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最先端のCG技術が活用される近年のゲーム開発。特に近年では最新技術の調査・研究部門の役割がいっそう重要視されている。バンダイナムコスタジオテクニカルアーティストチーム(以下TAチーム)も、そうした専門家集団のひとつだ。主に次世代のゲーム開発に向けた技術を担当し、新規ビジネスの応用可能性も探る未来開発統括本部と、現世代のゲーム開発に必要な技術を担当し、タイトルの開発支援も行う技術統括本部に分かれ、様々な研究開発が進められている。
今回、お話を伺ったのは前者からR&Dチーム髙橋誠史氏と清水脩平氏、後者からTAチーム河本健太郎氏と鈴木雅幸氏だ。髙橋氏の専門は最先端のCG技術で、近年ではAIのリサーチも担当している。清水氏は流体シミュレーションが専門で、次世代のエフェクト表現を研究中だ。河本氏はCG制作に必要なツール開発などを通して、アーティストの支援を行なっている。鈴木氏はグラフィックの質感表現や最終的な画づくりにかかわるテクニカルアーティストだ。これだけでもゲームが様々な分野の最新技術で構成されていることがわかるだろう。
もっとも、TAチームの役割は最新技術の調査・研究だけに留まらない。社内セミナーなどを通してアーティストのスキルアップを図ることや、調査内容を基に開発のしくみを整備し開発効率の向上を図ることも含まれる。そのため他の部署と連携して業務を進めるコミュニケーション能力や、現場で何が問題になっているか見抜く問題発見能力なども求められる。
業務領域だけでなく、TAチームのキャリアやスキルも多彩だ。学歴面では専門学校から大学の博士課程まで含まれ、キャリア面でも最初から研究開発を行なっていた者もいれば、アーティストとしてタイトル開発に携わった後に移籍した者もいる。しかし、全員に共通するのは専門知識を活かしてゲーム開発に貢献する姿勢だ。「自分がつくったツールで感謝されたりすると、とても嬉しいですね」(河本氏)。ゲーム開発を支える縁の下の力持ち。それがTAチームなのだ。
POINT 01
実写映画さながらのライティングをゲームの世界で実現
ゲーム世界を照らすライティング。特に2010年代に入り「物理的に正しい」レンダリング(=PBR)が可能になったことで、ライティングの役割がより重要になった。レンダリングとは3DCGを2次元の映像に出力する作業工程で、映画制作における撮影にあたる。ハードウェアの性能向上に伴いPBRが普及したことで、よりフォトリアルな表現が可能になっただけでなく、細かい色調整でシーンの雰囲気を高めることも可能になってきたのだ。
技術統括本部コアテクノロジ2課でテクニカルアーティストを務める鈴木氏もまた、日本で数少ないライティングアーティストだ。グラフィックの質感表現や画づくりの品質向上に必要な調査・研究を行いつつ、社内向けに啓蒙活動も行なっている。「正しいライティングを行うためには、テクスチャの正しい質感設定が重要です。そのためには光の単位やカメラの露光量、ホワイトバランスの調整といった、実世界のライトやカメラのしくみを理解する必要があります」(鈴木氏)。
実際、ライティングについて学ぶには、マニュアル設定ができるカメラで撮影してみるのが一番だという鈴木氏。他に映画や広告の照明技術も参考になるという。その上で、ライティングアーティストの必要性を訴えていきたいと抱負が語られた。個々のシーンの色調整は、まだまだ背景アーティストに一任されているのが一般的。実写映画と同じく、総合的な色調整を加えることで、ゲームのクオリティがより向上していきそうだ。
質感設定の確認
ライティングを行う前に質感設定が正しいか、特にアルベドテクスチャが正しいことを確認する。アルベドテクスチャはコントラストが高い傾向になりやすいため、数値的に正しいことが重要だ。これが間違っているとその後のライティング作業に支障をきたすことになる。アルベドの他にもスペキュラの入り方に関連する表面の粗さ、金属かどうか等のパラメータ等のマテリアルの値も適切に設定する。そのためライティングアーティストがテクスチャ調整や質感調整を行うことも多くなるという。
▲『鉄拳7』の背景より、ディフューズアルベドテクスチャを表示したもの
ライティング
今回の例では太陽と空の光だけでライティングをしている。日陰の部分は主に空の色、日向の部分は主に太陽の色が付く。このときの日向と日陰のコントラストは現実を参考にし調整すると良いバランスになる。画像全体のコントラスト調整は最後に行うため、それも考えてライティングを調整していく。
続いて、露光量をイメージに合わせる。暑い場面や明るい雰囲気、または清潔感等を出したい場合はであればハイキーに設定する。ただし明るい部分が白く飛び過ぎてしまう場合は、後処理でハイライトが飛ばないように高輝度のカーブを滑らかにする必要がある。また、素材の質感を見せたい場合はあまりハイキーにしない方が良い結果となる。渋い感じ、怖い雰囲気、重厚感を出したい場合はローキーにする。ただしあまり暗部をつぶしすぎると暗い部分が何も見えなくなることがあるため、ここでもトーンカーブに注意が必要だ。
