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性能とコスパに優れたAMD製CPUは、CGや映像制作の現場でどこまで貢献できるのか。 モーショングラフィックスで印象的な映像を創り出す企業が、その使い勝手を実際に体感。 100万円弱で購入したハイスペック仕様の「Mac Pro」からの入れ替えもふまえたパフォーマンスや魅力をチェックしてもらった。
TEXT _近藤寿成(スプール)、PHOTO_弘田 充、検証協力_細見龍一(ボーンデジタル)、EDIT_池田大樹(CGWORLD)
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AMD(Advanced Micro Devices)
50年以上の歴史を持つアメリカの半導体製造会社。「Athlon」や「Ryzen」シリーズなどを展開するCPUとともに、「Radeon」シリーズによるGPUの両方を開発する。さらに、CPUとGPUを1つに統合したAPUなども手掛けている。
https://www.amd.com/ja
Mac Proでは厳しい複雑な3D表現を圧倒的なスピード感でこなす
3回目となる今回のAMD製CPUの比較検証企画はモーショングラフィックスをフィーチャーし、大手企業のテレビCMやWebムービーの作成に少数精鋭で取り組むLIKI Inc.に協力を依頼。設立メンバーの1人である志村勇海氏に、そのパフォーマンスを検証してもらったほか、Macからの入れ替えで感じた印象も語ってもらった。
LIKI Inc.では映像制作のアプリケーションツールとして、PhotoshopやIllustrator、After Effectsなどと共に、3D表現で用いるCinema 4Dを使用。 2Dと3Dを組み合わせた、デザイン性の高いグラフィカルな動画表現を特色としている。
▲2020年7月にキックオフした、富士通自身を変革する全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ) 」のイメージムービー
これまで、2Dグラフィック表現をメインにMacマシンを利用してきたLIKI Inc.。多種多様な案件をこなすなかで志村氏は「表現の幅をもっと広げたい」と考え、Cinema 4Dとパーティクルプラグイン「X-Particles」の導入を検討した。さらに、CG表現やGPUレンダリングの相性を考慮してWindowsマシンへの切り替えも検討し、AMD製CPU搭載Windowsマシンを合計3台導入した。
▲ダイキン工業が自らのブランドコアを表現するために取り組んだコンセプトムービー『Daikin design Brand Core』
LIKI Inc.のPC選びは、コスト以上に「性能」や「効率性」が重視される。より高性能なマシンで効率的に仕事をこなした方が、「空いた時間を様々なかたちで活用できる」(志村氏)と考えるからだ。
そのため、志村氏が以前使っていたMacも、CPUに「Intel Xeon E5」(8コア/3GHz)を採用し、GPUに「AMD FirePro D700」をデュアル搭載する100万円弱の超ハイスペック仕様「Mac Pro」だった。当然、このMacであれば2Dの映像制作には何の不自由もない。しかし、いざ3Dの表現にトライしてみると、物理シミュレーションを用いるなどの複雑なモーショングラフィックスには十分に対応できず、「どこかで妥協するか、別の表現を模索する」(志村氏)ことになった。
一方で、CPUに「AMD Ryzen Threadripper 3960X」(24コア/3.8GHz)、GPUに「GeForce RTX 2080 Ti」を搭載する現在のWindowsマシンは非常に使い勝手が良く、「今までは諦めていたシーンでも、納得のいく表現ができる」(志村氏)。そのスピード感も段違いで、志村氏は「以前なら食事に出かけていたような作業も、Ryzen Threadripperならコーヒーを入れる間に終わっている」と評価する。さらに、約50万円という価格から、優れたコスパも大きなメリットとなっている。
これらの背景をふまえて、今回はLIKI Inc.が実際に行うモーショングラフィックスを想定したテストで、AMD製CPUを搭載する2機種と対抗検証機を比較。AMD製CPUの実力に迫った。
検証ハードウェアについて
