木氏)。一方で、暗い雨のシーンや主人公・森嶋帆高の黒いTシャツなど、暗部もきちんと表示され、幅広い色使いに貢献したという
Point2 色へのこだわりと作業効率化の両立
三木氏と新海監督との間にモニタが設置されたことにより、アイデアの提案やチェックがしやすくなったそうだ。「最終的な色が正しく表示されている」という前提で、今回は各作業場所単位でキャリブレーションされたColorEdgeが導入され、安心して制作することができた。「隣の席とはいえ、モニタを覗き込むやり取りだと、確認しづらく、声もかけにくいです。新海監督との間にモニタを置くことで"ちょっと見て"とこまめに見てもらえるようになりました。このチェック体制はとても重宝したので、今後もこの環境で進めていきたいですね」(三木氏)
Point3 5,000時間の使用でも正しい色を表示
ColorEdgeは色の再現性もさることながら、長時間安定して表示品質を維持することができる点が長所だ。液晶モニタは時間の経過と共に表示する色や明るさが変化することは避けられないが、ColorEdge CGシリーズはキャリブレーションセンサーを内蔵しているので、一定時間ごとに自動的にキャリブレーションを行い、常に正しい色で確認することが可能だ。三木氏が使っているCG277も、『天気の子』はもちろん、これまでの作品も含めて5,000時間を超えて使用しているが、安定して正しい色を再現していたとのこと
info.
ColorEdge CG279X
アニメ・映像制作にオススメ! キャリブレーションセンサーを内蔵したHDR対応の27型プロフェッショナルモデル
推奨解像度:2,560×1,440(アスペクト比16:9)/色域(標準値):Adobe RGBカバー率99%、DCI-P3カバー率98%/表示色:USB Type-C、DisplayPort、HDMI:約10億7,374万色(10-bit対応)、DVI:約1,677万色(8-bit対応)/コントラスト比(標準値):1,300:1/HDRガンマ:HLG方式、PQ方式
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