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松戸市をコンテンツの街として盛り上げたい! 松戸市コンテンツ事業者連絡協議会の取り組みとは

松戸市をコンテンツの街として盛り上げたい! 松戸市コンテンツ事業者連絡協議会の取り組みとは

近年、企業誘致やスタートアップの創業支援などの取り組みが全国で盛んだ。こうした中、ゲームやデジタルコンテンツ分野で注力する自治体に千葉県松戸市がある。2020年1月17日(金)に開催されたクリエイティブ系ワーキングスタイル・トークセッションの模様と、松戸市コンテンツ事業者連絡協議会の取り組みについて取材した。

INTERVIEW_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

ゲームクリエイター志望の中学生も参加

少子高齢化に悩む地方都市。中でも雇用の創出は重要な問題だ。こうした中、地方自治体が中心となって、様々な産業育成に関する試みが行われている。企業誘致やスタートアップ向け創業支援などが好例で、近年ではゲームや映像といったコンテンツ系の分野に力を入れる自治体も増えてきた。千葉県松戸市もそのひとつで、地元の企業・団体・個人クリエイターなどの有志で結成された松戸市コンテンツ事業者連絡協議会を中心に、様々なイベントや取り組みが行われている。

  • 黒川文雄氏
    メディアコンテンツ研究家、株式会社ジェミニエンタテインメント代表取締役、黒川塾主宰、黒川メディアコンテンツ研究所 所長

2016年7月にスタートしたクリエイティブ系ワーキングスタイル・トークセッションもそのひとつだ。メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が司会進行を務め、第一線で活躍するクリエイターが登壇するもの。2020年1月17日(金)に松戸スタートアップオフィスで開催された第12回では、「ゲームプランナーとゲームプロデューサーの境界線」と題して文筆家・ゲーム作家の山本貴光氏が登壇。ゲームクリエイター志望の中学生をはじめ約40名が聴講し、様々な議論が行われた。

  • 山本貴光氏
    文筆家・ゲーム作家 金沢工業大学客員教授

ゲームづくりとは「プレイヤーの体験づくり」である

コーエー(現・コーテーテクモゲームス)でプランナー/プログラマーとして『戦国無双』(2004)などの開発に携わってきた山本氏。フリーランスに転じてからは、東京ネットウエイブ(現・東京クールジャパン)、東京工芸大学などでクリエイター教育に取り組む一方、様々な書籍の翻訳・執筆も手がけてきた。中でも『ルールズ・オブ・プレイ』日本語版翻訳の偉業は有名だ。2016年からはモブキャストゲームスとプロ契約し、企画立案やクリエイター・プロデューサー育成に取り組んでいる。

そんな山本氏は「ゲーム制作は遊ぶ人の『経験(Experience)』をつくることだ」と切り出した。経験というとつかみどころがない印象も受けるが、プレイヤーの「体」(例えば「目」や「指」)と「心」(「思考」や「感情」)を動かすためのしくみを、コンピュータとプログラムでつくり上げることだという。そのために用いられる典型的な手法が、「目的と手段と障害」を適切に設定することだ。山本氏は『パックマン』を例に挙げながら、どのような「目的と手段と障害」が設定され、遊び手の感情を動かすことにつながるかについて説明した。

「ゲームに目標があるのは、プレイヤーの挑戦意欲をかきたてるため。一方で簡単に目標が達成できては、つまらない。失敗する可能性があるから楽しいし、目標に到達することで達成感が得られます」。『パックマン』でいえば、パックマンとモンスターとクッキーとパワーエサの配置を確認し(目を動かし)、パックマンをどう動かすかを考え(心が動く)、コントローラで行動を入力する(指を動かす)。その過程でドキドキしたり、ハラハラしたりする(心が動く)。こうしたユーザー体験をデザインすることが、ゲームづくりというわけだ。

「もっとも、ゲームづくりを学び始めた学生の多くは、ここまで目が向いていません。そのため、その手前にあるものをつくろうとします。ルールやデータなどです」。これではゲームをつくっているものの、ゲームで遊ぶ人の経験をつくるまでには至らないことが多い......山本氏はこのように指摘する。大切なことは「遊ぶ人の心の動きを想定し、それを促すようなしくみをつくる」ことで、ルールやデータはそのための手段にすぎないからだ。