▲日中の屋外のライティングの例(左:ライティングのみ、右:最終結果)
▲夜のライティングの例。青い平行光源を使って夜の雰囲気になるようにライティングする(左:ライティングのみ、右:最終結果)
▲それぞれカラーグレーディングで色味やコントラストなどを調整して完成させる
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TEKKEN?7 & ©2017 BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
※掲載の画像は実際のゲーム製品と異なる部分があります
POINT 02
シミュレーション技術により立体感のあるエフェクトを実現
ゲームの没入感を高める上で、なくてはならないエフェクト表現。炎や水から魔法にいたるまで、様々なエフェクトが存在する。しかし、多くの場合エフェクトはCGアニメーションで作成されており、立体的に見えても、実際は平面的な表現にすぎない。そのため「決まったエフェクトしか再生できない」「視点が変えられない」といった限界が発生する。特に360度あらゆる方向から見られるVRゲームでは、この問題が大きい。
未来開発統括本部AI&先端技術開発部の清水氏は、この問題に学生時代から取り組んできた。「流体シミュレーション」と呼ばれる研究分野で、本物の炎のようにリアルタイムで変化する、立体的なエフェクトについて研究しているのだ。「学生時代は計算時間がかかりすぎて、ムービーでしか表現できませんでした。技術が進めばリアルタイムで表現可能になると思い、弊社に入社しました」(清水氏)。
清水氏は炎エフェクトがシミュレーションベースで可能になれば、霧のロンドンを懐中電灯で照らしながら歩くといった、より複雑なゲーム表現が可能になると語る。エフェクトを軸に据えた、新しいゲームが実現可能になるというわけだ。「炎や煙といった自然現象の多くは数式化され、論文化されています。こうした情報を英語で集めつつ、CGで実装するための数学的な知見が求められます」(清水氏)。最新技術が新たなゲームを創り出す好例と言えるだ ろう。
シミュレーションベースの炎エフェクト
▲キャラクターに向けて炎を噴かせているところ
▲上から見た図。キャラクターにはカプセル型のコライダが設定されており、キャラクターに当たった炎の動きが逸れているのがわかる。このようなインタラクティブな設定ができるのもリアルタイム流体シミュレーションの強みだ
▲横から見た図。ボリューメトリックに炎を表現しているため、カメラの位置に関わらず炎の形状を表現できる
▲炎の見た目を変えた例。排気ガスのような真っ黒な煙に混じった炎も表現可能だ
どんな人と働きたい? どんなことを学ぶべき?
面倒くさがりな人はオススメ 英語・数学を学んでおくと◎
――:テクニカルアーティストやエンジニア向きの性格はありますか?
河本:ずばり、ズボラな人です。目の前の作業に対して「面倒くさいから、なんとか効率化できないかな」と考えて、実際に手を動かしてつくってしまうような人が向いています。その上で新しいもの好きであることと、それを他人に広めたいと思える人が良いですね。
清水:自分も「格好良い画を自動的に描画してほしい」からシミュレーションを研究している、みたいなところがあります。
河本:自分たちの仕事は開発支援なので、チーム内での改善に喜びを見出せる人が良いと思います。映像系の専攻であれば、アーティストではなく、制作進行のような役職を好む人の方が向いているかもしれません。
――:学生時代をふり返って、もっと学んでおけば良かったことは何ですか?
清水:数値計算系の研究分野だったので、DCCツールに触る機会がありませんでした。学生はライセンス面で優遇されているので、もっと触っておけば良かったですね。もし今、学生だったら絶対にHoudiniを使っていると思います。その意味では数学の勉強も、もっと基礎から応用までしておいた方が良かったです。
鈴木:自分も数学と英語ですね。最新のCG技術や情報は海外から入ってきますので、英語と数学が必須になります。プログラムの勉強もしておけば良かったです。
河本:数学と英語は本当にその通りですね。特に自分はアーティスト出身なので、この2つが弱くて、業務でも必要性を痛感しています。ただ、どんな勉強でも必要であることに変わりはないんですよ。キャラクターの衣装1つとっても、歴史的・地理的・文化的背景に根ざしていなければ、嘘っぽくなります。文化圏によって縫い目がちがったりしますからね。
髙橋:数学と英語について補足すると、ゲーム開発では高校数学の範囲でまかなえることも多いのですが、調査・研究となると、一段高いレベルが求められます。英語については「書くこと」「話すこと」を、より重要視してほしいですね。最近はSNSやGitHubなどで海外のエンジニアと交流する機会が増えています。海外から情報を得るだけでなく、日本から発信していくためにも、学生時代から研鑽を積んでほしいと思います。
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TEXT_小野憲史
PHOTO_弘田 充