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ウィズコロナ、さらにはアフターコロナを見すえた制作環境、ワークスタイルの模索が現在進行で行われている。今回は、独立独歩のCGプロダクションとして精力的に活動しているアニマに今後の制作環境についての考えを聞くと同時に、リモートワーク時の選択肢としてフロンティアのクリエイターノートPCをレビューしてもらった。
TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
<1>リモートワークへのスムーズな移行の鍵は、分業化とワークフロー
CGWORLD(以下、CGW):本日はよろしくお願いいたします。最初に自己紹介をお願いします。
アニマ 代表取締役・笹原晋也氏(以下、笹原):代表の笹原です。株式会社アニマは今年で24期目を迎えた3DCG制作会社です。当初はゲーム映像を手がけていましたが、そこから遊技機開発へ派生し、現在はネットフリックスなどの配信系の映像の制作に比重を置いた制作を行なっています。
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笹原晋也氏
(株式会社アニマ 代表取締役)
アニマ ラインプロデューサー・西野憲司氏(以下、西野):ラインプロデューサーとデベロップメントマネージャーをやっております、西野と申します。3DCG制作のプロジェクト管理のほか、業務効率化のためのツール開発からシステム周りなどの作戦立案を担当しています。
CGW:アニマさんは今回のコロナ禍によるリモートワーク(テレワーク)への移行をスムーズに行えた印象があります。マネジメント側としては大変な部分も多かったと思うのですが、社員の方の様子はいかがでしたか?
西野:マネージャーの立場としても思いのほかスムーズでした。みんなもしっかり適合できていたし、意外とやることが変わらなかった印象です。大半のツールが使い慣れたものでしたし、従来から社外とのやり取りもオンラインミーティングを積極的に利用していました。現在も9割近くの社員がリモートワークを継続中ですが、緊急事態宣言解除後は当面は「チーム単位で出社するかどうか決める」というルールで運用しています。例えばアニメーターのチームは週2日を出社推薦としています。
笹原:3月末から検討を始め、4月から一斉にリモートワークの体制を整えましたが、結果的には特に問題なく移行することができました。ただ、これは約3ヶ月に限った短期的な話です。今後も中長期的にリモートワークを継続するのであれば抜本的な制度づくりが必要になります。幸い納品の遅れなどもなかったので、今回構築したシステムとワークフローをベースに考えていくつもりです。
テレワークに移行後のオフィス内観(写真提供:アニマ)
CGW:リモートワークでは、どのようなツールを利用していますか?
西野:Parsec Teamを用いたリモートデスクトップで業務を行いました。社内のセキュリティをそのまま活かせるのが利点です。タブレットの筆圧を使うために一部のユーザーには特定ポートのみVPN接続を許可していますが、もともとVPN接続自体はマネージャーなどの管理者には提供していたため、設定面で手間どることはありませんでした。唯一ボトルネックになっていたのは、各スタッフのインターネット速度ですね。
(左図)自宅のPCにインストール&設定していたParsecを開き、Connectを選択した状態/(右図)会社にある自分のPC画面が開いた状態(画像提供:アニマ)
テレワークのその後(アニマBLOG)
CGW:実制作について、ワークフロー面での変化はありましたか?
笹原:ワークフローも従来と特に変わりはありません。会社でやっていた業務を自宅でやっている感じですね。
西野:もともとフィードバックと素材の管理のためにインハウスツールを開発、運用していました。クライアントさんや外部パートナーさんにも機能を制限して利用してもらえるツールで、パイプラインに直結しています。これらを通して普段からオンラインを通したワークフローだったため、リモート環境でもほぼ変化なく作業することができました。
CGW:パイプラインが整備されていたり、しっかり分業化がされていると移行がスムーズなんですね。そうした中でもリモートワークが難しい職種や作業はありませんでいたか?
西野:3DCG制作では、特にモデラーがペンタブレットの筆圧のレイテンシーなどで苦労していました。また、当社にはHoudiniをメインツールとするエフェクトチームもあるので、どうしてもLinux環境でないと動作が重くなってしまうため、Parsec以外のリモートデスクトップツールを使う必要もありました。全体としては、やはりコミュニケーション面での苦労はありましたね。ZoomとRocket.Chatを使ってコミュニケーションをしていましたが、対面の方が手軽で効率が良いことも多いので。
CGW:今後、アーティストの働き方はどのように変わっていくと思いますか?
