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『FINAL FANTASY XV』(以下、『FFXV』)の開発スタッフが中心となり、2018年に発足したLuminous Productions。発足時から同社に所属する本庄 崇氏に、同社でのアーティストの仕事について語ってもらった。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

アーティストもゲームエンジン(Luminous Engine)を操作し、自分の仕事を検証

  • 「今は新規タイトルのアートディレクターをしています。タイトルの中身は、まだ秘密です」と自己紹介してくれた本庄 崇氏は、とても気さくな語り手だった。以前は『FFXV』の開発に深く関わっており、オープンワールドの気候や地形にはじまり、キャラクター、建築物、武器、文字(フォント)にいたるまで、あらゆる要素のデザインに携わり、量産を依頼した協力会社のマネジメントも行なった。


筆者が初めて本庄氏を知ったのはバンコクで開催されたSIGGRAPH Asia 2017のときで、同氏は「How To Build A Fantasy World Based On Reality」と題したセッションの中で、『FFXV』を事例に、オープンワールドにおけるアートのつくり方を発表していた。その際も、受講者からの質問やサインの依頼に気さくに応じていた点が印象的だった。

▲SIGGRAPH Asia 2017のセッションで、『FFXV』のアートのつくり方について解説する本庄氏。本セッションの内容は、こちらの記事で紹介している


必要とあらば、Mayaやゲームエンジン(Luminous Engine)まで操作し、多彩なコンセプトアートやデザインを仕上げてきたという同氏。その守備範囲の広さへの驚きを伝えると「頼みやすい性格だって、みんなに言われます」という答えが返ってきた。

「『FFXII』の開発に参加した当初は、Photoshopを使って、エンバイロメントのデザインだけをやっていました。途中からMayaでモックアップをつくってサイズの検証をするようになり、『FFXV』の頃には、ゲームエンジンも本格的に触るようになりました。自分の頭の中にあるイメージを、早く、確実に世に出したくて、周りのスタッフにどんどんやり方を聞いていたら、自然と守備範囲が広がりました」。

  • 例えばプロンプトの銃をデザインするときには、Mayaでモックアップをつくり、ゲームエンジン上でプロンプトのモデルに持たせ、サイズやグリップの位置、ギミックのアニメーションまで検証したという。「そうやって検証していかないと、リアリティのあるオープンワールドは成立しないんです。僕に限らず、当社のアーティストは自分でゲームエンジンを操作して、自分の仕事の検証をする人が多いです」。

アーティストたちのアイデアをつなげ、リアリティを追求

以降では、2016年1月に公開された『FFXV』のキーアートのメイキングを通して、同社のアーティストの仕事の一端を紹介しよう。

▲『FFXV』のキーアート。本作では、強大な機械文明を誇る二フルハイム帝国の進軍と、それに驚くノクティス王子らが描かれている。考えるより先に身体が動いてしまったノクティス王子を、「王の盾」であるグラディオラスがすかさず拘束し、ムードメーカーのプロンプトがやや出遅れ、参謀役のイグニスは状況を見守っている。4人のポージングが、各々の性格や役割と、緊迫したドラマを雄弁に語っている

©2016 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. MAIN CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA


▲【左】各キャラクターの動きを担当するアニメーターたちが自らポーズをとり、4人の心情、重心の位置などを検証し、リアリティを追及している/【右】先の検証結果を参考にしつつ、本庄氏がゲームエンジン上でキャラクターモデルの位置やポージングを設定している

ゲームエンジンを駆使して、頭の中にあるイメージを迅速に描画

▲前述のキャラクターモデルの設定は、ゲームエンジン上のノードで行なっている。「ノードをつなげばリアルタイムに結果が描画されるので、すごく直感的で使いやすいです」(本庄氏)


▲【上】地形、魔導アーマー、遠方の歩兵などはMaya上で配置し、【下】ゲームエンジンにインポートしている


▲炎のVFXを制作し、地面の水たまりへの映り込みを調整している


▲天候、雨量、フォグの濃度、ライティングなどもゲームエンジン上で調整し、出力した画像をPhotoshopでレタッチして完成させた。「本作のラフ案は別のアーティストが描きましたが、僕が得意とするゲームエンジンを使ったリアルタイム寄りのイメージをつくることになったので、ほかのスタッフの協力を得ながら約10日で完成させました」(本庄氏)。なお、異変に気づきノクティス王子らの方へ歩み寄る画面中央の歩兵はラフ案には描かれていなかったが、本庄氏のアイデアで追加したそうだ

守備範囲を広げ続ける人も、専門分野を極め続ける人も必要

『FFXV』の開発を支えたLuminous Engineはその後も設計の改良が続けられ、CEDEC 2019のセッションではパストレーシングの導入と、それを使った技術デモ「BackStage」が発表された(※)。

※Luminous Engineと「BackStage」の詳細は、以下記事で解説している。
技術デモ『BackStage』- Luminous Engineが挑戦するリアルタイムパストレーシング

▲技術デモ「BackStage」


  • 「最近は、映画や映像など、プリレンダーのCG制作経験者の転職が増えてきました。そういう人でもストレスなく使えるゲームエンジンになるよう、シェーダの設定方法などを改良中です。自分たちのほしい機能が、同じ職場のエンジニアの手で着実に実装されていく。それが内製ゲームエンジンの最大のメリットだと思います」。


自他共に認める守備範囲の広さを誇る本庄氏だが、一方で、専門分野を極め続けるアーティストも不可欠だと強調した。「僕みたいに、自分の職能を広げ、新しい仕事につなげていく人がいる一方で、黙々と専門分野を極めていく人もいます。両方のタイプの開発者がいなければ、世界を驚かせるAAAタイトルは生み出せないと思っています」。例えば、とあるリギングアーティストは物理シミュレーションに特化しており、SIGGRAPHなどで発表される最新論文のリサーチを欠かさないという。

同社ではVictoria University of Wellingtonとの協業や、東京藝術大学への講師派遣も行なっており、産学連携による研究開発と人材育成にも意欲的だ。『FFXV』で築いた資産を次世代のゲーム開発につなげるべく、同社の挑戦は今後も続いていく。

© Luminous Productions Co., Ltd. | © SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

■求人情報

Luminous Productions

▼募集職種
1:コンセプトアーティスト
2:UIアーティスト
3:エンバイロメントアーティスト
4:VFXアーティスト
5:3Dアニメーター
6:カットシーンアニメーター
7:フェイシャルアニメーター
8:テクニカルアーティスト
9:リギングアーティスト
10:ライティングアーティスト

hrmos.co/pages/luminous-productions/