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デザイナー自身による効率的なイテレーションと素早いアウトプットを実現! Unityのカスタムエディタを使ったHondaの取り組み

デザイナー自身による効率的なイテレーションと素早いアウトプットを実現! Unityのカスタムエディタを使ったHondaの取り組み

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自動車をはじめとしたHonda製品群のビジュアル面を支える本田技術研究所(以下、Honda) デザインセンターでは、コンセプト・世界感・UXなどを早期に可視化し商品性検証やビジョンの共有ができるようなコミニケーションツールを狙いとして「Visual X-Hub(クロスハブ)」と名づけられたUnityのカスタムエディタを共同開発・運用している。Hondaが目指す未来、そしてUnityをパートナーに選んだ理由とは?

TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATE STUDIO)
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

新しい価値を他者に伝えるために必要なビジュアライゼーション

「電動化」、「自動化」、「コネクティッド」、「シェアリング」などの技術革新を背景として、自動車業界は100年に1度の大変革の時期を迎えている。Hondaも、優れた製品を販売することだけを考える「モノづくり」から、自動車を中心としたユーザー体験を形づくる「コトづくり」を重要視する方針を打ち出している。多様化する顧客ニーズに応えながら、人とモビリティとの関わりに対して付加価値を提案することで、これまでにない新しい価値を創造する。こうした「誰も見たことのない」価値をビジュアルとして表現するために、Hondaのデザイン業務を一手に担うデザインセンター内ではUnityの活用が行われている。

「従来は商品の見た目やスタイリングを3DCGで確認するだけで良かったのですが、今は製品の先にあるサービスや世界観を含めた人間生活との関わりの部分も表現する必要があります。新しい価値観は言葉だけでは伝わらない要素が多く、コミュニケーションのコストが高いため、デザイナー自らが商品コンセプトやユーザーストーリーをアニメーションとして簡単にビジュアル化できるしくみが必要でした」(Honda デザインセンター オートモービルデザイン開発室・佐野英樹氏)。

  • 佐野英樹氏
    本田技術研究所 デザインセンター オートモービルデザイン開発室

こうした課題に対し、当初はHonda社内でコストをかけずに動的なビジュアル生成を試みたが、従来のCGツールだけではデザイナー自身がアニメーションまでを網羅的に行うことが難しく、多大なラーニングコストがかかってしまっていた。また、アイデア出しの時点から3DCGモデルを用いた作業を必要としたため、インタラクティブコンテンツが必要になるたび協力会社に制作を依頼するスタイルではスピード感に欠けてしまう。このため、「デザイナーが素早く簡単に、アニメーションまで含めたビジュアル表現を可能にするツールを開発し、社内で運用する」というスタイルを模索することとなった。

自動車業界でのゲームエンジン活用の可能性

佐野氏によれば、もともとイベントなどで展示を見ていたゲームエンジンに大きな可能性を感じていたという。しかし、工業製品のようなリアリティが必要な対象に対しては表現力が不足している印象もあり、開発者用ツールということでデザイナーが使うには敷居の高さも感じていたとのこと。こうしたイメージを払拭したのは、業界イベントで出会ったというユニティ・テクノロジーズ・ジャパン シニアエヴァンジェリストのアレックス・ヒューズ氏だ。アレックス氏はライティングや背景をリアルタイムで切り替え可能な自動車の運転デモを制作し、佐野氏に提示。これが高い評価を得たため、両社協業によるツール開発がスタートした。

「最初はパフォーマンスに驚きました。従来のCGツールだと自動車1~2台の描画で精一杯でしたが、Unityであればリアルタイムに複数台の自動車を描画し、自在に操ることができました。今までの3DCG開発で苦労していたことが手軽にできるようになるという印象を受けました」(佐野氏)。

▲アレックス氏によるインタラクティブ運転デモ

  • Alex Hughes/アレックス・ヒューズ氏
    ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン シニアエヴァンジェリスト