笹原:リモートワークは人によって向き不向きがあるようにも感じていますが、制作に影響がなければ問題ないと思います。大きく働き方が変わるだろうと思うのは、特に地方在住の方ですね。インターンシップでアニマに来てくれる学生さんはこれまで都内の方が中心でしたが、今後は地方の学生さんにも来ていただけるようにしたいと考えています。事情があって在宅せざるを得ない方々にとっての新たな可能性にもなると思いますね。
西野:自分の作業に集中できるという意味では、エンジニアやプログラマーなど開発サイドに関してはリモートワークの方が効率が上がっているようにも感じます。
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アニマ オリジナル作品出版プロジェクト第1弾
『鉄輪のカゲ・ルイ』
2020年6月23日(火)よりイーブックジャパンにて連載スタート(隔週火曜日更新予定)。
原作:ANIMA / 江藤俊司、作画:井上菜摘
<2>CGスーパーバイザー 菊地 蓮がFRONTIER クリエイターノートPCを検証
CGW:ここからは、笹原さんに代わりCGスーパーバイザーの菊地 蓮さんにご参加いただきます。まずは、普段のPC購入の基準について教えてください。
西野:機材の選定・調達等ですが、基本は私が行なっています。部門それぞれで必要なスペックを考えながら、全体で見た時にアンバランスにならないよう意識しています。スペックだけで決めているというよりは、部門ごとに目安となる金額を決めていて、その年度で購入できる最もコストパフォーマンスの良いモデルを購入しているというかたちです。下流工程、特にショットやライティング、エフェクトはスペックを最も高く、上流工程は下流で使われていた1,2年前のマシンを流用するというかたちで、機材をローテーションしています。
アニマ CGスーパーバイザー 菊地 蓮氏(以下、菊地):職種によってスペックは少し変わりますが、エフェクトで言えばIntel Xeon W2150(core8Thread),RTX2070Super,メモリ128GBをメインに使っています。エフェクトの作業はNukeやHoudiniなどのツールを複数開いて作業を行うことが多いため、CPU性能よりもメモリを重視しています。OSはLinuxで、これはネットワークやディスクアクセスなどのI/O系の速度など、上記ソフトを使用した時の全体的なパフォーマンスが高いためです。
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菊地 蓮氏
カナダの大学を卒業後、日本とアメリカの大手ゲーム会社のムービーチームにてゲームムービーの制作に参加、その後フリーランスのエフェクトテクニカルディレクターとして国内外のスタジオにて映画等のエフェクト作成に携わる。現在はCGスーパーバイザー兼VFXスーパーバイザーとして、主にプロジェクトの技術面の統括、及びスタジオ全体のパイプラインの開発を担当している。
CGW:今回、検証していただいたフロンティアのクリエイターノートPCについて、所感を聞かせてください。
菊地:非常に良かったですよ。ここ最近の3DCG作業はディスクスピードに依存しており、ストレージがNVMeというだけでストレスがかなり減ります。足回りがしっかりしているような印象ですね。僕はアーティストとして最も大切なのは「思考が止まらないこと」です。だから、操作中に引っかかりがあるとか、ジョブを実行してもなかなかレスポンスがないとか、そういうストレスを可能な限り減らしたいと思っています。ハードウェアの構成要素でポイントになるのは、ディスクスピードとメモリ、そしてGPUですね。
評価機【ZNシリーズ】の主なスペック
- CPU
- Intel Core i7-10750H (2.6GHz / 12MB)
- GPU
- NVIDIA GeForce RTX 2070 SUPER
- RAM
- 32GB(16GB×2)
- DISK
- 1TB(M.2 NVMe SSD)
CGW:今回はリモートワークにおける検証ということで、菊地さんが自宅でお使いのマシンと比較していただきました。主なスペックを教えてください。
菊地:CPUはRyzen 1800X(8コア)、メモリは64GB、GPUはNVIDIA GTX 1080Tiという構成です。アニマに入る前はフリーランスで活動していたのでワークステーションと呼べるハイスペックになっています。
菊地氏の私有デスクトップPCの主なスペック
- CPU
- AMD Ryzen1800x
- GPU
- NVIDIA GeForce GTX 1080Ti
- RAM
- 64GB DDR4-2666
- DISK
- 512GB(MVNe SSD)
CGW:実際にどのような検証を行われましたか?
