[PR]

最大32コア/64スレッドを搭載し、メニーコア時代の旗手とされるAMD Ryzenシリーズ。 大量の物理演算を行うHoudiniと相性が良いとされるCPUだ。もっとも、その実力を極限まで使いこなす上で、OSの選定が鍵を握ることは、あまり知られていない。パソコン工房の機材協力の下、トランジスタ・スタジオに検証してもらった。

▲パソコン工房 CG・映像制作者向けブランド「CG・MOVIE GARAGE」販売サイト。本企画でトランジスタ・スタジオ、LiNDAが検証したPCが紹介されている。各ラインナップともに、目的に合わせて余分な構成は省き高いコストパフォーマンスを実現している。今後さらなるラインナップが登場予定だ >>>製品紹介ページはこちら

TEXT_小野憲史 / Kenji Ono PHOTO_弘田 充



Windows 10とCentOS 8でここまで作業時間が変わった

「WindowsとLinuxで、ここまでちがうのかと愕然としました」。トランジスタ・スタジオ、秋元純一氏は検証を終えてこのように語った。『NHKスペシャル選 人体 神秘の巨大ネットワーク』シリーズのオープニングなど、ハイエンドなCG映像の制作で知られる同社。取締役副社長の秋元氏はCGWORLD.jp連載「Houdini Cook Book」をはじめ、Houdiniの伝道師としても知られる存在だ。同社のHoudiniチームは秋元氏以下4名で、秋元氏がHoudiniならではの特殊な表現、他3名がエフェクトなどの量産を担当。これにゼネラリストのディレクターが1名加わる。共有データは社内サーバ上に置き、シミュレーションはローカル側で行うスタイルだ。

そのためPCのスペックは社内サーバ側が優先され、ローカルPCはサーバPCが「枯れてきた」ころにGPUを増加して使用するのが一般的。「安定性よりもコストパフォーマンス・速度感・更新頻度を重視する」という機材選定も、秋元氏みずからが保守運用にかかわっているためだ。PCの多くも秋元氏が自作したもので、個人的にOSのマルチブートなども試してきた。「もっとも機材まわりについては、自作PC好きの若手が入社したので、徐々に世代交替を進めています」。

これに対して機材協力を行なったパソコン工房側では、32コア/64スレッドのメニーコアを誇るRyzen Threadripperと、12コア/24スレッドとコア数には劣るものの、3.8ー4.6GHzとより高速なクロック数を持つRyzen 9という、2種類のCPUを搭載したモデルを提供。これらにLinuxディストリビューションのひとつであるCentOS 8をインストールし、Houdiniによるシミュレーション時間を計測した。また、Threadripper搭載モデルではWindows 10のインストールも行い、作業時間が比較された。

検証機スペック:

※今回のようにCentOSなどを入れて使うためにOSなしモデルも選択可能だ。ただしOSの動作保証はWindows 10のみとなる。

OSなしモデルの導入で理想の環境を整備する

本検証のデータは、2019年11月に開催されたCGWORLD 2019 クリエイティブカンファレンスの講演「Houdini Distribute Simulation」でも使用された、波のCGだ。驚くことにCentOS 8ではWindows 10に比べて、20%強の時間短縮に成功している。Mantraを使用したレンダリングだけで見れば、40%以上の時間短縮がみられた。「シミュレーション時間だけでなく、ファイルI/Oの速度差も大きいのではないでしょうか。Houdiniでは大量のキャッシュが作成されるため、作業時間の40%がファイルI/Oに費やされる印象です。Windows 10では折角の高速なSSDも活かしきれないと思いました」

一方でRyzen 9搭載モデルのコストパフォーマンスの良さが際だっている点も見逃せないという。検証項目のうち、Surface Mesh以外で同等か、それを凌駕するスコアを出しているからだ。もっとも、これにはHoudini側がメニーコアを活かしきれていない事情もある。Ryzen 9側が24個のコアをまんべんなく使いきっているのに対して、Threadripper搭載モデルでは使用頻度にばらつきがあるからだ。もっとも、本件についてはHoudiniの開発元のSideFX社と AMD社が共同で、より高いスケール性を達成するために議論が続いている。今後の対応に期待したいと秋元氏は語った。

検証の最後に秋元氏は「実はCPUとGPUを同じメーカーで揃えなければ性能が低下する、という思い込みがあった」と明かした。しかし、今回の検証でそうした誤解は払拭されたという。「ただし、社内でCPUやGPUのメーカーが異なるPCが混在すると、トラブルが発生した際に対応が複雑になります。せっかく導入するなら、ある程度の台数をまとめて切り替えたいですね」。これに対してパソコン工房側も「当社ではLinuxを使用される場合、OSなしモデルもお選びいただけます」と返答。用途に合わせて最適な一台を提供できるとまとめた。

検証:Houdiniによる、波のシミュレーションテスト

  • CPU
  • Ryzen Threadripper
  • Ryzen 9
  • OS
  • Windows 10
    CentOS 8
  • CentOS 8
  • FLIP Sim
  • 8h23m18s
    6h33m37s
  • 6h21m39s
  • Surface Mesh
  • 0h25m25s
    0h18m19s
  • 0h23m19s
  • Whitewater Sim
  • 0h21m24s
    0h17m21s
  • 0h15m02s
  • Mantra Rendering
  • 7h58m05s
    4h08m19s
  • 3h47m53s

▲今回の検証では、講演用に作成されたテスト動画480フレームのうち、100フレーム分の作業時間を計測した。検証項目は「Flip(流体シミュレーション)」、「Suraface Mesh(流体のメッシュ化)」、「Whitewater(飛沫・海面の泡・気泡)」、「レンダリング」の順だ。なお、テスト動画の最終版はRedshiftでレンダリングされたが、検証では同等のシェーダに置き換えて、Mantraで比較している。結果から同じマシンスペックであれば、Windows 10よりもCentOS 8の方が作業時間短縮につながることが明らかになった。また、Houdiniの起動速度もCentOS 8の方が高速で、体感で違いがわかるほどだという。一方でRyzen 9のコストパフォーマンスの高さについては、HoudiniとMantraがメニーコアに完全に対応しきれていないこと、Ryzen 9 3900Xプロセッサーの動作クロックの速さ、そしてCPUのコアがZEN2世代であることなどが考えられる。一方でThreadripperも新しい世代の登場が予定されている。ツール側の対応なども含めて、今後に期待したい。
※1 テスト動画480フレームのうち100フレーム分を比較
※2 テスト動画最終盤はRedshiftだが、テストレンダリングは同等シェーダへ置き換えてMantraにて比較

問い合わせ先

ご購入前のご相談
(お問い合わせ・お電話でのご注文など)について
TEL:0570-550-760(※受付時間:10:00~18:00/年中無休)