2019年初頭にはユニティ・テクノロジーズ・ジャパン プロジェクトマネージャーのリン・シー氏がプロジェクトに参画。3度にわたるワークショップで、Unityで何ができるか、Honda側が何をしたいかのすり合わせを行い、2019年3月にはPoC(Proof of Concept)形式によるデザイナー向けツールのプロトタイプ開発に着手。佐野氏の「簡単かつ、何でもできるツール」というオーダーを受け、リン氏とアレックス氏が技術的要件を定め、小規模な開発体制で初期のコンセプトモデルをつくり上げた。デザイナーから見れば敷居が高い部分は残っていたものの、ビジュアル表現の簡易化という点では一定の成果が得られていた。

■HondaからUnityへリクエストした要件

ユーザビリティ
デザイナーが簡単に使える
シンプルワークフロー
CADデータインポートからプレゼンまで(自動リギングやマテリアル自動割り当てなど)
クオリティ
従来のCGツールと比較して一定の品質レベルを保つ
パフォーマンス
ハイスペックグラボを必要としない
汎用性・拡張性
Unityの技術進化に合わせたバージョンアップができる
各種デバイス対応
3D環境の自由度高い組み合わせ
人やモビリティを直感的にアニメーション作成できる

プレゼン
画像・動画・htmlリンクを簡単に配置できる
プレゼンニーズに応じたUIをデザイナーが作成

  • Lin Shi/リン・シー氏
    ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン プロジェクトマネージャー

産業界の開発に特化したUnity Professional Servicesを活用

佐野氏がUnityを選んだのは、産業界、とりわけ自動車業界に精通するスタッフがユニティ・テクノロジーズ・ジャパンに所属しており、彼ら自身がHondaのツール開発にフルコミットできる体制がしっかりと構築されていたからだという。2019年1月にスタートしたUnity Professional Servicesは産業系のプロジェクトに特化したユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの社内チームが提供するソリューション。公式によるトレーニングやコンサルティングを行うだけでなく、技術的な難易度の高い案件などは直接受託し開発を行うことのできる、ワンストップのプロフェッショナルなサービスだ。

「実際にゲームエンジンをつくっている企業に直接委託ができるのは大きなメリットでした。彼らは今後のロードマップを把握した上で開発を行なってくれるため、長期的な運用を考えたときに最適なプランを提示してくれます。直接お願いできるというのは、他のゲームエンジンでは不可能な選択肢だと思います」(佐野氏)。

▲Honda内で開かれたデモ展示会の様子

PoCで検証を行なったモデルをひな形としたツールの開発は、2019年後半からスタート。2週間に1回程度の頻度でミーティングを行いながら、アニメーションを含むビジュアル表現を手軽に実現するというコンセプトはそのままに、デザイナーにとって使いやすい機能やインターフェイスが模索された。ツールデザインをリードしたのは、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのリードテクニカルアーティスト、ルイス・パオリーノ氏だ。「事前に行なったワークショップによって、最も使われる機能や、アニメーションの際に必要な特別なアクションの傾向がわかりました。デザイナー自身にとって、何を簡略化すれば、数日かかっていた作業が数時間で終わるようになるのかを主軸にツールの開発を続けていました」(ルイス氏)。

  • Luis Pallino/ルイス・パオリーノ氏
    ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン リードテクニカルアーティスト

大きな転換ポイントとなったのは、スタンドアロンのアプリケーションをつくるのではなく、Unityエディタの拡張によってUnity内で全ての作業が完結できるようにするという発想に至ったことだ。今後もユーザーのニーズが変化し続けることを考えると、「デザイナーがやりたいこと」の変化に柔軟に対応できるツールが望ましかったが、アプリケーションとして開発してしまうとアップデートの工数が高くなりスピード感も失われてしまう。対して、Unityエディタの拡張であれば、Unityそのもののアップデートに追従し、常に新たな技術を取り入れることができる。