今回はLIKI Inc.に検証データを制作してもらい、AMDが提供する2機種のPCと、本誌編集部が用意したインテルCPUを搭載する比較用の対抗検証機を加えた3台で検証した。
AMDの検証機1は、AMDのハイエンドデスクトップ向けCPU「Ryzen Threadripper 3970X」とAMDのGPU「Radeon RX 5700 XT」を搭載。32コア64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xは、基本クロックが3.7GHz、最大ブースト・クロックが4.5GHzという性能で、実売価格も約25万8,000円と高額になっている。
検証機2は、AMDのメインストリーム向けCPUで最上位クラスに属する「Ryzen 9 3900X」を採用。Ryzen 9 3900Xは、クロック数だけ見ればRyzen Threadripper 3970Xに見劣りしないスペックで、実売価格も約6万6,000円とリーズナブルだ。
これに対して、対抗検証機はCPUに「インテル Core i9-9900K プロセッサー」、GPUに「GeForce RTX 2070 SUPER」を搭載。インテル Core i9-9900K プロセッサーはコア数こそRyzen 9 3900Xに劣るが、クロック数は遜色ない実力を有する。また、実売価格はRyzen 9 3900Xよりも安い約5万円となっている。
※実売価格は2020年11月5日現在のものです
CASE 01
Cinema 4D+X-Particlesでのキャッシュ作成時間
モーショングラフィックス用途を前提に、Cinema 4Dのプラグイン、X-Particlesによる粒子のシミュレーションを実施。エミッターから生成されているパーティクル数を「Low」、「Default」、「High」の3つで設定し、それぞれのキャッシュ作成時間を計測した。なお、パーティクルの数はLowが1万2,500、Defaultが2万5,000、Highが5万となる。
X-ParticlesのシミュレーションではCPUに大きな負荷がかかり、コア数もその処理に大きく影響してくる。検証結果を見ると、どの設定でもキャッシュ作成時間はスペック順に「検証機1<検証機2<対抗検証機」となっており、これは順当といえる。
ただ、負荷の小さいLowではその時間差が15秒前後だったのに対して、パーティクル数がLowの2倍になったDefaultでは約6倍の1分30秒前後に、4倍のHighでは約40倍の10分前後になっているのは見逃せないポイント。その時間差が指数関数的に増えていることから、シミュレーションの内容が複雑になればなるほど、時間差が飛躍的に広がっていくという点は注目だ。
また、検証機2のCPU、Ryzen 9 3900Xの価格は検証機1のCPU、Ryzen Threadripper 3970Xの1/4で済むため、コスパの観点から見ればRyzen 9 3900Xは魅力的といえる。しかし、Highでの作成時間は2倍近くとなっていることから、より複雑なシミュレーションであれば、いずれ4倍以上の差がつく可能性は十分にあり得るだろう。その点も含めると、「大量にパーティクルを生成する表現を多用するのであれば、Ryzen Threadripper 3970Xを選ぶのは十分にあり」と志村氏は結論づけた。
検証を終えて
Ryzen Threadripperが新しい表現やクオリティアップを実現
志村氏は現在、検証機1のCPUよりも下位のモデル、Ryzen Threadripper 3960Xを使っているが、その快適さはRyzen 9と比べて「十分に速い」と実感できるレベルだ。さらに今回の検証結果も踏まえて、「3Dアーティストであれば、Ryzen Threadripperを選んだ方がより恩恵が大きい」と分析する。
また、モーショングラフィックスに加えて3Dグラフィックスもやるような立場では、「幅広い表現を1人で完結できる環境は魅力的」と語る。もちろん、コスパは気になるが、優れた性能を持つRyzen Threadripperが新しい表現やさらなるクオリティアップにつながるのであれば、「機材への投資はやはり重要」と指摘した。
まとめ
01:モーショングラフィックスでは負荷が増えるほどCPUの性能差が出る
02:負荷次第でRyzen ThreadripperがRyzen 9のコスパを上回る可能性も
03:3DアーティストはRyzen Threadripperの方がより恩恵がある
問い合わせ先日本AMD株式会社
www.amd.com/ja