菊地:まずは3DMarkとCinebenchを使いベンチマークを取りました。3DCG作業のパフォーマンス検証では、Houdiniを使って爆発や煙のシーン、大量パーティクルなど処理負荷の高いデータを試しました。
3DMarkによるベンチマーク
(左図)評価機の総合スコア:7,861/(右図)菊地氏の私有PCの総合スコア:8,141。菊地氏のPCはワークステーション級の構成だが、評価機が健闘していることが判る
Cinebenchによるベンチマーク
(左図)評価機(6コア@2.6GHz)の総合スコア:2,712/(右図)菊地氏の私有PC(8コア@3.6GHz)の総合スコア:3,119
菊地:Houdiniも問題なくオペレーションできました。私が購入するとしたら、メモリを64GBまで増設すると思います。Core i7-10750Hは、シングルCPUのパフォーマンスが高いですね。私のマシンは8コアですが、コアの数の差よりもシングルコアの性能が重要な場面もあるし、ノートPCでありながらもデスクトップPCと比較しても遜色なく使えていたことに感心しました。
CGW:接続端子や筐体の重さなど、ハードウェア面ではいかがでしたか?
菊地:自宅ではデュアルディスプレイで作業していて、1枚はリモートデスクトップで繋げた会社のマシンでHoudiniなどの作業環境を表示、残りの1枚でブラウザや資料など会社のサーバに関係のない情報を表示するかたちで運用をしています。フロンティアの【ZN】シリーズは、スペック重視ということもあり筐体は大きめ(※幅:約359mm x 高さ:約29.9mm(突起物除く) x 奥行:約258mm、15.6型)ですが、そのおかげで廃熱フローがしっかりしていて、ベンチマークの計測中やHoudiniのシミュレーション中も天板が熱くならなかったことに好感を抱きました。テンキーがあるのも良いですね。
CGW:ちなみに、これまでフロンティアのPCをお使いになったことはありますか?ゲーミングPCに強いブランドで、現在はハイスペックなクリエイターPCも手がけています。
菊地:初めて使用しました。今のワークステーションは、スペックだけで言えばゲーミングPCとかなり近いと思っていて、実際に私がPCを組むときも高機能のゲーミングPCを参考にすることがあります。今回の検証を通してゲーミングPCを買っておけば3DCG作業は問題なく行えると思いました。フロンティアは国産ブランドなので、故障時にも安心してサポートしてもらえそうですね。
CGW:モバイルワークステーションなど、ハイスペックのノートPCに対しては、どのような印象ですか?
菊地:アメリカ西海岸のスタジオやニュージーランドのWeta Digitalでも働きましたが、そのときはデスクトップPCを分解して持って行きました。現在はノートPCのスペックもかなり高性能になっているので、ハイスペックなノートPCが1台あると便利そうですね。それこそ海外で働くことになった場合も、現地でモニタを調達すれば、すぐに本格的な3DCG作業が始められると思います。
製品情報
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クリエイターモデル
FRZN712/CR
基本構成
OS:Windows® 10 Home 64bit版 [正規版]
チップセット:インテル® HM470 チップセット
CPU:インテル® Core™ i7-10750H (2.6GHz) プロセッサー
メモリ:32GB(検証モデル)
メモリ最大搭載可能容量:64GB(32GB x2)
SSD:[M.2 NVMe SSD] 1TB(最大2TB×2)
グラフィック:NVIDIA® GeForce RTX 2070 SUPER™ / 8GB GDDR6
光学ドライブ:なし
無線LAN:IEEE802.11 ax/ac/a/b/g/n (インテル® Wi-Fi 6 AX201, 2x2, 最大 2.4Gbps) + Bluetooth 5.0
ディスプレイ:15.6型フルHD非光沢液晶 (LEDバックライト)
重量:約2.4kg(バッテリーを含む)
価格:¥199,800(税抜)
www.frontier-direct.jp/contents/fair/creator/
お問い合わせ
インバースネット株式会社
www.frontier-direct.jp/
TEL:050-3538-2561