その上で山本氏はプランナーに求められる要件に「人間について知ること」と、「ゲームを分析すること」を挙げた。「プレイヤーにどんな経験をさせたいのか」と、「どうしたら、そうした経験を提供できるのか」はコインの裏表の関係だ。このどちらが欠けても面白いゲームはつくれないことは言うまでもないだろう。山本氏はそのための勉強材料として、1980年代の古典的なゲームを遊んでみることを勧めた。設計がシンプルで、全体像が見通しやすいからだという。

  • 山本氏が翻訳した『ルールズ・オブ・プレイ』。長く絶版だったが、改訂版がオンデマンド出版と電子書籍版で刊行され、入手しやすくなった。全4巻がAmazonで販売中

ゲームプランナーとプロデューサーの間にあるもの

さて、ここからトピックはプランナーとプロデューサーのちがいに移った。これまでの説明に照らせば、プランナーとは「プレイヤーの経験をつくる人」だ。そのためには適切なルールを考案するとともに、グラフィックやサウンドやシナリオなどを発注し、プログラマーに提供する必要がある。これに対してプロデューサーの仕事はゲームの売上を最大化することだ。制作中のゲームのクオリティをチェックすると共に、予算管理や宣伝といった、ゲーム開発の外側にある業務も担当する(※)。

※講演では開発チームを束ねるディレクターの役割についても説明されたが、本稿では省略する。

もっとも、近年の主流であるモバイルゲーム開発において、プロデューサーの役割はそれだけに留まらない。収益化の重要なパートをにぎるのが「運営」であり、企業はプレイヤーの課金で売上を立てるからだ。そのためには「人がどういうときにお金を使いたくなるか」、すなわちプレイヤーの課金につながる心の動きを考えて、ゲームデザインに活かす必要がある。金勘定とゲームの中身をつなげる必要があるのだ。山本氏はプロデューサーの業務に、新たにこうした要素が加わったと述べた。

運営で適切な売上を立てるには、開発予算を商材に因数分解して、プレイヤーが課金したくなる体験を創出する必要がある......山本氏はこのように説明する。そのためには、プランナーとプロデューサーの相互理解が必要だ。「ゲームを遊ぶ人が楽しい経験をすることが大事。その上で、もっと遊びたくて、自然とお金を払いたくなるしくみをいかにつくり上げるか。そのためにはプランナーとプロデューサーが、互いに歩み寄ることが重要です」。

このほか、講演ではプランナーの育成についても話が及んだ。プログラマーやデザイナー(アーティスト)に対して、一般的にプランナーの育成は難しいとされる。プログラマーやデザイナーの成果物が目に見えるのに対して、プランナーの成果物(企画書や開発中のゲームなど)は判断しにくいからだ。そのため山本氏は、個々の成果物に対して、他人に対する気配りができているか判断するためのチェック項目を用意し、それをもとに評価するしくみを採用しているという。

実際、山本氏がモブキャストゲームスで社員教育のために使用しているチェックシートには、「ゲームを始めてユーザーがすぐに遊び始められるか」、「文字要素とその配置が適切にデザインされているか」など、188項目が並ぶ。これまでの経験から自作されたものだ。また、企画書の作成方法についても「冒頭ではイラスト中心で、見る人の想像をかき立て、次第に文字を増やしていく」、「映画のアバンタイトルのように、ゲームの流れをイラストで紹介していき、読み手の期待感を煽る」などの手法が紹介された。

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事業者団体と行政のコラボレーション

Profileプロフィール

左から、黒川文雄氏(メディアコンテンツ研究家、株式会社ジェミニエンタテインメント代表取締役、黒川塾主宰、黒川メディアコンテンツ研究所 所長)、山本貴光氏(文筆家・ゲーム作家 金沢工業大学客員教授)

左から、松田敬之氏(松戸市 経済振興部文化観光国際課)、柳 明宏氏(株式会社ディッジ代表取締役)

スペシャルインタビュー