「この技術提案をしたのはアレックスでした。従来はアプリケーションとしての開発を視野に入れていましたが、全てエディタのカスタマイズで良いのでは? という発想の下、1週間くらいでプロトタイプをつくってきたんです。私もこれはいけるぞと感じて、そのまま佐野氏に説明しました。承認を得てからの開発はすごく速かったですね」(リン氏)。

アレックス氏の提案とは、エディタ上にSimpleモードとAdvancedモードを用意し、ユーザーの目的と習熟度によってそれぞれを使い分けるというもの。基本的なビジュアル設計を行うSimpleモードでは必要のないInspectorやHierarchyのComponentを隠して触れる要素を減らすことで敷居を下げ、より慣れてきたデザイナーは標準的なUnityエディタに近い見た目で詳細な設定が可能なAdvancedモードを活用していくかたちとなる。

▲Simpleモードの画面。カスタムコンポーネントにアクセスするためのシンプルなUIが表示される

このほかにも、環境構築など、Unity側のアイデアが数多く取り入れられている。また、開発の途中では実際にツールを活用したインタラクティブコンテンツ制作(Hondaの自動車の走行デモ)も行なっており、これがHonda社内での説得材料として大きな価値をもっていたという。

デザイナー主体のビジュアル表現を可能にしたVisual X-Hubの展望

Unity側からの提案の妥当性と開発の速さは、佐野氏としても驚きの連続だったとのこと。「普通、開発を外部委託する際は、自分たちの目指すところに達するまでに時間がかかるし、時間がかかっても達さないという場合だってあります。ですが、Unityは開発が圧倒的に速く、そして自ら提案してくれるというのもありがたくて、本当に信頼してお任せすることができました」(佐野氏)。

言葉やイラストだけでは伝わりにくかった新たな体験や付加価値も、ビジュアルが伴うインタラクティブコンテンツであれば伝わりやすい。UnityとHondaの協業によって開発された「Visual X-Hub」では、自動車や群衆を配置、指定した通りに動かすといったしくみや、天候やライティングなどの条件をリアルタイムに制御することが可能であり、新たな世界観やユーザーストーリーを3DCGアニメーションとして提示することが可能となっている。また、開発したシーンをビルドすれば、Unityライセンスがなくても確認可能となる。コンセプチュアルな製品開発に際して、仲間と認識をすり合わせるコミュニケーションコストが下がることの恩恵は大きいため、今後も長期的にシステムを運用していく方針だという。

「Unity Professional Servicesには本当に満足しています。こちらの無理難題に対して期待以上のものを出してくれたという意味では本当に感謝していますし、社内のデザイナーにもすごく好評です。デザインの過程を検証できるツールとして、大きな価値のあるものを開発していただききました」(佐野氏)。今後はブロック形式の背景素材の追加などによって広域にわたる街全体を制作し、より生活に根差した体験を再現したいという構想があるとのこと。Hondaの目指す「コトづくり」のビジョンの実現が、Unityによって加速することはまちがいない。

■Honda デザインセンター Visual X-Hub開発メンバー

左から、坂居三郎氏(本田技研工業株式会社 デジタル改革統括部)、片山寛王氏(株式会社本田技術研究所 デザインセンター)、佐野英樹氏(株式会社本田技術研究所 デザインセンター)、青山恭子氏(株式会社本田技術研究所 デザインセンター)、奥之山 久恵氏(本田技研工業株式会社 デジタル改革統括部)
※写真なし 渡邊雅子氏(本田技研工業株式会社 デジタル改革統括部)

■Unity Professional Services Visual X-Hub開発メンバー

  • David Shin/デイビッド・シン氏
    テクニカルアーティスト

  • Alejandro Gámez/アレハンドロ・ガメスサラ氏
    ソリューションエンジニア

  • 神田健斗氏
    ソリューションエンジニア

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industry.unity3d.jp/service.html

Profileプロフィール

本田技術研究所/Honda

本田技術研究所/Honda

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン/Unity Technologies Japan

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン/Unity Technologies Japan

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