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リガーの人材不足解消と業界の底上げのために、自分たちができること〜BACKBONEスタジオ設立3年目の取り組み

リガーの人材不足解消と業界の底上げのために、自分たちができること〜BACKBONEスタジオ設立3年目の取り組み

業界でリガーの人材不足が叫ばれ始めて久しい。こうした中、リガー専門スタジオとして2017年に発足したリブゼント・イノベーションズBACKBONEスタジオ(以下、BACKBONE)。発足当時にもインタビューを実施したが、設立3年目を迎える現在、リガー交流イベント「リグナイト」や育成カリキュラム「リグ道場」といった独自の取り組みを進めている。BACKBONEの福本健太郎氏と、リグ道場を受講したカナバングラフィックスの宮田眞規氏、アカツキの堀内李緒氏に話を聞いた。

INTERVIEW_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

<1>リガーが集まる交流イベント「リグナイト」

CGWORLD(以下、CGW):設立以来、大活躍されているとのことで何よりです。

福本健太郎氏(以下、福本):ありがとうございます。2017年7月にBACKBONEを旗揚げして、約2年半。今では社外で働いているリガーも含めて、スタッフ数が10名になりました。当初から、最大でも10名前後で活動したいと考えていましたが、いろいろな人とのご縁がつながり、予定より早く想定していた人数で活動できるようになりました。

  • 福本健太郎 / Kentaro Fukumoto
    リブゼント・イノベーションズ株式会社
    BACKBONE事業部長
    1978年兵庫県生まれ。大学卒業後、専門学校を経て2002年に株式会社デジタル・フロンティアに入社。アニメーター、セットアップグループリーダーとして活動し、2007年に株式会社ポリゴン・ピクチュアズに移籍。アニメーションの経験を活かした「アニメーター目線のリグ」、「軽いリグ」、「量産・効率化リグシステム」の開発を得意とし、ゲーム、映画、TVシリーズなどの長編案件でリギングスーパーバイザーとして活躍。2012年にアセット部部長に就任しリギング、モデリング、エンバイロメントの3グループを統括。2017年、リグに特化したBACKBONEスタジオを設立
    backbone-studio.com

CGW:素晴らしいですね。

福本:そういえば、2019年2月にオートデスク様の情報サイト「AREA JAPAN」で、スキニングに関する「Mayaパーフェクトスキニングウェビナー~美術解剖学に基づくロジカルスキニング講座~」に登壇させていただいたのですが、ウェビナーを視聴された方からBACKBONEに応募がありましたし、これまですごく良い出会いが続いています。

CGW:業務の方はいかがですか?

福本:ここ最近は、ゲームやフェイシャルに関する案件が多く、難易度の高い開発案件も増えてきました。スタッフ数が10名に増えて技術的にチャレンジできる幅も広がったので、研究開発と受託業務のバランスを取りながら楽しく進めています。

CGW:そんな中、様々な活動を進められていますね。

福本:起ち上げ当初から、業界への貢献やリガーが枯渇している状況を何とかしたいと考えていたので、情報発信やセミナーは精力的に進めていく予定でした。リグに関する技術ブログから始めて、現在は「リグナイト」と「リグ道場」も展開中です。リグナイトはコミュニティ向けのリグの勉強・交流会、リグ道場は法人向けのリガー育成プログラムとなります。今年からは、BACKBONEのリソースの空きの状況がわかるよう、Webサイトでリソース表の公開も始めました。Webサイトが新しくなり、いろいろな試みが見えるようになっているので、ぜひ見にきていただけると嬉しいです。

CGW「リグナイト」とはどういったものでしょうか?

福本:リガーの皆さんに、業界や会社の垣根を越えて、食事をしたりお酒を飲んだりしながら、一緒に勉強・交流をしていただくというリグの勉強会です。リグで悩まれている些細な疑問や、社内では相談しにくいことをざっくばらんに話をして、一緒に楽しく勉強できればと思い、2018年9月に始めました。現状は3~4ヶ月ごとのペースで、全員が発言できるように20~25名くらいの規模で開催していて、次で5回目となります。

第4回リグナイトの様子

福本:リグは勉強するための教材や環境が不足していたり、周りに同業者が少ないといった状況で、独学で勉強することも多いと思います。そうした環境が何年も続くと悶々としてしまい、下手をすると視野を広げるという名目だけで会社を退職してしまうこともあります。ひとりで抱え込まず、業界のリガーの皆さんと技術的な悩み相談や交流できる場があれば、楽しくリグの勉強ができて、視野も広がるんじゃないか......。そういった思いで始めてみました。

CGW:何か共通のテーマはあるんですか?

福本:主にリグについての内容となります。リガーにとって一番近いクライアントはアニメーターなので、まずはアニメーターに要望を聞いてみようということで、第1回は「リガーとアニメーターの座談会」をテーマにしました。リガー約10名、アニメーター約10名に参加を募り、事前にお互いの要望や質問などのアンケートにご協力いただいて、当日はその結果を基にディスカッションを行いました。ただ、業界のマニアックな人たちが集まったので、みんな知りたいことがバラバラなんですよ(笑)。

CGW:目に浮かぶようです。

福本:リガーからアニメーターに聞きたい質問は、とても興味深い内容ばかりでした。1つのコントローラで移動と回転を制御できた方が良いのか、または別々に制御できた方が良いのか。他にもGUIの使用頻度や、これだけは欲しい機能などもりだくさんで。アニメーターとの座談会は1回だけのつもりでしたが、まったく話が尽きず、3回目でようやく終わりました。今後は、ジョイントの位置やスケールの対応方法など、リグの技術的な内容もテーマに取り上げていく予定です。

第1回リグナイトの事前アンケート結果の一部

CGW:運営において気をつけていることはありますか?

福本:できるだけ全員が発言できるよう、進行にはとても気をつけています。リグナイトは議題に対しての結論を出すことが目的ではなく、悩んでいることや課題を共有して、一緒に勉強することを目的としているので、発言に対する否定的な意見はNGとしています。当然、各社様の機密事項や守秘義務に抵触する発言もNGですね。

CGW:参加者はどのように集められましたか?

福本:第1〜3回では自分の知り合いや、仕事で知り合った方々にお声がけして、招待制のクローズドで開催しました。3回開催してようやく形になってきたので、4回目からは紹介枠と一般枠を半々にして、一般枠はConnpassで募集しました。中には、大阪や福岡に在住の方や、リガー志望の学生も参加されていました。

CGW:第4回のテーマは何でしたか?

福本:「ゲームと映像のリグのちがい」です。それぞれの業界のリガーにお集まりいただいて、ワークフローのちがいや現状の課題などについて、深く掘り下げてディスカッションしました。

第4回リグナイトの事前アンケート結果の一部

宮田眞規氏(以下、宮田):自分は第1回に参加させてもらいました。途中でお食事タイムがあって、そこからすごく盛り上がりましたね。会が終わっても駅の近くでみんなが輪になって、話がつきませんでした。

福本:2次会あったんですね。午後10時でお開きにしたんですが、皆さん帰る気配がまったくないんですよ。まだまだ話し足らない!と(笑)。

宮田:すごく良い会でした。指のボーンの位置や瞼の動きなどの話があり、鱗が落ちる意見がたくさん飛び交っていました。同じ会社でやっているとどうしても上下関係がありますが、ここだとぶっちゃけて話せるところもあって、すごく勉強になりました。

CGW:宮田さんはもともと、リガー志望だったんですか?

宮田:そうですね。学生時代に、書籍『Mayaリギング 正しいキャラクターリグの作り方』を手にとったことがきっかけです。とても勉強させていただきました。CGWORLDでリガー座談会の記事を読んだのも大きかったです。福本さんも出席されていましたよね。

  • 宮田眞規/Masanori Miyata
    カナバングラフィックス
    リギングアーティスト
    www.kanaban.com

CGW:入社されて何年目になりますか?

宮田:リガーとして2015年にカナバングラフィックスに入社して、5年目になります。ただ、弊社は全員で十数名の規模なので、リガーは長く僕しかいなかったんですよ。自分としても、ある程度ノウハウが貯まっていた一方で、これで良いのかという思いもあったんです。そのため、有意義な会になりました。

CGW:堀内さんも参加されたんですか?

堀内李緒氏(以下、堀内):私は3回目に参加しました。弊社は2Dゲーム中心でやってきた会社なので、リガーと社内で直接話す機会が乏しいんですね。そのため、リガーがアニメーターに感じていることなどをお聞きできて、すごく良かったです。逆に自分でリグが組めるようになれば、社内でも啓蒙活動につながるんじゃないかなと。会社の力にもなるでしょうし。

  • 堀内李緒/Rio Horiuchi
    アカツキ
    モバイルゲーム事業部 デザイナー
    aktsk.jp

CGW:なるほど。

堀内:もともとアニメーターで、リグにも興味がありました。というより、ずっと避けていたんです。学生時代にリグを習いましたが、苦手意識だけが残ってしまい、4~5年くらい手をつけていなかったくらいで......。

その一方で、このままリグから逃げ続けていて良いのかな、という思いもありました。アニメーターなのに、リグを組めないのは......という。そんな中、社内で「リグについて集中的に学べる機会があるけど、どうする?」と提案を受けまして、BACKBONEさんにお世話になることになり、研修最終日にリグナイトに参加させていただきました。

CGW:アニメーターがリグを組めると、どういったメリットがありますか?

堀内:ただ動きをつけるだけと考えると、人によっては考える範囲が狭くなってしまうと思っています。関節の可動域だったり、筋肉の動かし方だったり、解剖学的な視点等いろいろな点で考える深さにも限界が出てくると思うんです。逆にそういったことまで深く考えられる人じゃないと、キャラクターのアニメーションの説得力も浅くなってしまうというか......。アニメーターである自分にとって、一番嬉しいことは「キャラクターが活き活きと動く」こと。そのための知識が欲しいと思っていて、そのひとつがリグでした。

CGW:今後リグナイトはどうなっていきますか?

福本:次回は2020年3月ごろを予定しています。できるだけ多くの方に参加していただきたいので、今後は招待枠と一般枠の比率を4:6くらいに変更しようと考えています。学生の方も恐れずにどんどん参加してほしいですね。詳細はBACKBONEのWebサイト上で告知していくので、定期的にチェックしていただけると嬉しいです。

次ページ:
<2>リグ道場ではニーズに合わせて2種類のコースを用意

Profileプロフィール

福本健太郎(BACKBONEスタジオ)✕宮田眞規(カナバングラフィックス)✕堀内李緒(アカツキ)

福本健太郎(BACKBONEスタジオ)✕宮田眞規(カナバングラフィックス)✕堀内李緒(アカツキ)

右から、福本健太郎氏(リブゼント・イノベーションズ株式会社 BACKBONE事業部長)、宮田眞規氏(カナバングラフィックス リギングアーティスト)、堀内李緒氏(アカツキ モバイルゲーム事業部 デザイナー)

スペシャルインタビュー